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第2話
やっぱりこの人、何言ってるんだろう……??
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「ゼンブル、言いたいことがあれば聞くぞ?」
空間を圧縮したように、張り詰めた雰囲気が辺りを支配して居心地がすごく悪い。
俺もだが、村に住む狩りを生業としている人たちがこの村の長の後ろで尻尾を丸めて恐怖に耐えていた。
見るからに怒り心頭な三毛猫様の前、正座しているのは二人の犬人、ゼンブルさんとヒューイがいる。
ちなみにパパの方は頭にデカいたん瘤を何個も拵えており、顔面には殴られた跡がこれでもかと刻まれていた。
ヒューイも頭こそ叩かれたが、瘤は出てないのであまり目立ってはいない、もし瘤が目立ってたら俺は爺様に盾突いていたかもしれないけど。
まぁ直後に俺の顔は原型を留めないほどに殴られて、悲惨なことになるのでやるつもりは毛頭ないが。
「……獲物の頭数が足りないと思ったのです。 ですのでもう一度狩りに出ようと」
「ファングボアを10体も仕留めて足りぬと? この村で一二を争う巨体のお前より、数倍以上巨大な獲物がこれだけいて足りぬと言うか?」
「はい」
「足りとるわい! いやっ足り過ぎるくらいじゃ! 普段は4体で村の皆が7の日を生きていける程度の食糧になるというのに、食べ切れぬわい!」
「何を言うのです! 成長期の子供はたくさん食べて大きくなるもの! ならばまだまだ足りません!」
「成長期といえど食べられる量など決まっとる!そもそも、乱獲すればいずれ食するための獲物がなくなり、ワシらは困窮してしまうというのが分からんのか、この大莫迦者!」
ゼンブルさん曰く、まだ獲物が足りないというので行こうとしたらしいが、俺はそっと少し離れたところに目を向ける。
そこには俺のおよそ5倍以上はある巨大な猪みたいな魔物の死体が10体もいて、これが朝から昼にかけて仕留めた獲物だというのだ。
爺様が話したように、これだけあれば食べきれずに肉を腐らせてしまうだろう。 冷蔵庫があれば別だが、そんなものあるはずもない。
確かに食料は必要だが、ゼンブルさんが語るほどの子供なんて村にいたのか、俺には心当たりがなかった。
「爺様こそ何を言ってるのですか! 私には村の食糧確保を担う狩りの責任者として、その任を全うせねばならぬのです!」
「話を聞いておらんのか!? 大食らいなのはお前とヒューイくらいではないか! そもそも子供というが、村に幼子は今3人しかおらん!」
「いるではないですか、そこに!」
なんだか話が通じていないゼンブルさんに、爺様はワナワナと怒りだけが増して、周囲に火花が散ってる気がするのだが、おそらく魔力に反応しているのだろう。
俺はふと村の人達に目を向けると、全員が首を振って止められないのでお願いしますと言われてる気がするが、無茶言わないでくれ……。
言い争いは白熱し、爺様の迫力に負けじと張り合うゼンブルさんも大したものだが、ふと俺を指さしてきた。
えっ、なんで急に? 訳がわからないと思うが、突然のフリにヒューイを除いた全員が呆然としている。
「爺様、ゼンブル父さんはダイチのためにたくさん食べさせてあげたいって言ってるんですよ」
「……なぜダイチが出てくるのじゃ?」
「何を言ってるのですか! あんなひょろっちぃ体つきをしているのに、子供と言わずして何と言うのです! いずれ子供を養う親としてはあまりに貧相では、産まれてくる孫に申し訳が立たないではありませんか!」
「お主、相変わらずぶっ飛んでおるな、いやっ控えめにいって阿呆が過ぎるわ……」
爺様、それは控えてないです、と言いたくなるのをグッと堪える、よく見ると他の人たちも何か言いたそうに口を噤んでいた。
えぇっとつまり、ゼンブルさんは俺がたくさん食べて大きくなれるよう励もうとしていたということなのだろう。
確かに獣人たちと比較すれば頭一個分以上も小さいが、これでも向こうではとっくに成人しているのだが、どうやらあの人にはそう見えていなかったようだ。
話は済んだとばかり、ゼンブルさんは傍らに置いていた槍を持って森へ向かおうとするのを、村の人達が取り押さえるが、ビクともせずズルズルと引っ張って歩く。
すげぇ腕力だなとヒュペルお義父さんの言葉を思い出していると、寒気が走ったので見れば爺様が睨んでいた。
どうやら俺がなんとかしなければならないようだ、腹を括ってその呼び名を口にする。
「ゼンブルパパ、待ってください」
「ーーっ!? ふごっ、ぐぉぉぉぉぉんん!?!?」
止まればいいなぁと希望的観測で呼ぶと、パパはまたしても奇声を発したと思えば、その顔を地面に叩きつけた。
抑えていた人たちは突然の奇行に抑えていた手足を思わず離し、様子を窺っている。
やがてズボリと顔で開けた地面の穴からドーベルマンパパが腹の底から出すように低い声を出した。
「……やはり人属は恐ろしい。 だからこそ、だからこそ私がしっかり管理してやらねばならんのだ!!!!」
「パパ、鼻血鼻血」
「……誰か、ヒュペルを連れてこい、止められるのはアレしかおらん」
「はっはい、すぐに!?」
強敵を前にしたような鬼気迫る顔でこちらへと振り向くが、鼻からやっぱり洪水のような鼻血が滴り落ちて、掘った穴に滴り血の池が出来上がろうとしていた。
爺様が頭を抱え、今は別の仕事をしているはずのヒュペルお義父さんを呼びに行けと俺たちを呼んできたレトリバーの犬人が慌てて走っていく。
お義父さん、ごめんなさい、俺にはパパを止めるのはまだまだ時間がかかるようです。
空間を圧縮したように、張り詰めた雰囲気が辺りを支配して居心地がすごく悪い。
俺もだが、村に住む狩りを生業としている人たちがこの村の長の後ろで尻尾を丸めて恐怖に耐えていた。
見るからに怒り心頭な三毛猫様の前、正座しているのは二人の犬人、ゼンブルさんとヒューイがいる。
ちなみにパパの方は頭にデカいたん瘤を何個も拵えており、顔面には殴られた跡がこれでもかと刻まれていた。
ヒューイも頭こそ叩かれたが、瘤は出てないのであまり目立ってはいない、もし瘤が目立ってたら俺は爺様に盾突いていたかもしれないけど。
まぁ直後に俺の顔は原型を留めないほどに殴られて、悲惨なことになるのでやるつもりは毛頭ないが。
「……獲物の頭数が足りないと思ったのです。 ですのでもう一度狩りに出ようと」
「ファングボアを10体も仕留めて足りぬと? この村で一二を争う巨体のお前より、数倍以上巨大な獲物がこれだけいて足りぬと言うか?」
「はい」
「足りとるわい! いやっ足り過ぎるくらいじゃ! 普段は4体で村の皆が7の日を生きていける程度の食糧になるというのに、食べ切れぬわい!」
「何を言うのです! 成長期の子供はたくさん食べて大きくなるもの! ならばまだまだ足りません!」
「成長期といえど食べられる量など決まっとる!そもそも、乱獲すればいずれ食するための獲物がなくなり、ワシらは困窮してしまうというのが分からんのか、この大莫迦者!」
ゼンブルさん曰く、まだ獲物が足りないというので行こうとしたらしいが、俺はそっと少し離れたところに目を向ける。
そこには俺のおよそ5倍以上はある巨大な猪みたいな魔物の死体が10体もいて、これが朝から昼にかけて仕留めた獲物だというのだ。
爺様が話したように、これだけあれば食べきれずに肉を腐らせてしまうだろう。 冷蔵庫があれば別だが、そんなものあるはずもない。
確かに食料は必要だが、ゼンブルさんが語るほどの子供なんて村にいたのか、俺には心当たりがなかった。
「爺様こそ何を言ってるのですか! 私には村の食糧確保を担う狩りの責任者として、その任を全うせねばならぬのです!」
「話を聞いておらんのか!? 大食らいなのはお前とヒューイくらいではないか! そもそも子供というが、村に幼子は今3人しかおらん!」
「いるではないですか、そこに!」
なんだか話が通じていないゼンブルさんに、爺様はワナワナと怒りだけが増して、周囲に火花が散ってる気がするのだが、おそらく魔力に反応しているのだろう。
俺はふと村の人達に目を向けると、全員が首を振って止められないのでお願いしますと言われてる気がするが、無茶言わないでくれ……。
言い争いは白熱し、爺様の迫力に負けじと張り合うゼンブルさんも大したものだが、ふと俺を指さしてきた。
えっ、なんで急に? 訳がわからないと思うが、突然のフリにヒューイを除いた全員が呆然としている。
「爺様、ゼンブル父さんはダイチのためにたくさん食べさせてあげたいって言ってるんですよ」
「……なぜダイチが出てくるのじゃ?」
「何を言ってるのですか! あんなひょろっちぃ体つきをしているのに、子供と言わずして何と言うのです! いずれ子供を養う親としてはあまりに貧相では、産まれてくる孫に申し訳が立たないではありませんか!」
「お主、相変わらずぶっ飛んでおるな、いやっ控えめにいって阿呆が過ぎるわ……」
爺様、それは控えてないです、と言いたくなるのをグッと堪える、よく見ると他の人たちも何か言いたそうに口を噤んでいた。
えぇっとつまり、ゼンブルさんは俺がたくさん食べて大きくなれるよう励もうとしていたということなのだろう。
確かに獣人たちと比較すれば頭一個分以上も小さいが、これでも向こうではとっくに成人しているのだが、どうやらあの人にはそう見えていなかったようだ。
話は済んだとばかり、ゼンブルさんは傍らに置いていた槍を持って森へ向かおうとするのを、村の人達が取り押さえるが、ビクともせずズルズルと引っ張って歩く。
すげぇ腕力だなとヒュペルお義父さんの言葉を思い出していると、寒気が走ったので見れば爺様が睨んでいた。
どうやら俺がなんとかしなければならないようだ、腹を括ってその呼び名を口にする。
「ゼンブルパパ、待ってください」
「ーーっ!? ふごっ、ぐぉぉぉぉぉんん!?!?」
止まればいいなぁと希望的観測で呼ぶと、パパはまたしても奇声を発したと思えば、その顔を地面に叩きつけた。
抑えていた人たちは突然の奇行に抑えていた手足を思わず離し、様子を窺っている。
やがてズボリと顔で開けた地面の穴からドーベルマンパパが腹の底から出すように低い声を出した。
「……やはり人属は恐ろしい。 だからこそ、だからこそ私がしっかり管理してやらねばならんのだ!!!!」
「パパ、鼻血鼻血」
「……誰か、ヒュペルを連れてこい、止められるのはアレしかおらん」
「はっはい、すぐに!?」
強敵を前にしたような鬼気迫る顔でこちらへと振り向くが、鼻からやっぱり洪水のような鼻血が滴り落ちて、掘った穴に滴り血の池が出来上がろうとしていた。
爺様が頭を抱え、今は別の仕事をしているはずのヒュペルお義父さんを呼びに行けと俺たちを呼んできたレトリバーの犬人が慌てて走っていく。
お義父さん、ごめんなさい、俺にはパパを止めるのはまだまだ時間がかかるようです。
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