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第三章

町への訪問、再チャレンジ!

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 朝が来た!

 今日は赤鷲の団の皆と待ち合わせをしている日だ。
「う~ん」と背筋を反りながらベッドから下りると、ケルベロスちゃんが近寄ってきた。
 名前は左から”レフ”ちゃん、”セン”ちゃん、”ライ”ちゃんとした。
 そして、総称はケルちゃん!
 ……まあ、しっくり来るのが無かったから仕方が無い。
 そう呼んであげたら、三首ともまんざらでも無い顔をしていたから、良しとする。
 うん、もしこの子が子供を産んだら……ちょっと困るかもだけど。
 わたしの足に頬ずりする三首を撫でながら、朝ご飯を食べる。
 ケルちゃんは何を食べる?
 肉?
 やっぱり、そうなるかぁ。
 弱クマさんのお肉を焼いてあげた。
 わたしもそれにする。
 スープとか食べたいかな。
 ママと暮らしている時は、エルフのお姉さんが持ってきた物でポトフっぽいものを作ったりしていた。
 スープ内のお肉に関しては気に入ったお兄ちゃん達男性陣だったが、それ以外に関しては不評だった。
 飲むのが面倒くさいらしい。
 あと、野菜やキノコはいらないらしい。
 だけど、女性陣には好評だった。
 ママはわたしが作ったから、美味しいって言ってくれただけかもだけど、お姉ちゃんは料理されたものが好きだったから、本気で言っていたと思う。

 ああ、お姉ちゃんに会いたいなぁ~

 スープを作るのには野菜が圧倒的に足りない。
 というより、人参とソラマメ、ピーマンしかなければどうしようも無い。
 今日の赤鷲の団に期待大だ!


 ついて行きたそうなケルちゃんを宥めつつ、花壇の上を飛んでいた妖精姫ちゃんに挨拶しつつ、出発する。
 森を抜け、川を飛び越え、さらに森を抜ける。
 草原、林を抜け、町の手前に赤鷲の団の三人が立っていた。
 わたしに気づくと、手を振ってくれた。
 手を振り返しながら近づきつつ、門番チェック。
 今日はあの怖い人じゃ無く、若そうな二人が立っていた。
 よかった!
「おはよう!」
と挨拶をしながら、わたしは赤鷲の団団長ライアンさんに小袋を渡した。
 団長さんに種を貰った時の袋だ。
「ん? なんだ?」と言いつつ袋を開いた赤鷲の団団長ライアンさんは、なぜか顔を引きつらせた。
 ん?
 どうしたの?
 赤鷲の団団長ライアンさんは辺りを気にしつつ、「この事は絶対話すなよ」と釘を刺してきた。
「分かってるって!
 この前注意されたし!」
「どうしたんだ?」
と赤鷲の団マークさんが訊ねてくる。
 赤鷲の団アナさんも不思議そうにしている。
 赤鷲の団団長ライアンさんが一つため息を付くと、小袋の中身を二人に見せた。
「え?
 新しい!?
 しかも、凄く増えてる!」
「嘘!?
 サリーちゃん、本当に!?」
「出来るって言ったでしょう?」
とわたしは口をとがらせた。
 小袋の中にあるのはコショウだ。
 もちろん、貰った種では無い。
 昨日採れた新しいのだ。
 赤鷲の団団長ライアンさんが首を振りながら言う。
「いや、まさか本当に成功するとは思わないだろう……。
 しかも、こんなに短時間で……」
 そこまで話すと、赤鷲の団団長ライアンさんは声を低くしながら言う。
「お前ら、絶対このことを話すなよ。
 これはサリーのためだけじゃない、これが知れたら俺たちの命だって危ないんだ」
 赤鷲の団マークさんがギョッとした顔をする。
「え?
 それって、どういうことだ!?」
「サリーが魔法でコショウを実らせることが出来ると知られたら、確実に貴族が出てくる。
 そしたら、どうなる?」
「いや、サリーは危ないが……」
「サリーはあの”森の悪魔”を蹴り一発で殺すんだぞ?
 貴族の私兵ごときでどうにかなる訳ないだろう!
 そしたら、貴族はどう思う?」
「え?
 どうって?」
「知人を人質にして、言うことを聞かせようとするんだよ!
 その時、一番狙われるのが……」
 わたし達の視線が、赤鷲の団アナさんに集まる。
 うん、腕力の無い女性で、しかも美人さんだから絶対狙われるね。
 赤鷲の団アナさん、顔を真っ青にしている。
 赤鷲の団団長ライアンさんは改めて皆に視線を向ける。
「分かったな!
 絶対に広めるなよ!
 特にサリー!
 自分が平気だからって、ペラペラ喋るなよ!」
「しゃ、喋らないよぉ!」
 うん、気をつけよ!
 その後、赤鷲の団アナさんから大きな籠を渡された。
 背負うことが出来る物で、中には色んな種や種芋、各大きさの袋、そして、なぜかロープや紐などが入っていた。
 添え木を使うようなものには必要だろうと買ってきてくれたとのことだ。
 アナさん、気が利く!
「今度、出来た作物を持ってきてあげる!」と言ったら、果物の種も入っているから、大いに期待しているとアナさんににっこり微笑まれた。
 冒険者でも女子だねぇ。
 しかも、「今の季節にあっても不自然にならないのは、この種だから!」と指定までされてしまった。
 しっかり屋さんだ。
 あと、お釣りだと言って硬貨の入った袋を渡してきた。
「いいよぉ~取っておいて!」って言ったら、怒られた。
「何かで必要になるかも知れないんだから、しっかり持ってなさい!」って。
 なんだか、お母さんみたいだった。
 まあ、何があるか分からないのは間違いないから、ありがたく受けとておくことにした。
 あと、お金を使ったことが無いって言ったら、基本的なことを教えてくれた。
 助かります。

 赤鷲の団団長ライアンさんに、今から町の中に入ってみるか? って言われた。
 冒険者になれば、一応、身分証になるとの事で、町で住まないにしても取っておいて損は無いとのことだ。
 それに、いちいち待ち合わせをしなくても良いとも言われた。
 確かに。
 チラリと門を見てみる。
 例の人はいない。
「行ってみる!」
「じゃあ、付いてこい!」
 赤鷲の団団長ライアンさんの後について、門まで進む。
 赤鷲の団アナさんが「”王妃様の苺の焼き菓子”が凄く美味しいから食べに行きましょう!」と言ってくれた。
 凄く楽しみ!
 門に到着、前回同様アーチ状になった手前で何人かの人が並んでいる。
 しばらく並んでいると、わたし達の番になる。
 赤鷲の団の皆が証明書らしきものを門番さんに見せている。
 あと、わたしの説明をしはじめた。
 ドキドキしながら待っていると、アーチ状の中間地点、そこにある扉が開いた。
 例の門番さん登場!
 しかも、バッチリ目が合った。
「ぎゃぁぁぁ!」
「あ!
 お前!」
 そんな声を背に、わたしは猛ダッシュで逃げた。

――

 家に駆け込むと、扉をしっかり閉める!
 怖かったぁ。
 赤鷲の団アナさんに貰った籠を床に置くと、ケルちゃんがなんだなんだといった感じで近寄ってきたので、ギュッと抱きしめる。
 モフモフしていて癒やされる。
 あ、センちゃんだけハグは駄目ね。
 レフちゃん、ライちゃんもギュッとする。
 しかし、例の門番さん、怖かったぁ。
 あの殺人鬼顔があるだけで、あの門は鉄壁だね。
 本当に。
 椅子にドカンと腰を下ろすと、扉が開き、妖精姫ちゃんが心配そうに顔を覗かせてきた。
 可愛い!
「大丈夫!
 大丈夫!
 気にしないで!」
と手を振ると、ちょっと安心した感じになる。
 そして、籠に気がつくとそこに飛んでいく。
 ああ、赤鷲の団の皆に挨拶もせずに帰ってきてしまった。
 今度会ったら謝ろう。
 ……どうやったら、会えるかな?
 妖精姫ちゃんが興味津々な様子で籠の上を旋回しているので、わたしは籠を引き寄せて蓋を開ける。
 布やロープ、袋類と、一つ一つ取り出してみる。
 小袋に何やら色んな種が入っている。
 文字らしきものが書かれているけど……。
 わたし読めないんだなぁ。
 あ、この袋はジャガイモとサツマイモだ!
 この袋に詰め込まれているのは……多分小麦だ!
 一度、エルフのお姉さんが持ってきたから、見たことがあった。
 用途が沢山ある、最強の穀物だ!
 個人的に、お米より嬉しい!
 醤油も付けると言われたら……悩むけど!
 まあ、何はともあれ取りあえず、手当たり次第育ててみよう!
 気合いを入れて立ち上がるわたしの前から――妖精姫ちゃん達が種を奪い去っていく。
 えっ!?
 何!?
 妖精姫ちゃんが身振り手振りで何かを伝えてくる。
 ん?
 植える場所と種類はわたし達が決める?
 えっ?
 いや、別によく分かってないから良いんだけど……。
 いつの間にかやって来ていた妖精メイドちゃんや何か文官みたいな人たちが集まり、相談を始める。

 ……疎外感。

 ちょっといじけていると、何やら段取りが決まったのか、妖精姫ちゃんに引っ張られるまま、外に出ることに。
 それから、夕方まで色んなものを成長させるのであった。
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