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第2話
この人、何言っているんだろう……?
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「それでね! もうすごい勢いで来たからそこを僕が眉間に槍を突き立てたんだけど、それじゃあ絶命しなくてさ! もう大変だったんだよ、暴れ回って逃げようとするから辺り一面に血が飛び散って……!」
「そ、そうか、そうなんだ、良くやったなぁ、ヒューイ……」
「うん! あとで解体しなきゃだから、も少し待っててね!」
その後、きちんと身ぎれいになったヒューイとゼンブルさんを含めて昼食をする。
普段の生活では俺とヒューイ、ゼンブルさんとヒュペルお義父さんとそれぞれ番い同士に分かれて暮らしているが、食事はしばらく一緒に摂ろうということになっていた。
これは俺がヒュペルお義父さんたちとの親睦を深めるため、これはゼンブルさんが極力俺とヒューイを二人きりにしたくないためである。
俺の顔を見たくないと言っておきながら、食事をするのはいいのかと思ったが、基本このドーベルマンは俺に顔を向けず、言葉も発さない。
だがヒューイとヒュペルさんはあれこれと話しかけてくれるので、構図的に3対1なせいもあって、より敵視されていた。
最近は慣れてきたものの、今日は特別ヒューイが血など気にせずに帰ってきたことに圧される俺の言葉がたどたどしいのが気に入らないのだろう。
どもる度に顔が恐ろしいことになるドーベルマンに、隣に座る番いの柴犬が脇を攻撃しているが効果は薄く、俺憎しが勝っているようだ。
正直、困った状況なのは言うまでもない、どうせなら仲良くしたいのが俺の本音なので、どうしようかと考えていたことを実行してみる。
「あの……、ゼンブル、さん……」
「……気安く話しかけるな」
「うっ……。 いえっそうもいきません、あのっ今後もこうして親交を深めていくことになるので、その……、ぜひお義父さんと呼ばせていただーー」
「……! 貴様のような奴に義父などと呼ばれたくはない、 この泥棒猫が! 私の可愛いヒューイを傷つけたくせにどの口がそんな言葉を使うんだ!」
「ゼンブル!」
「ヒュペルお義父さん、俺は大丈夫です」
「なっ……!? ヒュペル、お義父さん、だと……!?」
名を呼べば低く怒りのこもった声をぶつけられ、思わず退きたくなるが、そこはなんとか俺の中の漢を震わせて前に出る。
ヒュペルさんのことをお義父さんと呼ぶのだから、ゼンブルさんのこともお義父さんと呼びたいと思うのは自然なことだ。
だから許しをもらおうとするが、本人はよほど気に入らないのか、持っていた木製のスプーンを叩きつけるようにテーブルへ置く。
もう我慢ならないといった様子でヒュペルさんも声を荒げるが、なんとか俺が制する、座ったままの足は小刻みに震えまくってるが。
ていうかこの人マジで怖いんだけど!? 何なの、もう! あれなの、真の英雄は目で殺す的なそんなことができる人なの!?
ところがゼンブルさんは俺がヒュペルさんのことをお義父さんと呼んだことがよほど衝撃的なのか、愕然とした顔を浮かべていた。
「……ヒューイだけじゃなく、私の番いにまで手を出したのか?」
「はっ? いえっそんなわけーー」
「黙れ! 貴様、私の宝を奪い尽くすつもりだな!? これだから人属は!」
「ゼンブル! いい加減にーー!」
「そんなに……、そんなに……
そんなに呼びたければ私のことはパパと呼ぶがいい!!」
……時間が止まるとはまさにこのことだろうか。
悲壮な顔で突然とんでもないことを言い出すゼンブルさんに、俺とヒュペルお義父さんは絶句し、違うといえど聞く耳持たず罵声を出すだけ。
我慢の限界と殴りかかろうとしたお義父さんが胸ぐらを掴もうとしたとき、ドーベルマン父は俺を指差して口にした言葉がすべてを固まらせる。
えっと…………、この人何言ってるんだろう?
そんな感想しか出てこず、思わずヒュペルお義父さんに視線を向けると気まずそうに顔を背け、次にヒューイへ顔を向ける。
キョトンと今しがたの騒ぎなど気にしていない素振りで、小首を傾げて俺を見つめてくれた、可愛いなマジで俺の番いは天使だよ。
おっといかん話題が逸れたな、えぇっとあれだ、とりあえずそう呼べばいいのかと納得しつつゼンブルさんを見る。
どうせ呼べまいという顔、というよりはものすごく期待に満ち溢れたキラキラした瞳をしているのは気のせいだろうか。
まぁご要望には添えるので先に呼ぶことにしよう。
「……ゼンブルパパ?」
「ぐぉっふぉぉぉぉんんんっっっ!?!?!?」
パパと呼べば何があったのか、奇声をあげてゼンブルさんは仰向けに倒れた。
それはどういう反応なのかと聞きたくてたまらないが、いつの間にか立っていたはずのヒュペルお義父さんは腰掛けて頭を抱えている。
椅子に座ったまま倒れたゼンブルさんは、やがて震える体を何とか起こすようにしてテーブルを支えに顔を上げた。
「くっ……! 私の無謀な要求に難なく答えるとは……! そんなーー、そんな風に呼ばれても私は決して屈しないぞ!」
「パパ、鼻血鼻血」
「お前は……! 最初から認めてたならそう言えよ!? つうか早く出血止めろ!?」
恐れ慄くような声色でゼンブルさんは凛々しい顔で勇ましく吠える、鼻から蛇口を捻って出てくる水道水のごとく鼻血を出していなければ格好良かったが。
