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第四章

何か、石を貰う。

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 朝!
 曇り!
 何となくラジオ体操をしてみる。
 その流れで、国舞を披露する。
 同時に国歌を歌う。
 ふむ、良い!
 昨日はお肉で喜んでもらい、今日はダンスと歌でママに喜んで貰う。
 わたしは何て親孝行ものなんだろうか!
 ん?
 蟻さんが顎をカチカチさせながら、前足を振っている。
「どうしたの?」とそばに寄ってみると、その蟻さんの後ろにいる蟻さん達が、よく分からないけど前足に石を抱えて立っていた。
 え?
 なに、その石?
 ん?
 え、わたしに?
 わたし、石なんか貰っても仕方がないんだけど……。
 そう思いながら、大蟻さんから石を一個、受け取る。
 そこで思い出した。
「ああ、物作り妖精のおじいちゃんが欲しがっていた石か!」
 とりあえず、すべて受け取り、代わりに果物を成長させて、それを収穫し、大蟻さん達に渡す。
 え?
 種も持ってきたの?
 今回の種は一粒、さて、今回の種ガチャは当たりを引くでしょうか?
 何て思いつつ、その種を手のひらの上で転がしていると、凄まじい勢いで妖精姫ちゃんが飛んできて――わたしの顔面にへばりついた。

 地味に痛かった。

 痛いよ! 姫ちゃん!
 え?
 その種はこっち?
 わたしは妖精姫ちゃんに袖を引かれて連れてかれる。
 場所は、結界を出たその先にある、巨大蜂ちゃん達の巣がある方だった。
 巣の上に延びるシナの木の枝で警戒をしていた兵隊蜂君達が、わたし達に気づいたようで前足を振って――突然、こっちに向かって飛んできた。

 何事!?

 わたしの横をすり抜けた兵隊蜂君は、少し距離をとりつつ付いてきていた大蟻さん達の手前で少し浮き上がると――あ!? 駄目!
「ちょっと待ったぁぁぁ!」
 わたしは右足で地面を蹴ると、兵隊蜂君の腰(?)にしがみつき、体の向きを無理矢理横に向ける。
 兵隊蜂君のお尻から吹き出た針が鋭く木に刺さり――刺さった辺りをどす黒く変色させていく。
 そして、ついには刺さった幹の部分からボキリと折れた。

 あっぶなぁ~い!

 わたしならともかく、この針の毒は弱クマさん程度であれば絶命させられる威力があるんだ。
 蟻さんではひとたまりもないだろう。
 突然の事態にパニックになった蟻さん達は、わたしの家の方に逃げていった。
 兵隊蜂君は大蟻さんに対して良い印象がないのか、邪魔をしたわたしに対して、不満そうに顎をカチカチさせたが、「ごめんごめん!」と謝ると、仕方が無くと言った感じに、わたしを巣の方に先導してくれた。

 ああ、でもここら辺に住むのであれば、蟻さんを無闇に襲わないで欲しいなぁ。
 種ガチャは結構助かってるし。

 そんな風に一生懸命伝えると、妖精姫ちゃんの助力もあり、渋々ながらも頷いてくれた。

 巣に到着する。

 巣、といってもまだ、物作り妖精のおじいちゃん達が作った部分がほとんどのようで、壁の隙間から覗いてみると真ん中の方にかろうじて、巣の元みたいな物が出来ているぐらいだった。
 そこで、女王蜂さんが一生懸命、その拡張をしているところだった。
 あ、こっちに気づいて前足を振ってきた。
 わたしも振り返す。
 そんなことをしていると、妖精姫ちゃんがわたしの手を突っつく。
 開けってこと?
 手のひらを見せると、その上にある種を指さし、さらに、地面の下を指さした。

 ここで、育てるってことかな?

 言われた通りにしてみる。
「育てぇ~」
 ニョキニョキ生えたそれは――黄色い花を付けた。
 あぁ~菜の花か。
 妖精姫ちゃんが身振り手振りをする。
 もっと増やすのね、はいはい。
 前世の知識として、ミツバチは菜の花を好むってのがあった。
 巨大蜂さんとはいえ、それを踏襲しているんだろう。
 種が出来るまで成長させて、それをさらに成長させる、を繰り返す。
 すると、一面黄色い花畑になった。
 わぁ~綺麗!
 その上を、働き蜂さん達がはしゃぐように飛び回っている。
 女王蜂さんも兵隊蜂君も何となく嬉しそうだ。
 そういえば、菜の花っていろんなことに使えたな。
 食べられたし、植物性油の元でもあったはず。
 わたしは数粒の種を回収してから、女王蜂さん達に手を振り、その場を離れる。
 途中、兵隊蜂君から逃げていた大蟻さんと合流しつつ、家に戻る。
 蟻さんはたぶん、菜の花を貰っても嬉しくないだろうから、代わりに林檎を追加で渡して上げたら喜んで帰って行った。

 よし、今日は菜の花畑を作るために開墾するか!

