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一章
初めての魔法
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「はぁ…はぁ…はぁ…」
荒い息を吐き出しながら耕作は森を全速力で走っていた。
ユニ○ロで買った寝間着ではなく、麻のシャツとちょっと分厚いズボンに脚は革の靴。
(し、師匠は本当に神官なのか…?)
全身をびっしょりと濡らし、だらりとつたう汗を感じながら耕作は必死で追いかける。
目の前には、革の胸当てと槍、弓筒を背負ったスザーカが走っている。どこか優雅な舞を踊るようにふわりふわりと木々の間を舞うように駆けていた。
地球での神官はもっとひ弱なイメージがあった耕作だが、それが完全に崩され、武闘派神官という新たな存在を知ることになった。
(それに…この靴痛すぎる…)
そして彼の走りを邪魔する履き慣れない靴。
この世界の一般的な靴は、なめした動物の革に薄い木の板が張り付けてあるだけだ。
それが恐ろしく衝撃を吸収しない。腐葉土の柔らかい地面を走っているが木の根や石を踏みつけると鈍い痛みが足を襲った。この世界の靴に慣れていない耕作はすでに靴底を割って、靴擦れを起こしていた。靴の中はおそらくマメが潰れて血が出ている。
森の追いかけっこ。
耕作が魔法を習いたいとスザーカに請うたとき、彼女がまず提案した修行方法は追いかけっこだった。
身体。それは最も扱いやすい『媒体』になるのだとスザーカは耕作に言って聞かせた。『魔力感覚器』で集めた魔力を『媒体』を介し『言葉』として世界に魔法を現出させる。それは思っているよりも難しく、何年も修行をしなければならないと言う。初心者は『媒体』を体にすることで魔力の流れとイメージを養うとスザーカが説明した。
その時のコツ。
『魔力を全身に漲らせて、速く走るイメージだ』
と、スザーカが耕作に言ったが彼はまったくピンとこない。
スザーカは、美人で甲斐甲斐しく神官だけ合って聡明。それに森で暮らしているので戦いも強い。
が、耕作は大雑把だと思っていた。
食事は豪快な男料理だし、洗濯をしてもらっている手前で文句を言うのは失礼だが、耕作の服は洗濯板でビリビリに破れたし、教え方は感覚的すぎてわからない。
(早く走るイメージって・・・何?)
木を避け地面を踏みながら、そんな疑問がぐるぐると頭を巡る。
(走るということは、ジャンプと同じだ)
体育の授業で教えられたことが浮かび上がる。
(連続したジャンプ。ボールが弾むように、地面の反動をそのまま跳ね返すために姿勢は真っ直ぐ)
彼は自分の体を棒のように真っ直ぐにする。顎を引き、地面から足の痛みともに伝わる衝撃を感じた。
(顎を引き、膝の曲がりは浅く)
目線が僅かに上がった。
(そして、地面は貫くように押し切る!)
ぐっと地面がえぐれるように抑えた脚に意識が向く。筋肉繊維が分厚い金属のバネとなって収縮し、全身の血流がそこに流れ込むような映像がパッと弾ける。
ミシリと筋肉が膨張し、ブチンと嫌な音がした。
「っうわぁ!」
その瞬間、体が吹き飛んだ。
耕作の体が前方10m以上離れていたスザーカを超えて、木の茂みに落ちて派手な音が鳴る。
「なっ!?」
前を走っていたスザーカは突然耕作が飛んで来たのに驚いて声を上げた。
しかし、耕作はそんなスザーカを気にすることは出来なかった。
「ぐぁあああ痛ぇ!」
あまりの脚の痛みに茂みの中でもんどり打っていた。
そこに近付いたスザーカは地面に槍を突き立てると、耕作が抱えている脚を掴み、ズボンを無理矢理ひんむいた。その凶行に耕作は悲鳴を上げる。
「し、師匠!?」
「…よく見せろ。すぐに治癒すれば歩けるようになる」
スザーカは真剣な顔でそう言った。森で動けなくなればそれだけで危険にさらされる。稽古をする森は結界の範囲で比較的安全だと彼女もわかっているが危険なことには変わりはない。
その迫力ある顔で迫られると彼も強くはいえなかった。一応、薄い麻生地の下着を履いているがモゾモゾと脚で股間を隠そうとする。しかし、その脚をスザーカに引っ張られて動けなくなった。薄い生地は隠すものを隠してはいるが、よく目をこらせば透ける。
スザーカは膝立ちで耕作の脚をぐりぐりと押さえ、彼が呻きを上げたところに手を止める。
「【理を妨げしもの】【循環の衝立を取り除き】【理に戻れ】」
スザーカが耕作の脚に手を翳してそう唱えると、ぽぅと白い燐光が輝き彼の痛みがみるみるうちに引いていく。二、三分で痛みはゆるやかな疼痛になっていた。
鮮やかな魔法に耕作は恥ずかしさは消えて、じっとスザーカの手を見ていた。
「呆れた奴だ。無詠唱でこれだけの魔法を使えるとはな」
それを見てスザーカは呟く。
癒やしの魔法を使った後の顔には驚きがあった。いくら体が『媒体』として魔法を使いやすいといっても『言葉』もなしに発動させたのに驚きを隠せないでいた。
「いまのって…やっぱり魔法ですか?」
「人が吹き飛ぶような脚力がそうそうあってたまるか」
「…魔法! 俺にも魔法が使えるぞ!」
耕作は喜びのあまり下着だけで立ち上がろうとするが直ぐさま苦痛に顔を歪める。ひどい筋肉痛を味わったのだ。右脚全体が筋肉痛だらけで転けそうになった。
「まだ動くな。魔法とはいえ万能じゃない。しばらくは安静だな」
「ま、またベッドか…」
そういって耕作はうなだれた。
荒い息を吐き出しながら耕作は森を全速力で走っていた。
ユニ○ロで買った寝間着ではなく、麻のシャツとちょっと分厚いズボンに脚は革の靴。
(し、師匠は本当に神官なのか…?)
