62 / 68
もっとも活躍をした学生は誰だ?
しおりを挟む【『今年度、もっとも活躍をした学生は誰だ!』女子学生部門は、
本年度入学し、一年生ながらも、学生自治会を設立、この卒業記念祭を発案し、学園生全員に働きかけた、アンネローゼ・フォン・ローリンゲンさまです!!】
高らかに響き渡ったレオニーの声の後に会場中から、おおおおーーーーーーーっと物凄い歓声が上がったわ。
【さぁ! アンネローゼさま! 壇上へお上がりください!!】
「呼ばれていますよ」
キャシーが拘束を解いて、わたくしの背をトン、と押した。
それを合図に、舞台中央に向かって歩を進める。
【アンネローゼさまは、皆さまご存じのとおり、我がシャティエル国が誇る唯一の王女殿下!
清く正しく美しい、我々の敬愛すべきお方です。
王女の身分に奢らず、下位貴族、いいえ、カフェテリアの配膳係にまで、極め細やかにお心遣いなさる素晴らしいお方であるうえに、年間通して首位の成績を維持する本年度の成績優秀者でもあります】
ちょっと、カール。
貴方それ、持ち上げ過ぎよ?
そういうの『褒め殺し』っていうのよ?
その落ち着いた声での解説は見事だけれども!
そう思いつつも笑顔で舞台中央へ向かうわたくし。客席からは割れんばかりの拍手。
中央では拡声器を下ろしたレオニーが、“こちらにどうぞ”とばかりに手を差し出している。
傍へ寄って彼女と握手したあとでハグ。
「聞いてないわよ、レオニー?」
「終わったら全部説明します」
ハグしながらお互いの耳元で囁き合う。
わたくしがいた方とは反対側の舞台袖から来たスタッフが、レオニーになにやら箱を渡す。
アスラーンが持っているのと同じ記念品のようね。
大拍手の中、レオニ―からその箱を受け取る。
【では、受賞の一言をお願いいたします。
まずは、セルジュークさまから】
レオニーから拡声器を渡されるアスラーン。
彼はそれを持ったあと、わたくしと視線を合わせた。と、同時に、
『絶対お前を嫁にするからな』
急に脳内に響いたアスラーンの声。
え? えぇ?! なに?
彼、口を動かしていなかったわよ?!
なのに、彼の声が聞こえた……いいえ。わたくしの脳内にその声が響いたの。
まるで耳元に囁かれたように、でもはっきりと。
これは、なに? どういった現象なの?
アスラーンは拡声器を観客へ向けて構えた。わたくしは顔には出さず、静かにパニックに陥っていた。
【あー、この度は……栄えある? 最も活躍した学生? とやらに選んでいただき、誠に、ありがとうございます。
三年間、この学園で学び、学友と切磋琢磨できたこと、私には貴重な経験でした】
拡声器を通しても良い声なのね、アスラーン。
【ですが、――私は、最終試験に落第しまして。留年と相成りましたので、来年度も居残ります!】
はーーーーーーーぁ?
なに言ったの、この人?!?!
留年ですって? 居残りって言った?
【そして剣術試合に出ます!
目指すは“四年連続優勝”です!
騎士科学生諸君へ告ぐ!
俺を倒して四年連続優勝を阻止しろ!
再戦を、俺は待ってるぜ!】
な、なんですってぇ?
会場中がおおおおおおーーーーーー! という歓声に包まれたわ。
多分、主に騎士科学生から。
そうよね、アスラーンは専科クラスなのよ。
それが専門職にあたる騎士科学生よりも強いなんて、本来騎士科学生にとっては屈辱のはずなのよ。
リベンジチャンスに燃えている騎士科学生たちと、笑顔で振りかざした拳を見せ合うアスラーン。
でも、でもね、アスラーン。
わたくし留年なんて、そんな大事なこと、ひとことも聞いていないわよ?!
