12 / 12
第二章 ハル
それは君との始まり
しおりを挟む______本気で生きたくなった。君の隣で。
一言で言えば暇だった。
砂時計の前で寝転んで、時間を持て余してるようなそんな人間。
時間が過ぎていくことも焦りもせず、ただじっと待つだけ。
なんだ、今日はこれだけしか落ちなかったのか、なんて。
この退屈で気怠い日々を、むしろ終わることを望んでいるのかもしれないね。
ああ、もう暗い。この暗闇の中でただ落ちていく砂を見つめてる。
大きく伸びをした。もう保健室の常連かもしれない。
白いベッドであくびをする。
最初は俺を追い出していた先生も根負けしたのか何もしてこなくなった。
談笑する仲にまで発展した。おかげで快適、気楽、楽しいの三拍子だ。
黒髪も少し飽きてきたなあ、と思う。
目立たないように渡されてつけてきたカラーコンタクトもそろそろ飽き飽きしていた。
保健室で寝ていると時々、物静かそうな同級生とすれ違った。
確か・・・澤木貴之だっけ。いつも何処か遠くを見ているような目は俺の興味をひいた。
いつか話しかけてみようと思う。
俺は数ヶ月経つと髪をグレーに染め、制服を着崩した。つけていたカラーコンタクトもとった。
元の目は青色だ。思いっきり遊んでやろうと思った。
暇なら楽しいことを自分から積極的に探しにいくしかない。
暇だと時間を持て余すのはもう嫌だった。
いつものようにさぼろうと保健室に行くと苦しそうな声が扉の向こうから聞こえた。
俺は先生、いないのー?と声をかけながら中に入った。
熱で澤木が苦しそうにしていた。
「どーうしたの、また熱?澤木くん」
「またって・・・どうして知ってる?」
彼の目は熱で潤んでいたが、俺の方をじっと見つめていた。
「いやいや、だって常連でしょ。せんせーも言ってたよ」
俺は笑ってベッドの端に腰掛けた。
あらあら、俺のこと警戒してるなとその探るような視線からはっきりと伝わってきた。
髪染めたのは最近だけどさ、黒髪の時からよくすれ違ってたじゃん俺ら。
もしかして他人に興味ないタイプ?クラスの人の顔と名前一致してる?
「ここ、先生も優しいし静かで落ち着くし。澤木くんも気持ちいー方が好きでしょ?」
俺が笑みを浮かべると彼は目を逸らした。
熱のせいで額に汗をかき、前髪が張り付いている。
辛そうだね、まあ俺にはどうにもできないけど。
棚からシップを出すと彼の枕元に置く。
「シップ、あげるよ。じゃあね、澤木君」
ひらひらと手を振ると保健室を後にする。
扉を閉めると向こうからため息と少しすると寝息が聞こえてきた。
そっと扉を開ける。彼は案の定、冷えピタは貼らずに寝入っていた。
「しょうがないなー澤木くんは」
俺は小声で言うと彼の前髪をかき分け、冷えピタを貼り付けた。
よしっと言って離れようとすると彼の手が俺の腕を掴んだ。
目が点になる、とはこのことかもしれないね。
まさか起きてた?狸寝入り?
本当に柄にもなく動揺した。
「・・・せんせい、かと思った」
俺の腕を掴んだまま薄く目を開けて澤木は呟くように俺に言った。
焦点があまり合っていない。おそらく偶然起きてしまったのだろう。
「残念だったね、先生じゃなくて」
動揺をごまかすようにおちゃらけて言うと澤木は潤んだ目のまま
「・・・ありがとう、浅野」
と言った。
その顔ははじめて見たはずなのに何処か懐かしく儚く思えた。気のせいかもしれない。澤木が少しだけ笑ったように見えた。
それから保健室に行くとたまに澤木とすれ違う日が増えた。
意外なことに保健室で会うと澤木は自分から話しかけてきた。
「・・・おまえも体調悪いのか?」
「いつも通り、元気いっぱいかな、俺は。貴之くんこそ、また寝込みに行くの?」
へらりとして笑って返す。
おかしいな、俺が黒髪の時は他人に興味ないタイプの人間に見えたけど。
保健室の一件以来、俺には普通に声掛けてくるんだよなあ。
あれで心の距離が縮まったってやつなのかなあ。たいしたことしてないけど。
・・・いや、全然いいんだけどね。
それまで教室で話すようなこともあまりなかったからさ。
もっとこう・・・クールな感じだと思ってたんだけど。
拍子抜けしながらもさぼりがちだった授業の時間を使って彼の教室を
見に行くと真面目に授業を受けているようだった。
丁寧にノートに書き、手をあげ、質問までしている。
珍しい。ここの生徒なんて真剣に授業を受ける人間なんて一握りだ。
あそこまで熱心に受けれるものか?
ふーん・・・澤木くんは根っからの真面目人間なわけだ。それとも相当の馬鹿か、どちらかだ。
こんなことしたって無駄なのになあと思いながらも彼の姿を眺める。
・・・どうして、こんなに澤木くんのことを気にしてるんだよ、俺は。
あの時の顔がやけに記憶に残っていて頭から離れないんだよ。
ほんと俺の方がどうかしてる。
自分の髪をわしゃわしゃとして呻く。
ま、とりあえず俺も貴之くんに興味あるし、適当に関わっていこうかな。
他人と関わったって仕方がない、それはフールの生徒の大半が思っていることだろう。
でも、俺は他人と関わることで楽しいに記憶が塗り替えられるならそれでいいと思うんだよね。外部の人間には関わってもいいことないだろうけど。
ここにいる生徒なら立場は同じだ。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
光のもとで2
葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、
新たな気持ちで新学期を迎える。
好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。
少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。
それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。
この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。
何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい――
(10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる