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アイドル、とは?
しおりを挟む「おやめなさいっ!」
思わず声が出てしまったわ。
それも特大級のドスの効いた声。
「誰の許しを得てわたくしの部下を躾けようと言うの?
貴方にその権利は無くてよ?
無礼な。下がりなさいっ」
わたくしの怒声に驚いたのか、赤毛は手を挙げたまま固まっている。
辺りはシン……と静まり返って、やっとわたくしも我に返ったわ。
こんな尊大過ぎる一年生、ちょっと『普通』じゃない、わよねぇ。
「アンネローゼさま……」
「ローゼ……」
キャシーとレオニーが残念の子を見るような目でわたくしを見る……。
やめて頂戴、そんな憐みの目を向けるのは。
ちなみにレオニーはわたくしの身分を知っているわ。弟との賭けの話も。だからこそのこの憐みの瞳なんでしょうけど。
「な、なんなんだ! お前、本当に生意気だぞっ! 一年生のくせにっ!」
「ケビン! 暴力反対っ!」
激高した赤毛をピンクブロンドが羽交い絞めにして止めてる。
ああもう! まったく、面倒臭いこと!
わたくしは立ち上がると、キャシーにちょっと脇に退いて貰った。
「クズナー。あなた、すこぅし、黙ってて?」
そして傍らのキャシーに尋ねる。
「わたくし宛ての手紙……とやらは受け取ったの? 何通?」
「この三週間で12通。差出人は全部、そちらのリュメル殿でした」
「わたくしに知らせなかった理由は?」
「……貴女様に知らせるまでもなく、こちらで排除しようと判断した為です」
あら。その『排除』は手紙? それとも差出人?
「詳しく」
「……お嬢様を呼び出そうなど、不遜の極み故に」
それだけ? ……じゃあ、なさそうだけど?
キャシーの黒い瞳を見詰める。
わたくしに忠誠を誓い、わたくしを心底心配し、時には諫言を呈するキャサリン・フォン・ファルケ。
·····何かあるのね。今は、言いたくない何か、が。
ふっと、視線を動かした先の縦ロールさまと目が合う。
——あ。
驚愕の瞳。
もしかして、わたくしのこと気が付いた? かも?
「不遜の極みですってぇ……生意気よ!
メイド如きにそんなこと言わせて、どうするつもりなの?」
ヘーゼルナッツのクライン嬢が叫ぶ。
「リュメル様はこの学園のアイドルなのよ!
そのリュメル様のお誘いを不遜、だなんて許せないわ!」
「アイドル?」
「貴女、知らないの? よっぽどの田舎から出てきたのね!
可哀そうだから教えてあげるわっ!
リュメル様とクスナー様はこの学園では知らぬ者などいない人気者なのっ。
みんなのアイドルなのっ。女子学生全員、彼らとお付き合いしたいと思っているのよ!」
「いや、私は思っていない」
後ろでぼそっと答えないでレオニー。笑っちゃうから。
とはいえ、周囲にはクライン嬢の叫びに同調するが如く頷いている女子学生が半数くらいいるかしらね。おもにニ、三年生で。
「どうしてそんなに人気者になったの?」
わたくしが続けて問うと、クライン嬢は得意気な顔をする。
「去年の剣術大会の2位と3位だからよ! 本当に、なんにも知らないのね!」
「貴女はなぜご存じなの?
わたくしは今年入学したばかりで知らないのですが」
クライン嬢も同じ階に居るから一年生だと思ってたけど。
わたくしが不思議に思って問うと、クライン嬢はあっという間に頬を染めた。
「煩いわね! そんなことどうでもいいでしょ!!」
なぜか怒りがヒートアップしてヒステリックに叫ばれてしまいました。
周りの人垣の中でぽつぽつと笑いが起きています。
……あぁ。
「一年生を再履修なさっている留年組、というわけですか、なるほど」
それならば去年の出来事に詳しくても当然ですね。
カラーーン カラーーン
お昼休憩の終わりを告げる鐘が鳴り響きました。
「さぁ、みなさま! お昼は終わりましたわ!
午後の授業に向けて各自移動なさいませ」
縦ロールさまが声を上げ人垣を解散させます。
有無を言わせない雰囲気、この方もしかして、とても有能なのではないかしら?
「貴女、もしや……」
わたくしに話しかけようとした縦ロールさまに、人差し指を立て、そっと唇に当てる。
「今は。内緒にしてくださいませ」
にっこり笑顔でそう言えば、彼女の青い瞳が柔らかく微笑みの色を纏った。
「クズナー、と、ええと……剣術試合3位の方? 今日の放課後に時間を頂いてもよくて?」
「!!……お嬢様っ!」
非難の声を上げようとするキャシーを視線で止める。
「誤解があると思うの。話をしましょう?」
「お、おう……」
「解りました」
縦ロールさま……お名前はなんだったかしら。あぁ、思い出したわ。
「……エーデルシュタイン様も、同席してくださいませ」
お名前をやっと思い出してそう提案すると、縦ロールさまは笑顔でカーテシーを披露してくださったけど……。
最敬礼にしなくてもよくってよ?!
あぁ、もう!
これは完全に バ レ て る わね。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
(???視点)
「エーデルシュタインの傍にいる、あの金髪のご令嬢は誰か?」
「……一年生、のようだな。……かなりの美少女だけど……好みだからって手ぇ出すなよ? 国際問題は御免だ」
「あれが簡単に手を出せる女に見えるなら、お前の目は節穴だぞ?
いいから調べろ。きっと面白い結果が出る……俺の勘だがな」
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