全身をびっしょりと濡らし、だらりとつたう汗を感じながら耕作は必死で追いかける。
目の前には、革の胸当てと槍、弓筒を背負ったスザーカが走っている。どこか優雅な舞を踊るようにふわりふわりと木々の間を舞うように駆けていた。
地球での神官はもっとひ弱なイメージがあった耕作だが、それが完全に崩され、武闘派神官という新たな存在を知ることになった。
(それに…この靴痛すぎる…)
そして彼の走りを邪魔する履き慣れない靴。
この世界の一般的な靴は、なめした動物の革に薄い木の板が張り付けてあるだけだ。
それが恐ろしく衝撃を吸収しない。腐葉土の柔らかい地面を走っているが木の根や石を踏みつけると鈍い痛みが足を襲った。この世界の靴に慣れていない耕作はすでに靴底を割って、靴擦れを起こしていた。靴の中はおそらくマメが潰れて血が出ている。
森の追いかけっこ。
耕作が魔法を習いたいとスザーカに請うたとき、彼女がまず提案した修行方法は追いかけっこだった。
身体。それは最も扱いやすい『媒体』になるのだとスザーカは耕作に言って聞かせた。『魔力感覚器』で集めた魔力を『媒体』を介し『言葉』として世界に魔法を現出させる。それは思っているよりも難しく、何年も修行をしなければならないと言う。初心者は『媒体』を体にすることで魔力の流れとイメージを養うとスザーカが説明した。
その時のコツ。
『魔力を全身に漲らせて、速く走るイメージだ』
と、スザーカが耕作に言ったが彼はまったくピンとこない。
スザーカは、美人で甲斐甲斐しく神官だけ合って聡明。それに森で暮らしているので戦いも強い。
が、耕作は大雑把だと思っていた。
食事は豪快な男料理だし、洗濯をしてもらっている手前で文句を言うのは失礼だが、耕作の服は洗濯板でビリビリに破れたし、教え方は感覚的すぎてわからない。
(早く走るイメージって・・・何?)
木を避け地面を踏みながら、そんな疑問がぐるぐると頭を巡る。
(走るということは、ジャンプと同じだ)
体育の授業で教えられたことが浮かび上がる。
(連続したジャンプ。ボールが弾むように、地面の反動をそのまま跳ね返すために姿勢は真っ直ぐ)
彼は自分の体を棒のように真っ直ぐにする。顎を引き、地面から足の痛みともに伝わる衝撃を感じた。
(顎を引き、膝の曲がりは浅く)
目線が僅かに上がった。
(そして、地面は貫くように押し切る!)
ぐっと地面がえぐれるように抑えた脚に意識が向く。筋肉繊維が分厚い金属のバネとなって収縮し、全身の血流がそこに流れ込むような映像がパッと弾ける。
ミシリと筋肉が膨張し、ブチンと嫌な音がした。
「っうわぁ!」
その瞬間、体が吹き飛んだ。
耕作の体が前方10m以上離れていたスザーカを超えて、木の茂みに落ちて派手な音が鳴る。
「なっ!?」
前を走っていたスザーカは突然耕作が飛んで来たのに驚いて声を上げた。
しかし、耕作はそんなスザーカを気にすることは出来なかった。
「ぐぁあああ痛ぇ!」
あまりの脚の痛みに茂みの中でもんどり打っていた。
そこに近付いたスザーカは地面に槍を突き立てると、耕作が抱えている脚を掴み、ズボンを無理矢理ひんむいた。その凶行に耕作は悲鳴を上げる。
「し、師匠!?」
「…よく見せろ。すぐに治癒すれば歩けるようになる」
スザーカは真剣な顔でそう言った。森で動けなくなればそれだけで危険にさらされる。稽古をする森は結界の範囲で比較的安全だと彼女もわかっているが危険なことには変わりはない。
その迫力ある顔で迫られると彼も強くはいえなかった。一応、薄い麻生地の下着を履いているがモゾモゾと脚で股間を隠そうとする。しかし、その脚をスザーカに引っ張られて動けなくなった。薄い生地は隠すものを隠してはいるが、よく目をこらせば透ける。
スザーカは膝立ちで耕作の脚をぐりぐりと押さえ、彼が呻きを上げたところに手を止める。
「【理を妨げしもの】【循環の衝立を取り除き】【理に戻れ】」
スザーカが耕作の脚に手を翳してそう唱えると、ぽぅと白い燐光が輝き彼の痛みがみるみるうちに引いていく。二、三分で痛みはゆるやかな疼痛になっていた。
鮮やかな魔法に耕作は恥ずかしさは消えて、じっとスザーカの手を見ていた。
「呆れた奴だ。無詠唱でこれだけの魔法を使えるとはな」
それを見てスザーカは呟く。
癒やしの魔法を使った後の顔には驚きがあった。いくら体が『媒体』として魔法を使いやすいといっても『言葉』もなしに発動させたのに驚きを隠せないでいた。
「いまのって…やっぱり魔法ですか?」
「人が吹き飛ぶような脚力がそうそうあってたまるか」
「…魔法! 俺にも魔法が使えるぞ!」
耕作は喜びのあまり下着だけで立ち上がろうとするが直ぐさま苦痛に顔を歪める。ひどい筋肉痛を味わったのだ。右脚全体が筋肉痛だらけで転けそうになった。
「まだ動くな。魔法とはいえ万能じゃない。しばらくは安静だな」
「ま、またベッドか…」
そういって耕作はうなだれた。
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