魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!

川井田ナツナ

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10:アイル・クラウン

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~~

 深夜――。城門の金剛力士像の背中を見るのは久しぶりだ。
 相変わらず、彼らの背中は誰よりもたくましい。

「……お師匠。本当によろしいのですか?」
「……あぁ、幼馴染みの頼みだ。無下にはできない……」
「ですが――っ。お師匠は魔法を使えなくしても、魔法筆だけは……折ることは無かったじゃないですかッ! 『俺の魔法筆には命が宿っている』……そう言ったのは嘘だったのですか?!」

 こんな虫も寝静まる深夜にリリィに着いて来てもらったのは、リリィならそう言ってくれると信じていたからだろう……。
 我ながら情けない。そんな後押しがないと俺は……進めなくなってしまったのか。
 だが、俺の愛弟子は……やはり俺の知っている誰よりも慈悲深い。

「……リリィよ。師匠として恥ずかしい所を見せてしまう所だったな」
「何を言ってるんですかお師匠! 誰がお師匠のためだけに、ハンカチを持ち歩いてると思ってるんですか」
 
 リリィが包み込んだ手は暖かい。

「そうだな。それに……魔法筆職人が自分専用の『魔法筆』を持ってないのもおかしいしな」
「はいっ! お師匠なら二本同時にだって使いこなせますよ!」
「……だよな」

 そして、俺は最後の魔法筆なしの魔法を使う。
 二体の金剛力士の手から魔法筆を浮かし――、広げた両手で俺の手のサイズにまで筆を圧縮。
 仕上げの刻印を――右手用には『Aisle』、左手用には『Crown』。

 俺は初めて……自分のためだけに魔法筆を作った。
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