Trains-winter 冬のむこう側

白鳥みすず

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第一章 ユキ

それはフールのはじまり

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―――――――――――――この世界で二度と会えなくなった君にこの物語を捧げる。




ねえ、キミは自分がいつまで生きられるか知っている?
目の前に大きな砂時計があって残りの日数と時間が表示されている。
静寂の中、さらさらと砂が落ちる音がする。
真っ白な空間に無機質な砂時計。
この砂が全部落ちきった時に全てが終わる。砂時計にヒビが入り、砕け散る。
他人事みたいにいっているけど、これは僕の話だ。
淡々と話せるのはその事実を昔から知っているから。
そんな砂時計を抱えてるのは僕だけじゃない。この学校に通う生徒全員だ。
学校の屋上は閉鎖されていた。長い頑丈な鎖で開きそうもない。
20歳まで生きられない。大人になる成長の過程で命を失っていく。大人になれない子供の最期の場所。
最後の思い出作り?勉強をしたって何の意味もない。
勉強を放棄して授業すら受けない生徒もいる。それでも怒られない。
当然だ、残り少ない時間を好きに過ごして何が悪い。
誰も咎めることはできない。
フールスクールと世間では呼ばれている。
ここに入ったらもう決定的だ。
保健室のベッドに腰掛け、グラウンドを眺める。
太陽の光で透けた淡い桜が舞っている。呆気なくひらひらと落ちていく。
あと何回見られるんだっけ。重たい瞼を瞬きし、ぼんやりと思った。
先生が僕に声をかけた気がする。
適当に相槌を打ち、聞き流す。

・・・何のために生まれてきたんだろう。

何十回も自分に問いかけた言葉。
希望も抱けない、いっそ知らない方が幸せに過ごせたかもしれない。
来もしない未来に夢を抱いて頑張ってみたり、笑ってみたり・・・。

・・・ifの世界なんてくだらないよ。
砂時計の前で僕が言葉を零す。現実で僕が声に出していたらそれは酷く乾いた声だったに違いない。
ここにいることに、意味なんてないんだ。
もしも、もしかしたら、なんて。
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