魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!

川井田ナツナ

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第4部:魔術協会編

81:酔っ払いの関係者

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 目測の距離はおよそ30m。
 受け止めるか、魔法筆で何とかするか――――?
 いや、相手は女性……つまりはレディ。受け止めてとお願いされているのだから、受け止めるのが道理。
 大きく腕を広げ、応える――――ッ。

「任せろ――ッ!」

 だが、残り5m付近になって返ってきたのは
 
「おじさんは嫌ぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 と――悲痛の叫び。
 赤いドレスの彼女は体を大きく横に逸らし――ジャンプ。
 俺を横切るはずだった箒の先端は進路を変えて、腹に直撃するのだった。


 
「すみませんすみませんすみませんッ、遅れてすみません! 友達の結婚式からすっ飛んで来たので、許してください!」

 見事な受け身で着地した彼女の名は、リーズというらしい。
 しかし、友達の結婚式からすっ飛んできたという割には、酒臭い……。こいつ、さっきまで飲んでたな。

「俺はアイル、通りがかりの者だ。君と同じ帽子を被ってた者たちが、死んでいたから埋葬したところだ」
「――――えッ?! じゃあ……このお墓の数だけの死人が?」
「そういうことだな。みんな、俺らより若い奴らだった」

 青ざめてもリーズは美人だったが、雰囲気からして三十路であることは分かる。
 そして、死んだ彼らよりも協会に熱心でないことも。

「埋葬ありがとうございました。じゃ、私は私用がありますので……ヒック」
「一体、ここで何があったんだ?」

 魔術協会への糸口を早々、帰すわけにはいかない。

「さあ……??」
「とぼけるのも良いが……掘り起こして、剣闘士の街にこの死体を降らせても良いんだぞ?」

 そんな気はないが、俺は魔法筆を出してそう言った。
 するとリーズは箒を振り回して

「ぎゃあああああああ! 協会の敵、魔法筆使い!! 死すべし死すべし死すべし!」

 ただ叫ぶだけ……。どうやら、攻撃系の魔法は使えないようだ。
 しかしまずい、話の主導権を取り戻して協会のことを聞かねば。

「さっき、箒で殺されかけたのだが……許してはないぞ?」
「駄目ですアイルさん! 私たちはまだ出会ったばかり、結婚だなんてそんなッ」
 
 …………ん? 何の話?? 
 
 酔っ払いには種類があるという――――。
 笑い上戸、泣き上戸、無口になる人、そして稀に。

 支離滅裂の話を始める系――――、会話が成り立たなくなる奴だ。

 そんなことを頭で巡らせていると、彼女はお墓の隣でいつの間にか眠っていた……。
 何とも気持ちよさそうに……。

「最悪――――ッ。せっかくの糸口が酔っ払いだなんて。せめて、着替えて来いよ……風邪ひくぞ」

 アイボリー色のローブを被せると、彼女はすぐさまミノムシのように包まり。
 俺は改めて思うのだった……酔っ払いは無理だと。
 
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