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第3.5部:剣闘士編
80:受け止めて
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アオイの控え室から少し離れた廊下で――、ジーチャンは待っていた。
「盗み聞きするために、魔法筆を与えたわけじゃないんだけどな」
「ごめんなさい……伯父様」
「まぁいいよ、話す手間が省けたし。イークンには試合を観れない事、謝っててくれ。じゃあ……」
そう言って、その場を後にしようとしたが……。
彼女は俺の服をぎゅっと握って、行かせないつもりだ。
「リリィは他人じゃないですか……? それに、あの魔獣だって。私たちと、居てください」
「そういうわけにはいかないんだ。わかってくれ」
背中越しに伝わる、彼女の葛藤――。
ジーだって本当はそんなことを言いたくないことぐらい、俺でも分かる。
「伯父様は分かってないのです、魔術協会の恐さを……」
「あぁ、分かってないな。無理だとわかってるのに……ジーは、こんな大人にはなるなよ」
「……約束します。伯父様みたいな、大人にはならないと……」
「それでいい。イークンを、守ってくれ」
ジーチャンの鼻を啜る音が聞こえ、背をポォーンと押された。
「私、妹なのですよ……伯父様」
「そうだったな。ホント……妹、そっくりだ。――行ってくる」
妹の面影をジーチャンに重ね、街を出た日のことが思い出される。
そして、俺は荷物をまとめ――街をあとにした。
*
「探索――――。……反応なしか」
アオイが遭遇したという山脈近くの湖に向かいつつ――リリィたちの反応を探るが、一向に良い返事はなかった。
そして、たまに転がっている魔獣の死骸。
「魔術協会にしては、剣で切ったように見える……。まただッ、素材の剝ぎ取り跡もない……。一体、誰がこんなことを、何のために?」
人間なら、倒したブルーグリズリーをそのままにするはずがない。
魔獣たちが襲って来ないのは良いが、不気味だ……。
湖は森を抜けた先、魔術協会の連中や魔獣以外にも気を付けねば……。
生唾を飲み込み、森へと進んだ。
「……ここか」
湖に着くと、戦闘の跡があちこちに残っていた。
はじけ飛んだ地面に、倒れた木々。
そして、黒いローブ姿にとんがり帽子を被った数人の死体。
「はぁ……手詰まりだ。目的を達成すれば、こいつらも単なる駒か。……にしても、若い」
死体は十代後半から二十代中旬未満。
若人が命を懸けてまで、することなのか? 俺には、理解できない。
そして、ここに来れば何かあるのではないかと、思っていた自分が情けない。
よく考えれば、電殿むしの首の受け渡し場所や期日を聞いていなかった……馬鹿か俺は。
頭に血が上った死体と同じ。
彼らを埋葬することにした。
「来世では、よく考えて生きるんだぞ。同類たちよ」
墓の前で手を合わせ、自分のこれまでを振り返っているときだった――――。
「遅れてすみませええええええ――――んッ!!! 受け止めてくださぁぁぁぁい!」
声の方を向くと、箒に乗った――。
赤いドレス服にとんがり帽子の女が、俺めがけて飛んできていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次話より第4部になります。
「盗み聞きするために、魔法筆を与えたわけじゃないんだけどな」
「ごめんなさい……伯父様」
「まぁいいよ、話す手間が省けたし。イークンには試合を観れない事、謝っててくれ。じゃあ……」
そう言って、その場を後にしようとしたが……。
彼女は俺の服をぎゅっと握って、行かせないつもりだ。
「リリィは他人じゃないですか……? それに、あの魔獣だって。私たちと、居てください」
「そういうわけにはいかないんだ。わかってくれ」
背中越しに伝わる、彼女の葛藤――。
ジーだって本当はそんなことを言いたくないことぐらい、俺でも分かる。
「伯父様は分かってないのです、魔術協会の恐さを……」
「あぁ、分かってないな。無理だとわかってるのに……ジーは、こんな大人にはなるなよ」
「……約束します。伯父様みたいな、大人にはならないと……」
「それでいい。イークンを、守ってくれ」
ジーチャンの鼻を啜る音が聞こえ、背をポォーンと押された。
「私、妹なのですよ……伯父様」
「そうだったな。ホント……妹、そっくりだ。――行ってくる」
妹の面影をジーチャンに重ね、街を出た日のことが思い出される。
そして、俺は荷物をまとめ――街をあとにした。
*
「探索――――。……反応なしか」
アオイが遭遇したという山脈近くの湖に向かいつつ――リリィたちの反応を探るが、一向に良い返事はなかった。
そして、たまに転がっている魔獣の死骸。
「魔術協会にしては、剣で切ったように見える……。まただッ、素材の剝ぎ取り跡もない……。一体、誰がこんなことを、何のために?」
人間なら、倒したブルーグリズリーをそのままにするはずがない。
魔獣たちが襲って来ないのは良いが、不気味だ……。
湖は森を抜けた先、魔術協会の連中や魔獣以外にも気を付けねば……。
生唾を飲み込み、森へと進んだ。
「……ここか」
湖に着くと、戦闘の跡があちこちに残っていた。
はじけ飛んだ地面に、倒れた木々。
そして、黒いローブ姿にとんがり帽子を被った数人の死体。
「はぁ……手詰まりだ。目的を達成すれば、こいつらも単なる駒か。……にしても、若い」
死体は十代後半から二十代中旬未満。
若人が命を懸けてまで、することなのか? 俺には、理解できない。
そして、ここに来れば何かあるのではないかと、思っていた自分が情けない。
よく考えれば、電殿むしの首の受け渡し場所や期日を聞いていなかった……馬鹿か俺は。
頭に血が上った死体と同じ。
彼らを埋葬することにした。
「来世では、よく考えて生きるんだぞ。同類たちよ」
墓の前で手を合わせ、自分のこれまでを振り返っているときだった――――。
「遅れてすみませええええええ――――んッ!!! 受け止めてくださぁぁぁぁい!」
声の方を向くと、箒に乗った――。
赤いドレス服にとんがり帽子の女が、俺めがけて飛んできていた。
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次話より第4部になります。
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