 って思ったら、物作り妖精のおじいちゃん達が、蟻さん達が持ってきた石を片手に、やって来た。
 え?
 何?
 製鉄所?
 ……前も言ったと思うけど、いまいち、やる気が出ないんだよね。
 キャ!?
 ちょっと、止めて!
 皆してスカートに掴まらないで!
 脱げちゃう!
 脱げちゃうから!
 分かった!
 分かったから止めてぇぇぇ!

――

 嫌な脅迫方法が定着してしまった。
 言っておくけど、それ、かなりの変態行為だからね!
 わたし、結構皆のことを軽蔑し始めてるからね!
 え、良いから手を動かせ?
 むっかぁ~!

 などと言いつつも、色んな物を作って貰ってるし、これからも作って貰いたいので、結局の所、言われる通りにしちゃうんだけどね。

 家を中心に西側、物作り妖精のおじいちゃんに印を付けて貰ったんだけど、結構広く、木を伐採していかなくてはならないっぽい。
 まあ、白いモクモクさえあれば、さっさと出来ちゃうけどね。

 因みに、今いる場所は結界の外だ。

 物作り妖精のおじいちゃんは一旦、結界内に入って貰っている。
 力は強いけどちっちゃいから、下手をすると踏んづけそうになるからね。
 わたしは、白いモクモクを前回と同じく、刀の形に変化させる。
 よし、これぐらいで良いかな?
 手近な大木に一閃すると、ズルズルと幹の上下がずれて、ゆっくりと倒れる。
 上々だね。
 わたしは家とは逆の方に倒れるよう、スパスパと刃を下ろしていき、倒していく。
 時々、虫とかがワラワラ出てきたりするけど、そんな程度ではもう、怖がらなくなった。
 前世ならともかく、今世のわたしは誇り高きフェンリルの娘なのだ。
 おりゃおりゃおりゃ! と刀を振るい続ける。
 物作り妖精のおじいちゃんが付けた印分を倒すことが出来たら、倒した木を白いモクモクで持ち上げ、隅に移動させる。
 ある程度切り倒したら、切り株を引っこ抜いていく。
 何回かやっているので慣れたこともあるだろうが、一時間ほどで中学校のグランドぐらいの大きさの空き地が出来た。
 すると、物作り妖精のおじいちゃんが結界から出てくる。
 護衛のためか近衛騎士妖精君達も辺りを警戒しながらついてきている。

 じゃあ、結界を広げようかな。

 早いうちに、この場所が覆うようにしないと、物作り妖精のおじいちゃんにとっては危ないからね。
 え?
 その前に、枝切りと木の乾燥をするように?
 物作り妖精のおじいちゃんは人使いが荒いなぁ。
 サクサクと枝切りをしていく。
 途中、魔力密度を落とし、両手剣にする。
 枝ぐらいならスパスパ切れるから、この方が効率が良い!
 あっという間に枝切りは――枝打ちだっけ? 、とにかく完了する。
 さらに、白いモクモクで木材を包むと一気に乾燥も行う。
 我ながら、凄い!
 物作り妖精のおじいちゃんが早速加工をし始める。
 お手伝いしようか?
 え?
 ああ、結界を先に広げるのね。
 りょ~かい!

 結界を手早く広げると、安心したのか物作り妖精のおじいちゃんの作業速度がぐんぐん速まっていく。
 凄い!
 わたしは邪魔にならないように退散、せっかくなので国土を全体的に広げようと思う。
 そのためには、広げる分、木を伐採しないといけない。
 ママがいれば、そんなことをしなくてもやりようはあるんだけど、わたしでは結界石の間隔をさほど開けることが出来ないので仕方が無いのだ。
 木をスパスパと外側に倒しつつ、ぐるりと回っていく。
 まだまだ、外周はさほど広くないので、大して時間はかからない。
 あ、巨大蜂さん達側は広げ過ぎないようにしないと。
 結界が巣に近づきすぎると、蜂さん達の行動が制限されちゃうからね。
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