『言ってないからな、すまん』
即座に応えが。またしても脳内に。さっきからなんなの?
アスラーンは、わたくしにピタリと視線を合わせた。そして拡声器は観客席に向けたまま、ついっとわたくしの右手を取った。
【俺は、ほぼ一年まえに、噴水広場で君に求婚した。
そのときは即刻振られた。
当然だ。俺はあのとき“自国の国益になるから”という理由で求婚したのだから】
『違う。一目で欲しくなったからだ』
拡声器を通して語られる声と前後して、脳内に響くアスラーンの声。
【だが、断られても君のことを諦められなかった。
なぜなら、この学園で過ごし、君と言う人間を知れば知るほど、君に惹かれたのだから】
『これは本当。そして決定打はあの夜の大聖堂』
脳内にはアスラーンの声と共に夜の大聖堂で月夜に輝くステンドグラスの映像が映し出された。
【俺は何度でも乞い願う。
アンネローゼ姫、君を愛している。
君が望むならどこの国の国王の首でも獲ってこよう。
君の望むままに、世界の版図を変えてみせよう。
なんなら、俺の国が属国になっても構わない】
『そうする価値がおまえにはある』
アスラーンがわたくしの前に、片膝立てて跪く。
【アンネローゼ姫。
君に恋焦がれるあまり、学業が疎かになり留年するような男になりさがった俺だけど、どうか、俺を正式な婚約者にしてくれ】
『もう一年、一緒にいたかったから試験は名前だけ書いて提出した!』
この男。
どうしてくれよう。
さきほどから突っ込みたい案件が山のようにあるわよ!
留年のこと。
この脳内に木霊するアスラーンの声のこと。
それと三度目の公開求婚!
求婚自体は四度目だけど!
その内容でさらりと物騒なこと言っていたし!
いつわたくしが他国の王の首を所望したの?
『年末パーティーで』
あれは、彼らを追い払う為にわざとやった無茶ぶりよ!
そんなこと分かってるでしょうに!!
「ローゼ? 返答、どうするの?」
レオニーが拡声器を通さない、囁くような声でわたくしに問い掛けたことでハッとしたわ。
今、わたくし心の声でアスラーンと会話していた?
会場中がアスラーンの公開求婚に固唾を呑んで見守っているみたいな雰囲気をビシバシと感じるわ。
みんな、わたくしがどんな返事をするのか待っている。
「わたくしは……」
なんて応えればいいの?
混乱してきたわ……一気に色々なことが重なって、わたくしでは処理しきれないわっ。
『おまえが一番に望むことを。アンネローゼ』
26
あなたにおすすめの小説
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
初恋を諦めたあなたが、幸せでありますように
ぽんちゃん
恋愛
『あなたのヒーローをお返しします。末永くお幸せに』
運命の日。
ルキナは婚約者候補のロミオに、早く帰ってきてほしいとお願いしていた。
(私がどんなに足掻いても、この先の未来はわかってる。でも……)
今頃、ロミオは思い出の小屋で、初恋の人と偶然の再会を果たしているだろう。
ロミオが夕刻までに帰ってくれば、サプライズでルキナとの婚約発表をする。
もし帰ってこなければ、ある程度のお金と文を渡し、お別れするつもりだ。
そしてルキナは、両親が決めた相手と婚姻することになる。
ただ、ルキナとロミオは、友人以上、恋人未満のような関係。
ルキナは、ロミオの言葉を信じて帰りを待っていた。
でも、帰ってきたのは護衛のみ。
その後に知らされたのは、ロミオは初恋の相手であるブリトニーと、一夜を共にしたという報告だった――。
《登場人物》
☆ルキナ(16) 公爵令嬢。
☆ジークレイン(24) ルキナの兄。
☆ロミオ(18) 男爵子息、公爵家で保護中。
★ブリトニー(18) パン屋の娘。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう
楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。
目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。
「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」
さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。
アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。
「これは、焼却処分が妥当ですわね」
だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる