突然サキュバス♂になった俺は周りの男を誘惑してセックスするしか生きる道がない

だいず

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6話

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 高校に入学してから1週間程が経った。入学式以降は、今のところ平穏な日々である。一応、友達もできた。

「唯くん、次数学だよね?」

「うん。体育の次に数学って最悪だね」

 彼は日下部唯くん。同じ掃除の班だったことから話すようになって、そこからなんとなく一緒にいるようになった。漫画が好きらしくて、話してて面白い。

「そういえば体育の時間中、女子うるさくなかった?」

「あれ上松だよ。ほら、ゴール決めてたじゃん」

 ああ、上松くんねと、俺は頷いた。今日の体育は、男女別でサッカーを行った。俺はボールを追いかけて右コートへ左コートへと走ってばかりだったが、確かに上松くんが試合の終わり間際、ゴールを決めていた気がする。どうやら上松くんは運動神経が抜群なようで、わざわざ教室にまで部活の勧誘が来ていた。結局彼はなんの部活に入ったんだろう。

「すごいよね、上松とか笹浪とかさ。もう女子にモテ始めてるよ」

「笹浪くん?」

「2組の男子。入学式の時に代表の挨拶してた、背の高いイケメン。生徒会長の弟なんだって」

 へぇ、そうなんだ。どうでもいいが、こういう情報ってみんなどうやって集めてるんだろう。俺はふと疑問に思った。

「上松って言えばさ、瑞月、上松と元々知り合いなの?」

「えっ、全然知らないけど、なんで!?」

「なんでって……なんか、なんとなく?」

 俺にとって、上松くんはちょっとした悩みの種だった。入学式の次の日、つまり、入学式にあったことを妖怪のせいにした日以降、俺は上松くんとまともに会話ができていない。と言うのも、彼の方が俺を避けるのだ。そのくせ、何か言いたげな顔で俺を見ている時もあって、内心あの時の言い訳が疑われ始めたのではないかとヒヤヒヤである。俺と上松くんの、微妙な空気を感じ取れるなんて、唯くんはもしかして鋭い人なのか。だとしたら、色々気をつけようと俺は思った。

「ん、……」

「どうしたの?」
 
「いや、なんかお腹空いてきちゃって」

「えー、もう? 瑞月って意外と食いしん坊キャラ?」

「体育あったからだよ。ほら、運動するとお腹空くでしょ」

 「瑞月、ボール追いかけてただけじゃん」と笑う唯くんに、「唯くんがボール蹴ろうとして、空ぶったの見てたからね」と教えてあげる。彼と一緒にいるのは気楽でいい。片手でお腹を押さえながら、そう思った。





 今日はきっと会えるだろう。そう思いながら布団に入ると、案の定俺のご先祖様が夢の中に現れた。
 
「子孫クン、空腹がきてるね」
 
 彼女はいつものようにニコニコとした表情でそう言った。俺はよいしょと起き上がって、彼女の前に立つ。そのとき、彼女が何か小さな小瓶のようなものを手に持っているのが見えた。
 
「それは……?」
 
 ご先祖様は「後で話すわ」とウインクした。
 
「それよりも、もう淫紋って出てきてる?」
 
「まだですけど」
 
 俺はお腹を押さえながらそう答えた。体育の授業の終わりから続いた空腹感は、夕食を食べた後でも消えることはなかった。これはまさかと、自分の部屋で恐る恐る服をめくり、見てみたが、そこには何もない。けれどもこのまま放っておけば、入学式のときの二の舞になることは分かっていた。
 
「普通のサキュバスなら、淫紋が出たあとに適当に色香で男誘惑して、それで大丈夫なんだけど、子孫クンの場合、自分にまで色香が効いちゃうのよね。頭が働かなくなっちゃう前に、今のうちからセックスした方が良いわね」
 
「良いわねって……」
 
 ご先祖様は、「相手決めた?」と軽く聞いてくる。彼女のこういうところは、サキュバスだからなのか、それともそういう性格だからなのか。俺は彼女に理解してもらえるのか分からないけど、悩みを打ち明けることにした。
 
「……俺、友だちができたんです」
 
「その人を襲うの?」
 
「襲いませんよ!」
 
 俺はため息を吐いた。今、俺が頼れるのはご先祖様しかいない。俺は自分のつま先を見ながら、ぽつぽつと話した。
 
「友だちとそういうことしたら、もう後には戻れないじゃないですか。実際俺、上松くんに避けられてるし。まあ、起きたこと考えればしょうがないですけど……もし、新しく友だちになった人に避けられたらって思うと……」
 
「うーん。つまり、セックスした後は関係が変わるってことかしら? ああ、だからそのお友達だけは、友達のままでいたいから襲いたくないって、そう言いたいわけね」
 
 俺は頷いた。せっかくできた友だちを、自分のせいで失いたくはない。ご先祖様は、「それなら早く別の相手見つけなきゃね」と言って、先ほどから手に持っていた小瓶を、ずいと出して俺に見せた。
 
「これは……」
 
 小瓶の中には、錠剤が何粒か入っていた。見るからに怪しい。俺が何の薬か尋ねると、「魔法の薬よ」と彼女は答えた。
 
「これを飲んだ人間は、その後起きたとを全部夢だと思っちゃうの。だからセックスする前に、この薬を飲ませちゃえば……」
 
「相手は夢だと誤解してくれるんですね!」
 
 ご先祖様は満足げにうんうんと頷いた。
 
「まあ、相手の記憶にはバッチリ残っちゃって、『俺、あいつと夢の中でセックスしたな』って思われちゃうけど。大切なお友達を襲わないためだもん。それくらいは我慢しなさい」
 
 俺は喜んで彼女から小瓶を受け取った。小瓶の中の錠剤は、よく見ると薄ピンク色に色づいている。これがあれば、へたくそな言い訳をしなくても済むし、俺が知らんぷりをしてしまえば、何が起きたとしてもなかったことにできる。
 
「子孫くんはまだ分からないかもだけど、精液って人によって味が違うの。この薬を使って、何人も味見していって、『この人!』って思う相手を見つけたらいいわ」
 
 そんなつまみ食い感覚でしていくつもりはない。というかしちゃダメだろう。
 正直、薬を使って夢だと思わせることも、色香で理性をぐちゃぐちゃにさせて襲うことも、かなり最悪な行為だと思う。それでも、自分が生きていくためには必要なことだと割り切るしかない。俺はご先祖様にお礼を言い、受け取った小瓶を大切に握った。
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