結局この人は何がしたかったのだろうか、そう考えていると出血多量で意識を失い、天に召されかけたので仕方なく俺は爺様を呼びに行き、訳のわからないことで騒ぎを起こすなと家族4人で怒られる羽目になった。
「そ、そうか、そうなんだ、良くやったなぁ、ヒューイ……」
「うん! あとで解体しなきゃだから、も少し待っててね!」
その後、きちんと身ぎれいになったヒューイとゼンブルさんを含めて昼食をする。
普段の生活では俺とヒューイ、ゼンブルさんとヒュペルお義父さんとそれぞれ番い同士に分かれて暮らしているが、食事はしばらく一緒に摂ろうということになっていた。
これは俺がヒュペルお義父さんたちとの親睦を深めるため、これはゼンブルさんが極力俺とヒューイを二人きりにしたくないためである。
俺の顔を見たくないと言っておきながら、食事をするのはいいのかと思ったが、基本このドーベルマンは俺に顔を向けず、言葉も発さない。
だがヒューイとヒュペルさんはあれこれと話しかけてくれるので、構図的に3対1なせいもあって、より敵視されていた。
最近は慣れてきたものの、今日は特別ヒューイが血など気にせずに帰ってきたことに圧される俺の言葉がたどたどしいのが気に入らないのだろう。
どもる度に顔が恐ろしいことになるドーベルマンに、隣に座る番いの柴犬が脇を攻撃しているが効果は薄く、俺憎しが勝っているようだ。
正直、困った状況なのは言うまでもない、どうせなら仲良くしたいのが俺の本音なので、どうしようかと考えていたことを実行してみる。
「あの……、ゼンブル、さん……」
「……気安く話しかけるな」
「うっ……。 いえっそうもいきません、あのっ今後もこうして親交を深めていくことになるので、その……、ぜひお義父さんと呼ばせていただーー」
「……! 貴様のような奴に義父などと呼ばれたくはない、 この泥棒猫が! 私の可愛いヒューイを傷つけたくせにどの口がそんな言葉を使うんだ!」
「ゼンブル!」
「ヒュペルお義父さん、俺は大丈夫です」
「なっ……!? ヒュペル、お義父さん、だと……!?」
名を呼べば低く怒りのこもった声をぶつけられ、思わず退きたくなるが、そこはなんとか俺の中の漢を震わせて前に出る。
ヒュペルさんのことをお義父さんと呼ぶのだから、ゼンブルさんのこともお義父さんと呼びたいと思うのは自然なことだ。
だから許しをもらおうとするが、本人はよほど気に入らないのか、持っていた木製のスプーンを叩きつけるようにテーブルへ置く。
もう我慢ならないといった様子でヒュペルさんも声を荒げるが、なんとか俺が制する、座ったままの足は小刻みに震えまくってるが。
ていうかこの人マジで怖いんだけど!? 何なの、もう! あれなの、真の英雄は目で殺す的なそんなことができる人なの!?
ところがゼンブルさんは俺がヒュペルさんのことをお義父さんと呼んだことがよほど衝撃的なのか、愕然とした顔を浮かべていた。
「……ヒューイだけじゃなく、私の番いにまで手を出したのか?」
「はっ? いえっそんなわけーー」
「黙れ! 貴様、私の宝を奪い尽くすつもりだな!? これだから人属は!」
「ゼンブル! いい加減にーー!」
「そんなに……、そんなに……
そんなに呼びたければ私のことはパパと呼ぶがいい!!」
……時間が止まるとはまさにこのことだろうか。
悲壮な顔で突然とんでもないことを言い出すゼンブルさんに、俺とヒュペルお義父さんは絶句し、違うといえど聞く耳持たず罵声を出すだけ。
我慢の限界と殴りかかろうとしたお義父さんが胸ぐらを掴もうとしたとき、ドーベルマン父は俺を指差して口にした言葉がすべてを固まらせる。
えっと…………、この人何言ってるんだろう?
そんな感想しか出てこず、思わずヒュペルお義父さんに視線を向けると気まずそうに顔を背け、次にヒューイへ顔を向ける。
キョトンと今しがたの騒ぎなど気にしていない素振りで、小首を傾げて俺を見つめてくれた、可愛いなマジで俺の番いは天使だよ。
おっといかん話題が逸れたな、えぇっとあれだ、とりあえずそう呼べばいいのかと納得しつつゼンブルさんを見る。
どうせ呼べまいという顔、というよりはものすごく期待に満ち溢れたキラキラした瞳をしているのは気のせいだろうか。
まぁご要望には添えるので先に呼ぶことにしよう。
「……ゼンブルパパ?」
「ぐぉっふぉぉぉぉんんんっっっ!?!?!?」
パパと呼べば何があったのか、奇声をあげてゼンブルさんは仰向けに倒れた。
それはどういう反応なのかと聞きたくてたまらないが、いつの間にか立っていたはずのヒュペルお義父さんは腰掛けて頭を抱えている。
椅子に座ったまま倒れたゼンブルさんは、やがて震える体を何とか起こすようにしてテーブルを支えに顔を上げた。
「くっ……! 私の無謀な要求に難なく答えるとは……! そんなーー、そんな風に呼ばれても私は決して屈しないぞ!」
「パパ、鼻血鼻血」
「お前は……! 最初から認めてたならそう言えよ!? つうか早く出血止めろ!?」
恐れ慄くような声色でゼンブルさんは凛々しい顔で勇ましく吠える、鼻から蛇口を捻って出てくる水道水のごとく鼻血を出していなければ格好良かったが。
結局この人は何がしたかったのだろうか、そう考えていると出血多量で意識を失い、天に召されかけたので仕方なく俺は爺様を呼びに行き、訳のわからないことで騒ぎを起こすなと家族4人で怒られる羽目になった。
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