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◇超番外編◇
◆初夜 Long Ver.③
しおりを挟む「……ミハエラさまのなさることなら、自分に是非などありません」
良いも悪いもない。
自分はその信頼に応える。それだけだ。
そのためにはどんなに打たれても攻撃されても引いてはいけないのだ。
ジャスティンはそう思ったので素直に『是非などない』と口にした。
そのことばに、ミハエラは息を呑み若草色の瞳をまるくする。
しばし、ジャスティンの真意を確かめるようにじっと見つめ……やがてその瞳はふにゃりと笑みの形に歪んだ。
とん、と額と額が合わさりミハエラは小さな声でそっと呟いた。
「……それは、どうかと思うぞ?」
そう言いながらも嬉しそうな顔をするから、ジャスティンは堪らなくなる。
彼女の細い腰に当てていた手が背中へ伸ばされる。柔らかい髪が指に絡まる。
ミハエラの滑らかな頬がジャスティンのそれに触れる。
そのままスリスリと擦られるから、猫の仔のようだと思った。
彼女の形の良い鼻の先がジャスティンのそれに触れる。
(ああもう、なにがなんだかわからない……)
ミハエラから漂う芳香が、その温かな肢体が、うつくしい顔が、存在のすべてが。
ジャスティンの思考力をあっけなく奪ってしまう。
「……そうで、しょうか…………」
擦り合わされた鼻の先がゆっくりと離れ、ぺろりと唇を舐められた。
まるでもう黙れと言わんばかりに。
ちゅっ……という可愛らしい音を立て唇が吸われ。
びっくりして開けた口内に、ミハエラの舌がするりと滑り込んできた。
「……ん……ちゅ……んん……」
(……酔う、とはこんな気分か……)
互いの舌と舌が絡まり合い、離れ、誘い、また擦り合わされる。
(……気持ち、イイ……)
一気に視野狭窄した。
目の前にいる女神しか見えない。
小さなランプだけが光源の薄暗がりの中、けれどジャスティンにははっきりと金色に輝く女神が見える。
ジャスティンと比べれば、だいぶ細い身体。
温かなその身体をいつの間にか腕の中に捕らえ、夢中で唇を貪りながらベッドに押し倒していた。
ミハエラの唇は、率直に言ってこの世のなによりも美味いものだとジャスティンは煮え切った脳で結論づけた。いままで飲んできた美酒と呼ばれるもの、どれもこれも酔ったためしはない。
けれどミハエラの唇には中毒性すら感じるほどくらくらする。
背筋を這いあがってくるようなゾクゾクする歓喜。
美味い。
やわらかくすべすべした舌も。
甘い。
眼前に広がる黄金の髪が煽情的で思考力が削がれる。
腕の中にいる愛おしい存在がこの世のすべて。
柔らかい髪、柔らかい身体、温かな存在。
小さな形の良い唇と滑らかな舌。
ずっと触れていたい。
もっと。もっと。
口を塞がれたミハエラが喉の奥から仔犬が甘えるような声をだす。
それはジャスティンの耳朶を痛いほど刺激するから堪らなくなった。
ふと、自分の頭を掻き抱いていたミハエラの右手が離れた。
ジャスティンの視界の左隅で、ポウっ……と翠色に光るなにかがあった。
(? これは、ミハエラさまの魔法陣の光、ではないか?)
思考の八割方をミハエラの存在に占められていたジャスティンの、辛うじて残っていた理性が警告を発したとき――。
ガバリっと。
音を立てる勢いでミハエラが起き上がった。
ジャスティンの身体ごとだ。もの凄い膂力(腹筋力?)である。
そして真っ赤な顔をしたミハエラが叫んだ。
「分かった! わたしを押し倒してはいけないっ!」
「え?」
頬をかなり赤く染め髪を乱したミハエラは、焦ったようすでジャスティンに訴えている。
その必死な表情にジャスティンは面食らう。
「あっぶなかったぞ? この右手が無意識に閻魔刀を召喚しそうになった!」
ちなみに閻魔刀とは、ミハエラが右手で扱う細身で片刃の緩やかな弧を描く優美な剣のことである。
こちらの剣を使うときは、一撃必殺の殺傷能力を求められている場合が多い。
「へそ天になるのは、わたしには無理だ。理性があるうちなら耐えられるが」
「はい?」
へそ天とはなんのことだろうと場違いな疑問に首を傾げながらも、ジャスティンの瞳はミハエラから逸らすことができない。
だってミハエラの姿が可愛い過ぎる。
いままでもミハエラ・ナスルは『戦場の戦乙女』であり『魔戦場のミハエラ』と呼ばれるほどの戦士であり、ジャスティンたちの命の恩人であり、生きる至宝であった。
それがジャスティンなんかにプロポーズしたかと思えば、彼を見て恥じらうようなそぶりを見せたり、こんな薄物の夜着で眼前に現れたり、それが大胆にもうつくしい線を描く足を開いて彼の膝の上に乗ってくれちゃったり、蠱惑的な微笑みを見せたり、キスをすれば鼻にかかるような甘えた声を出したり、それでいてやっぱりミハエラさまらしくジャスティンごと起き上がったり、でも髪を乱して頬を染めている状態なんて初めて見たし、こんな混乱した彼女を見るのは自分だけなんだろうと思うと涙が出るほど嬉しいと思ったり。
つまりジャスティンは首ったけなのだ。ミハエラ・ナスルというひとりの女性に。
「よし、わたしが上になる」
そう言ったミハエラが軽くジャスティンの胸を押した。
操り人形のごとく簡単に押し倒されたジャスティンの上に乗り上げたミハエラは、満足そうに微笑んだ。
妖艶に。
「――これならなんとかなりそうだ」
小さなランプの柔らかなオレンジ色に照らされたミハエラの美貌を見上げながら、ジャスティンはぼんやりと思った。
(あぁ綺麗だ……やっぱりミハエラさまはこうやって自信満々に微笑んでいるのがいいなぁ……)
その笑みを見ているだけで胸が高鳴り目頭が熱くなる。
「え?……あぁ、はい……」
だから、返答もどこか心ここにあらずな形になってしまう。そして意識の隅っこの方で
(そうか、へそ天というのはこうやって仰向けに倒れて、へそを天井方向へ向けている状態をいうんだな)
と、呑気に考えた。
よく犬が上位の仲間や主人に向けてする降参のポーズだ。
生殺与奪の権利を相手に渡すという意思表示でもある。
(なるほど。ミハエラさまにできる姿勢ではないな)
そんなことを呑気にも考えていたジャスティンの股間にそっと触れる手があった。
「……あ♡」
ミハエラを前にして萎えることなどないと昂った自身を押さえられ、ジャスティンは思わず情けない声をだしてしまった。
そんなジャスティンを見たミハエラは、甘く優しく微笑んで彼のトラウザースのボタンをゆっくりと外した。
(え? え? どうしよう、どうしたら⁈)
解放されたジャスティンのジャスティンは、勢いよく飛び出て揺れている。
腹につきそうなそれは、ミハエラの美貌を前にすると少々滑稽で、かつグロテスクに見えた。
(ど、どうしよう……)
焦るジャスティンの内心とは裏腹に、ジャスティンの分身はビクビクと揺れながらも硬度を保っている。我ながら、これほどまでに膨張した自身は初めて見た。痛いほど張りつめている。
ふぃっと。
ミハエラの白い指先がやさしくその先端を撫でた。
トプッと先走りの体液が零れる。
「ジャスティンはかわいいな」
ミハエラがそっと囁くから居た堪れなくなった。
思わず両手で顔を隠してしまったジャスティンであったが、指の隙間からミハエラのようすを窺えば、なんだか彼女は楽し気な顔でジャスティンのジャスティンを観察している。
そしてゆっくりと指を滑らせ……先走りの液を絡ませながら……擦り始めて……
(あ……そこはっ……)
「…………アーーーッ…………♡♡♡」
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