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第一章 ユキ
それは必然
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近くの学校のことは知っていた。
フールスクール。週末の学校。
寂れた学校で時々、子供の笑い声がする。
まだ、何も知らない子供たちだろう。
図書館への道のり、その学校の門の前を通ることがある。
その日、私はとても泣きそうな気持ちだった。足取りも重く、必死で目に溜まっていく雫が決壊しないように瞬きすらしないように耐えていた。
夕方だった。空が淡く薄紅色に染まっている時間帯。
濃い緑の門はところどころさびれている。いつからあるかは分からない。
その門の前でぼんやりと桜を眺める学生服の男の子がいた。
4月、桜がひらひらと舞う中で桜を見上げる彼はやけに儚く見えた。
体の線が細くて、顔はブルーアッシュのような長い前髪で隠れがち。だけど風が吹いた時に見えた
瞳がとても綺麗で。何を考えているんだろうと気になった。
彼の視線は桜を見ているようで何もその瞳に映していないようにも見えた。
幻想的で、思わず息を止めてしまうような空の中で舞う桜と物思いに沈む彼は私の瞼に鮮明に焼き付いた。
その日から私は彼のことばかり考えるようになった。
彼は本を片手に持っていたから、きっと本が好きなんだろうな、とか。
あの学校の生徒なのかな、とか彼のことが知りたくなった。
図書館にわざわざ足を運ぶのは珍しかった。
電子の貸し出しが主流でわざわざ本を借りにいくなんてことが少ない。
彼は、本を借りにきていた。手にとっているものは物語が多い。
こんなこっそり遠くから見ていて、私、変な人じゃないかな。
自然なきっかけ・・・ないかな。なんて考える。
何度も図書館に足を運びつつも良い方法がないかなと思考を巡らせる。
こうしていても彼と話すことはきっと叶わない。
眺めているだけでも心躍るような存在な彼だけど、どんな声をしているんだろう。
どんな表情で話してくれるんだろう。
日に日に彼への想いは募っていくばかりだった。
このことは誰にも言えなかった。
フールスクールの生徒とはそもそも関わること自体がいいとされていない。
未来がない人間と言われているからだ。
だけど、気になってしまったんだからしょうがないじゃない。
私は踏みとどまっていた自分についに言った。
・・・きっかけ、は作る。
私は本を積み上げるように歩いていたが、盛大に彼の前でこけて
本をぶちまけた。
フールスクール。週末の学校。
寂れた学校で時々、子供の笑い声がする。
まだ、何も知らない子供たちだろう。
図書館への道のり、その学校の門の前を通ることがある。
その日、私はとても泣きそうな気持ちだった。足取りも重く、必死で目に溜まっていく雫が決壊しないように瞬きすらしないように耐えていた。
夕方だった。空が淡く薄紅色に染まっている時間帯。
濃い緑の門はところどころさびれている。いつからあるかは分からない。
その門の前でぼんやりと桜を眺める学生服の男の子がいた。
4月、桜がひらひらと舞う中で桜を見上げる彼はやけに儚く見えた。
体の線が細くて、顔はブルーアッシュのような長い前髪で隠れがち。だけど風が吹いた時に見えた
瞳がとても綺麗で。何を考えているんだろうと気になった。
彼の視線は桜を見ているようで何もその瞳に映していないようにも見えた。
幻想的で、思わず息を止めてしまうような空の中で舞う桜と物思いに沈む彼は私の瞼に鮮明に焼き付いた。
その日から私は彼のことばかり考えるようになった。
彼は本を片手に持っていたから、きっと本が好きなんだろうな、とか。
あの学校の生徒なのかな、とか彼のことが知りたくなった。
図書館にわざわざ足を運ぶのは珍しかった。
電子の貸し出しが主流でわざわざ本を借りにいくなんてことが少ない。
彼は、本を借りにきていた。手にとっているものは物語が多い。
こんなこっそり遠くから見ていて、私、変な人じゃないかな。
自然なきっかけ・・・ないかな。なんて考える。
何度も図書館に足を運びつつも良い方法がないかなと思考を巡らせる。
こうしていても彼と話すことはきっと叶わない。
眺めているだけでも心躍るような存在な彼だけど、どんな声をしているんだろう。
どんな表情で話してくれるんだろう。
日に日に彼への想いは募っていくばかりだった。
このことは誰にも言えなかった。
フールスクールの生徒とはそもそも関わること自体がいいとされていない。
未来がない人間と言われているからだ。
だけど、気になってしまったんだからしょうがないじゃない。
私は踏みとどまっていた自分についに言った。
・・・きっかけ、は作る。
私は本を積み上げるように歩いていたが、盛大に彼の前でこけて
本をぶちまけた。
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