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第十四章

屋根裏での騒動

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 朝、起きた!
 ケルちゃんぬいぐるみを抱きしめているシャーロットちゃんと、フェンリルぬいぐるみを隣に置くイメルダちゃんの可愛らしい寝顔を一目ひとめ見つつ、ほんわかしながら起き上がる。

 寝間着から着替えて部屋から出る。
 ケルちゃんが「ガウ!」と勢いよく飛びかかってくるので、受け止めつつ「おりゃ!」と床に転がす。
「この、もふもふめ!」
 と言いつつ、黒いもふもふお腹を撫でてあげる。
 三首とも「ガウガウ!」と気持ちよさそうにしている。
 なんか、ここが一番喜ぶし、三首共通なので無難なのだ!

 え?
 別の場所も?
 はいはい、仕方が無いなぁ。
 ライちゃんからね!

 もふもふ毛皮を堪能する。
 すると、満足したのか、立ち上がると、センちゃんが袖を噛んで引っ張る。
 はいはい、今度は外ね。

 やや曇り気味ではあったけど雪は降ってなかったので、ケルちゃんを外に出す。
 戻ってきてから、顔を洗ったりしていると、頭上から何かが振ってくる。
「ん?」と濡れた顔で見上げると、スライムのルルリンが降りてきた。

 まあ、いつもの通りなので、タオルで顔を拭く。

 肩にポヨンとした感触がある。
 ばかりか、何やらスライムのルルリンがポヨンポヨンと訴えかけてくる。
 どことなく、機嫌が悪そうだ。

 え?
 何?
 どうしたの?
 え?
 あっち?

 スライムのルルリンが体の一部を尖らせて、アピールするのでそちらの方に歩く。

 え?
 ここ?

 中央の部屋食堂から見て左奥に――軽運動室や食料庫に向かう通路を作ったため、半分になってしまった部屋がある。
 どうやら、スライムのルルリンはそこに入るように言っているらしかった。

 ここ、今では石けんとか細々とした物しか置かれてないんだけど……。

 そんな事を思いつつ、戸を開ける。
 真っ暗なので、左手から出した白いモクモクを発光させて明かりとする。
 壺やら木箱やらが並んでいるだけだ。
 ん?
 わたしの肩にいるルルリンがビヨンと縦に伸びた。
 それを追って視線を向けると――ああ、そういえば、そういうものも有ったね。

 ルルリンが屋根裏への入り口に張り付いているのが見えた。
「何、わたしを屋根裏に連れて行きたいの?」
 訊ねると、スライムのルルリンは天井に張り付いたまま再度、体を伸ばし、わたしの肩を掴む。
 そして、急かすように引っ張り出した。
「はいはい、分かったから!
 服を引っ張らないで!」
 右手で出した白いモクモクを階段状にする。
 その上を上ると、左手で屋根裏への入り口を開けた。

 ほこりっぽい空気が――流れてくると思ったけど、そうでも無かった。
 入り口から顔を入れる。

 ん?
 なんか奥が明るい?

 入り口の枠に手をかけると体を中に入れる。
 木製の天井や床は、当然ながらむき出しだ。
 ただ、流石にニスまでは塗られていないけど、加工されて直ぐのように綺麗だ。
 ほこりはルルリンが食べているのかな?
 ルルリンが屋根裏にいれば、ネズミとかも絶対住み着かないだろうなぁ。
 まあ、結界がある我がには、そもそも、ネズミが入り込む余地なんて無いけど。
 なんて思いつつ立ち上がる。

 ん?
 何あれ?

 光の方にはなんかベッドとか家具とかが並んでいるのが見えた。
 何故そんな物が?

 近づいてみると、それらはやたらと豪華な物だった。
 まず、床に敷かれた絨毯は華やかで、クリーム色の生地に、季節の花が織り込まれている。
 ベッドはどうやらそれぞれ違いがあり、黒く塗られた物から、白地に金細工がされた物すらある。
 布団も羽毛でも入っているのかモコモコして温かそうだし、生地も高級感があり、一見しただけで触り心地が良さそうに見える。
 さらに、それらを囲むように磨き上げられたタンスや鏡台、机などが品良く置かれている。
 はっきり言うと、我が家の物より、遙かに良い物だ。
 そんな一角を、魔道具らしき小さな照明が取り囲んでいた。
 視線を少し移せば、棟木むなぎとかが見えている屋根裏で、この一角だけ妙に浮いていた。
 一体、何故、このような場所に……。

 ……。

 いや、分かるよ。
 だって、それらの品、皆、小さいし。
 一見するだけでは、ミニチュアだし。
 さらに言えば、ベッドのいくつかは使用中で、小さい女の子が仰向けに寝てるんだけど、掛け布団の隙間から羽根が出てるし。

 えぇ~。
 何でこんな所で寝てるの?
 わたしが少し、呆然と眺めていると、その中の一つで眠る妖精ちゃんが”うう~ん”とか言ってそうな感じに身動ぎをすると、薄く目を開いた。

 そして、わたしと目が合う。

 あ、この子、妖精メイドのウメちゃんだ。
 とか思っている間に、ウメちゃんの目が大きく見開かれ――何かを叫んだ、ようだ。
 わたしには声が聞こえないけど、他のベッドにいる子には聞こえたらしく、次々と皆が体を起こしだす。
 顔を赤めた妖精メイドのウメちゃんがベッドから出ると、何やら一生懸命言っている。
 多分、怒っているのだろうけど、よく分からない。
 ただ、普段、メイド服をきちんと着込んだウメちゃんが、可愛らしい青のネグリジェを着ている姿に、凄くときめいてしまった。

 新鮮で、愛らしい!

 キャ!
 妖精メイドの黒バラちゃんが来ている黒のネグリジェはちょっと、卑猥すぎないかなぁ~
 何て全然、反省の色を見せないわたしに対して、言っても聞かないと悟ったのか、ウメちゃんは飛び上がると、わたしの周りを飛びながら、頭とか頬とかペチペチ、叩いてくる。

 ごめん、ごめんって!

 などとやっていると、足下でスライムのルルリンがビヨンビヨンと激しく上下に動き始めた。

 え?
 何を怒っているの?
 え?
 屋根裏はルルリンの場所?

 ああ、なるほど。
 お気に入りの場所が占領されて、不満なのね。
「でも、なんでこんな場所で寝てるの?」
 妖精メイドのウメちゃんに訊ねていると、凄い勢いで妖精ちゃんが飛んできた。
 妖精メイドのサクラちゃんだった。
 サクラちゃんが身振り手振りで説明してくれる。

 赤ちゃん?
 ああ、エリザベスちゃんが夜泣きをする時にフォローをするため、ここで待機してたのね。
 ん?
 ああ、そうしているうちに、ここが皆の控え室になったと。

 確かに、ここで妖精メイドちゃん達が待機していて、わたし達の生活のフォローをしてくれるととても助かる。
 それに、今気づいたんだけど、寝ていた妖精ちゃん達の中には手芸関係でお世話になっている子も混じっていた。
 そう考えると、ここは皆に使って貰った方が良いかな……。

「ルルリン……。
 悪いんだけど、ここは皆に使わせてあげて」
 スライムのルルリンは”裏切られた!”とでも言うように、ビョン! と震えた。
 そして、”何でさ! ここはわたしの場所!”とでも言うように、ビヨンビヨン! と激しく揺れる。
「まあまあ、屋根裏なんてこんなに広いんだから、この一角は譲ってあげてよ」 
 わたしが柔らかボディーを撫でながらお願いをすると、苦渋を示すように細かく震えると、了承してくれる。

 ありがとう!
 え?
 ここ以外はルルリンわたしの場所?

 すると、妖精メイドのサクラちゃんが割って入る。

 え?
 あっちも?
 え?
 これ以上は嫌だ?
 ああ、もう!
 揉めないの!

 皆の調停に頭を悩ませる事になった。
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