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第十九章

共闘してロック鳥さんを倒そう!3

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 ただ、バランスは崩れたようで、地面に足を付け――小さいコル兄ちゃんはその間に距離を取る。
 普通であれば、攻撃する好機なんだけど、地上とはいえ、ロック鳥さんを相手に正面から戦うのは非常に危険だ。

 巨大な翼をはためき、バランスを崩させ、鉤爪でトドメを刺す。

 そんな凶悪コンボを前にまともに対峙すれば、竜種でも上位でなければひとたまりも無い。
 魔力のモクモクさえ使えれば、わたしでもかわかわし、何とかなるのだけど……。
 目の前で、鋭くにらみつけてくるロック鳥さん(エリート)相手では、それも使えないし……。

 一歩、二歩、三歩と地面を踏んだロック鳥さんが、翼をはためかせ飛び上がる。
 ご丁寧に、魔力が崩れる鳴き声も上げている。

「くっ!」
 吹き飛ばされそうになるのを、何とかこらえる。
 ロック鳥さんのあの巨体を浮かせる羽ばたきだ。
 わたしの腕力だけでは多分、小さいコル兄ちゃんにしがみ付いていられず、吹き飛ばされていただろう。
 魔力による身体強化を熱心に教えてくれた、ママに感謝だ!

 ……え?

 待った!
 待った!
 魔力を崩すあの咆哮が響く中、なんで”魔力による身体強化”が出来たんだろう?
 あれ、ひょっとすると……。

 わたしは左手から白いモクモクを出すと、それを覆うように氷の膜を厚めに作る。
 そして、高く上がっているにも関わらず、相変わらず鳴きまくっているロック鳥さんの――その前に晒すようにそれを移動させる。
 氷結した白いモクモクは……そのままだ。

 ふ~ん、なるほどなるほど。

 ロック鳥さんは慎重な性格の様だけど、その性格の為に、弱点を探らせてしまったようだね。

小さいコル兄ちゃん、合図をしたら”空”へ!』
『!?
 ……分かった!』
 小さいコル兄ちゃんはこういう時に、質問を返してこない。
 素晴らしいお兄ちゃんなのだ!

 再度、ロック鳥さんが突っ込んでくる。

 対処できないと高をくくっているのか、愚かにもワンパターンだ。
 円を描く様に駆ける小さいコル兄ちゃんの後を追跡するように、高速で飛んでくる。

 まだだ……。
 まだまだ……。
 良し!

 六十メートルぐらいまで下りてきた時、ロック鳥さんは小さいコル兄ちゃんの左横に向かってくる形になった。
 多分、そうなるようにロック鳥さん自身が調整していたのだろう――爪を前に出す。
 当然、例の鳴き声も忘れない。
 わたしはその瞬間、先ほど氷でコーティングした白いモクモクをロック鳥さんに向かって突き出す。

 長年、肉の保存用に作り続けてきた、妙技を見よ!

 氷コーティングされた白いモクモクを一気に広げ、巨大な氷の盾を作る。
 ロック鳥さんはそれを見て、さらに強く鳴き、氷の盾にひびが入る。
 だけど、盾の中にある白いモクモクは消えない!

 どういう理屈か知らないけど、どうやら、ロック鳥さんの声は”間に自分以外の何か”がある場合、効果を発揮しないようだ。
 もし発揮するのであれば、魔力を使った身体強化だって使えないはずだしね。
 とはいえ、この程度の氷の盾ではロック鳥さんの爪は防ぎきれない!
 ロック鳥さんも分かっているのか、氷の盾にのしかかるように下りてきた。

 でも、そんなのは、知ってた!

小さいコル兄ちゃん!』
 わたしは小さいコル兄ちゃんの毛から足を抜き、叫んだ!
 もっとも、わたしが叫ぶ前に、小さいコル兄ちゃんは駆けていた。

 空中をだ!

 小さいコル兄ちゃんのみが使える凄い技、”そら駆け”だ!
 足の先に魔力を集め、それを足場に空中を駆ける事が出来る。

 そして、わたしの氷の盾はその足に集めた魔力を散らさないために使用している!

 氷の盾に衝撃が走り、小さいコル兄ちゃんの背中から吹き飛ばされる。
 そして、背中から地面に叩き付けられた。

 でも――これぐら、これぐらい平気だぁ!

 衝撃によって体が裏返ったけど、両つま先で何とか踏ん張り空を見上げた。
 砕け舞う氷の盾越しに――わたしを置き去りにして駆けた小さいコル兄ちゃんが、あっという間にロック鳥さんの背後に回り、凶悪な牙を覗かせながら、その巨大な口を開けるのが見えた。

――

小さいコル兄ちゃんの”空駆け”、相変わらず凄いよね!』
 わたしが白いモクモクでお肉(三メートル級)を焼きながら言うと、小さいコル兄ちゃんは少し恥ずかしそうにする。
『そんな事無いよぉ~
 小さい妹が氷の盾を出してくれなきゃ、どうしようも無かったし』
 小さいコル兄ちゃんは謙遜するけど、やっぱり凄いと思う。

 小さいコル兄ちゃんの”そら駆け”はママですら出来ないと諦めた高等な魔法である。

 わたしも挑戦してみたけど、正直、その理屈すら理解できなかった。
 まして、当時は”そら駆け”どころか、足から白いモクモクすら出せなかったのだ。

 全く出来なかった。

 でも羨ましいなぁ。
 今は、一応、足から白いモクモクが出せるようになったのだ。
 もう一度、チャレンジしてみるのも悪くないかもしれない。
 そうすると、妖精ちゃんの町にも行きやすくなるしね。

 それにしても、この肉、美味しそうだ!

 辺りに漂う香りを嗅ぐだけで、お腹が鳴りそうになる。
 当然というか、このお肉は例のロック鳥さんの物だ。
 小さいコル兄ちゃんのたっての願いで、焼いてあげている。

 いやぁ、ここまで来るのに一苦労だった……。

 なんと言っても、ロック鳥さんは巨体だ。
 血抜きやら内臓除去やらするだけで、大仕事だった。
 わたしと小さいコル兄ちゃんがモクモクを駆使しつつ――さらに、籠を持ってきてくれた近衛騎士妖精の白雪しらゆきちゃんにも手伝って貰って、何とかかんとか終わらせた。

 ん?

 気配を感じ、視線を向けると白狼君達が恐る恐るといった感じに近寄ってくる。
 内臓を頂こうって事だと思うけど、小さいコル兄ちゃんがいるのに、なかなか、良い根性をしている。
小さいコル兄ちゃん、あの子達に内臓を上げて良い?』
『ん?』と小さいコル兄ちゃんが白狼君に視線を向けると、白狼君達はビクっ! と震えて固まってしまった。
 そんな彼らに興味が無いのか、小さいコル兄ちゃんは視線を戻し『小さい妹が良ければ、構わないよ。内臓は余り好きじゃないし』と答えた。
『これは食べて良いよ』
と内臓の山を指さしながら言って上げると、白狼君(リーダー)は嬉しそうに遠吠えをした。

 しかし、白狼君達……。

 先ほどティラノサウルス君を上げたばかりなのに、この山のような内臓をどうするつもりなんだろう?
 なにか、保存する方法でもあるのかな?
 ちょっと気になったけど、ただでさえあるじ判定を受けている上に、そんな深い部分まで知ろうとすると、取り返しの付かない所まで行きそうなので、聞くのは止めた。
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