冒険者で食っていこうとしたけど前途多難です

加納ひより

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 間違いなく二層目だが、誰もいない。
 いつも以上に空気が重い。
 異常事態に最後尾の護衛を振り返るが、護衛も事態を把握できていないように、動揺していた。

 指先に魔電蝶を止まらせ、軽く息を吹き込みレノへの伝言を託す。誰宛てでもない魔電蝶を何匹か飛ばしたが、誰かに届いたという感覚はなく、宙をさまよった後、魔力がなくなるとともに消えていった。
「ガウェイン」
 不穏な空気から少しでも身を守ろうとグリフォンのガウェインを召喚し、ガウェインをひと撫でして意思の疎通を図るように額を擦り合わせた。
 ガウェインを通じてもう一匹のグリフォンのリオンへコンタクトを試みたが、リオンから返答はない。
「空気の薄い膜の中みたいだ、外とは連絡取れない。ビィクトルはカッシェとガウェインの背に。そこが一番安全だから」
 二人は顔を見合わせ了承したように頷き、カッシェとビィクトルは恐る恐るといった感じでガウェインの背へと乗った。
「ダリウス、護衛さんもガウェインからは離れないで、守れなくなるから」
 残りの二人もガウェインの側に手招くと、ノアはそっとダリウスへ手を伸ばす。ダリウスは伸ばされた手を迎え入れるように手のひらを合わせ、ノアごと抱きしめた。
「ノア、大丈夫か」
「抱きしめて欲しいとかではなく、僕を介して上から探査魔法して欲しくて」
 ダリウスの髪を掴み抱きしめた腕を解放させ、ノアはかざされた手のひらを受け入れるように目を閉じた。
「認識阻害もされてるな⋯近辺で良いな」
 ダリウスの魔力が流れ込んで来るのと同時に、視界が俯瞰ふかんの映像と切り替わり、今いる場所から数十メートルの範囲が見渡せるようになる。数十メートル先に同じようにグリフォンのリオンに集まっているレノたちを確認して、ほっと一息つくが、新たな疑問が生まれる。
 なぜ目視できない数十メートル先の相手が、探査魔法では見えるのか?
 光を屈折させて対象物を周囲に溶け込ませ、視覚的に透明にするそんな光魔法が存在したとすれば、あながち無理ではない。
「魔法の根源を絶てば、この魔法は消えなくない?」
 俯瞰ふかんで探しながら独り言のように言って、ノアはそれらしい人影を探すが一向に見つからず、苛立ちを抑えるように、結ってある髪にくるくると指を絡めた。
「2時の方向、朽ちた大木の影になんかいる」
「OK、見えた。雷撃槍ライトニングスピア
 ノアが見つけるより先に、ダリウスは隠れている影を見つけると短く場所を指示し、それを受けてノアは手早く雷撃槍ライトニングスピアで胴を貫いた。
 数十メートル先のレノたちより更に数メートルは奥まった、レノたちを監視するのには、ちょうど良い場所に魔法の根源は存在した。
「よしっ」
 魔法を消し飛ばしたノアは、深く息を吸い込み気持ちを整える。加減した攻撃は、全力の攻撃より気を使うので段違いに気力を奪っていく。
「ブレイズ、とってきて」
 ノアの脇に大人しくお座りしていたブレイズは、命令に喜び勇んで雷に撃ち抜かれた人に向かって飛ぶように走った。
 ノアは周りを見渡し反撃してくる気配がないことを確認して、ビィクトルとカッシェをガウェインから降りていいと合図を送ると、ビィクトルは颯爽とカッシェを抱えながら降りた。
「なんだったの?」
 カッシェはブレイズが歯を立てないように咥えてきた、ぐったりとしてはいるがまだ生きている不審者を嫌そうに示す。
「知りたい?知りたいなら吐かせるけど」
 ノアはブレイズの置いた人に手を伸ばそうとして、横から伸びてきた手に阻まれた。
「ノア、そんなものに触れるな、穢れる」
 いつの間にかリオンごと大移動をして来ていたレノは、不審者を自分の所の護衛に捕らえさせ捕縛する。
 リオンの側には第3王子と側近2名、傍系の2名とレノ。護衛が3人。
 ノアは余計な手出しをしてしまった気になって、レノにバレないように一息つき、自分を落ち着かせようと結っている髪を指でくるくると絡めた。

『のあ、疲れてるけど大丈夫』
 手持ち無沙汰になったノアは、憂いを帯びた表情で指示を出しているレノを無意識に目で追っていたが、こっそりと寄ってきたリオンに声をかけられ、今の状況を思い出したようにレノから視線をはずした。
「リオン」
 くるくると喉を鳴らしノアに甘えるリオンは、普段はレノ以外が触れることを良しとしない。唯一、触れることも乗ることも許すのはノアだけ。
『のあ、イヤな匂い』
「ん?」
 ノアがリオンに聞き返そうと額を撫でると、横槍を入れるように後ろから声をかけられた。
「助かりました、えっと⋯」
 護衛の1人⋯ビィクトルの従兄弟がわざとらしく名を尋ねてくるが、それに答えることなく甘えてくるリオンを一撫でする。
「リオン?どういう意味?」
 無視を決め込んだノアを物ともせず、ビィクトルの従兄弟はリオンを撫でようと手を出して、触れる寸前で避けられた。
 リオンにあからさまに避けられ、不愉快そうに顔をしかめ、長い黒髪をなびかせて、レノの傍に寄ると腕に腕を絡ませてなにかを訴えているようだ。
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