1 / 3
1:投資詐欺にはご注意を
しおりを挟む
ATMの前にやってくるのは何度目だろう……。
25歳にもなって私は、アニメや小説で観た異世界に行けると信じている。
そして、今日の振込みは『異世界行きの薬』開発に人生を捧げる……一人の研究者への投資最終日。
早まった私の生活費は十日分もない……給料日はまだ三週間後だというのに。
だが良いのだ……七日後には薬が完成し、私は晴れて異世界で生活できるはずなのだから。
しかし、予定の七日後の木曜日になっても……私のもとに『異世界行きの薬』は届かなかった。
日本という国は少なくとも諸外国に比べて人道的な国だと私は思う。
なぜなら、電気やガスは止められても水道を止めるのは遅いからだ。ベランダから入る陽ざしを頼りにキッチンで髪を洗っていると、玄関のポスト受けに投函された音が私にはハッキリと聞こえた。
急いで、泡立った髪を冷水で流して三度目のタオルで髪を巻き……ポストを覗く。
茶封筒には何も書かれてはおらず、中には一枚の手紙と一錠の錠剤が入っていた。
そして、夜になり眠くなるまでの間。
私は日本に残すことになる色々なめんどくさい事を書き残し、月明かりを頼りにキッチンでコップに水を注ぎ……薬を飲んでぺったんこのお布団で眠りにつくのだった。
~~
目が覚めると、オーケーオーケー見覚えのない天井……というより粉雪が降る灰色の空。
起き上がり、硝子に映る私は『顔、身長、髪色、声の音色』……どれをとってもコンプリートしているのに、だがなぜだ? 着ているボロ布からは生ゴミみたいな臭いがする。
そして、寒い……なんで裸足なんだよオイ。
投資に成功した私は早くも凍死しそうではないか!?
髪色は白金なのに変にべたつき指が通らない。
一番きついのは生ゴミみたいな臭いと、しもやけした手足だ。
中の人は25歳の女とは言えど、外見は良くて小学校高学年……とりあえずは仕事をしながら、どこかで養ってもらうしかない。
だが、ゴミ捨て場がメインフィールドで生きていたような私を拾ってくれるような……優しい所では異世界は無かった。
唯一の誤算は少しの魔法が使える事ぐらいだが、話す言葉が年相応に聞こえる『幻聴』なんて何の意味があるのだろうか……。
街灯も灯り始め、夜を越せるかと眺めた空は無駄に星が光っている。
腹は減ったし、寒い……。こんなことになるなら異世界なんて、アニメや小説で夢膨らませるだけで良かったんじゃないかとすら思えてくる。
そんな中……街を歩く一人の男性と目があった。
正確には彼の右眼からは青白い光……靄が綺麗に漂い、私はその光に見惚れたのだ。
25歳にもなって私は、アニメや小説で観た異世界に行けると信じている。
そして、今日の振込みは『異世界行きの薬』開発に人生を捧げる……一人の研究者への投資最終日。
早まった私の生活費は十日分もない……給料日はまだ三週間後だというのに。
だが良いのだ……七日後には薬が完成し、私は晴れて異世界で生活できるはずなのだから。
しかし、予定の七日後の木曜日になっても……私のもとに『異世界行きの薬』は届かなかった。
日本という国は少なくとも諸外国に比べて人道的な国だと私は思う。
なぜなら、電気やガスは止められても水道を止めるのは遅いからだ。ベランダから入る陽ざしを頼りにキッチンで髪を洗っていると、玄関のポスト受けに投函された音が私にはハッキリと聞こえた。
急いで、泡立った髪を冷水で流して三度目のタオルで髪を巻き……ポストを覗く。
茶封筒には何も書かれてはおらず、中には一枚の手紙と一錠の錠剤が入っていた。
そして、夜になり眠くなるまでの間。
私は日本に残すことになる色々なめんどくさい事を書き残し、月明かりを頼りにキッチンでコップに水を注ぎ……薬を飲んでぺったんこのお布団で眠りにつくのだった。
~~
目が覚めると、オーケーオーケー見覚えのない天井……というより粉雪が降る灰色の空。
起き上がり、硝子に映る私は『顔、身長、髪色、声の音色』……どれをとってもコンプリートしているのに、だがなぜだ? 着ているボロ布からは生ゴミみたいな臭いがする。
そして、寒い……なんで裸足なんだよオイ。
投資に成功した私は早くも凍死しそうではないか!?
髪色は白金なのに変にべたつき指が通らない。
一番きついのは生ゴミみたいな臭いと、しもやけした手足だ。
中の人は25歳の女とは言えど、外見は良くて小学校高学年……とりあえずは仕事をしながら、どこかで養ってもらうしかない。
だが、ゴミ捨て場がメインフィールドで生きていたような私を拾ってくれるような……優しい所では異世界は無かった。
唯一の誤算は少しの魔法が使える事ぐらいだが、話す言葉が年相応に聞こえる『幻聴』なんて何の意味があるのだろうか……。
街灯も灯り始め、夜を越せるかと眺めた空は無駄に星が光っている。
腹は減ったし、寒い……。こんなことになるなら異世界なんて、アニメや小説で夢膨らませるだけで良かったんじゃないかとすら思えてくる。
そんな中……街を歩く一人の男性と目があった。
正確には彼の右眼からは青白い光……靄が綺麗に漂い、私はその光に見惚れたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
聖女を怒らせたら・・・
朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・
私の風呂敷は青いあいつのよりもちょっとだけいい
しろこねこ
ファンタジー
前世を思い出した15歳のリリィが風呂敷を発見する。その風呂敷は前世の記憶にある青いロボットのもつホニャララ風呂敷のようで、それよりもちょっとだけ高性能なやつだった。風呂敷を手にしたリリィが自由を手にする。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
悪役女王アウラの休日 ~処刑した女王が名君だったかもなんて、もう遅い~
オレンジ方解石
ファンタジー
恋人に裏切られ、嘘の噂を立てられ、契約も打ち切られた二十七歳の派遣社員、雨井桜子。
世界に絶望した彼女は、むかし読んだ少女漫画『聖なる乙女の祈りの伝説』の悪役女王アウラと魂が入れ替わる。
アウラは二年後に処刑されるキャラ。
桜子は処刑を回避して、今度こそ幸せになろうと奮闘するが、その時は迫りーーーー
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
召喚聖女の結論
こうやさい
ファンタジー
あたしは異世界に聖女として召喚された。
ある日、王子様の婚約者を見た途端――。
分かりづらい。説明しても理解される気がしない(おい)。
殿下が婚約破棄して結構なざまぁを受けてるのに描写かない。婚約破棄しなくても無事かどうかは謎だけど。
続きは冒頭の需要の少なさから判断して予約を取り消しました。今後投稿作業が出来ない時等用に待機させます。よって追加日時は未定です。詳しくは近況ボード(https://www.alphapolis.co.jp/diary/view/96929)で。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/937590458
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる