異世界ファンタジーでもヒロイン認定されない私は推しの匠を甘やかせたい

川井田ナツナ

文字の大きさ
2 / 3

2:私を養ってくれ……イケメンよ!

しおりを挟む
「ん? ……どうしたんだお前。そんなに絶望的な眼差しをして」
 目が合ったイケメンの男性は、目を輝かせているはずの私に向かってそう言った。
 なぜだ、硝子で反射して映る瞳ですら輝いていたというのに……。
 たぶん、あれだろう……この男の感性や目が悪いのだ。
 
 だって、こっちの世界に来るまでの家賃四ヶ月分を滞納していた私を大家さんのおばあちゃんは『あなたのような綺麗な瞳を持つ人が噓をつくわけないわ』と許してくれていた。
 そして、貧乏生活と街の住民の恐らく大半以上に話しかけた私だからこそ、その立ち振る舞いや身に付けた衣類でわかる……。

 この男は私を養うだけの『財力』があると!!

 ならばすることはどうにかして取り入り、将来的にはこの男の財力をダニのように吸い取り生きながらえることだ!!
 私は不自然のないように両手を後ろにし、指を小さく鳴らし唱え近づく。

「――――幻聴げんちょう

 そして、男の前まで近づき懇願する。

「リリィは……(私を養ってくれ! 掃除、洗濯、家事なんでもしますので……イケメンよ!)」

 すると男は、私の汚れた頭の上に優しくてのひらを乗せ。
「今晩は冷え込むらしいからな。うちで休むか?」
「……はい」

 男は自分の手袋を私の手につけてくれ……生ゴミの臭いが漂う私をおんぶしてくれた。
 男の下心に敏感な私にはわかる……この男の人は心がとても暖かいと。

~~

 彼の名前は『アイル・クラウン』というらしい。
 洋風な名前にも感じるが、髪色がこの街では珍しい黒色なのでどこからか移住して来たのだろう。
 
 そして、アイルさんの家は工房の奥に居住スペースがあるところ。

 彼は自分の服を魔法で私が着れるサイズまで小さくしたり、手足のしもやけを治癒してくれた。
 異世界ものの魔法をコンプリートしたような彼がなぜ結婚していないのかは不明だが、私の異世界生活の拠点はここ以外は考えられないと思う私なのだ。

 風呂をすませ、アイルさんが準備した温かいスープを飲みながら……頼むなら今しかないと私が思った時だった。

「リリィ……だったか? 行くところがないなら、好きなだけうちで過ごすといい」

 彼の一言には……私のしもやけして治らないと思っていた心も包み込む優しさがある。
 たぶん、私なんかよりもこの人は……心の傷跡が多いのかもしれない。

 そんな彼が……甘えれる女に私はなりたいと思うのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

過労死して転生したので絶対に働かないと決めたのに、何をしても才能がバレる件

やんやんつけバー
ファンタジー
過労死して異世界転生。今度こそ絶対に働かないと決めたのに、何をやっても才能がバレてしまう——。農村で静かに暮らすはずが、魔力、農業、医療……気づけば誰も放っておかない。チートで穏やか系の異世界スローライフ。

追放先で気づいた。この世界の精霊使いは全員、聞き方を間違えている~最安もふもふ白狐と始めた、問いかけの冒険~

Lihito
ファンタジー
精霊と暮らす世界で、ノエルはギルドを追い出された。処理ミスは誰より少ない。でも「やりづらい」の一言で、理由には足りた。 手元に残ったのは、最安で契約した手のひらサイズの白い子狐だけ。言葉はたどたどしいし、力もない。誰が見ても「使えない」と笑う精霊だ。 たどり着いた町では疫病が広がっていた。高額な精霊が三度探して見つからない薬草。ノエルは最弱の白狐と半日で見つけ出す。 力で勝ったんじゃない。聞く範囲を絞り、段階を分け、小さな鼻に合った問いを重ねただけ。 ——なぜこの世界では、誰も精霊への「聞き方」を知らないのか。 その違和感が、ノエルの旅を動かしていく。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...