変態店長とバイトその1

ITSUKI

文字の大きさ
10 / 23

CASE 8

しおりを挟む

「その事ある度にピッチピチの服を弾き飛ばすの、やめてくれなぁ~い?」

「ココココココッ。我の『タンクトップ弾き』は、我が肉体美を見せつけるためであーる。この技は譲れないのであーる。ムンッ」

またもパーンっと小気味のいい破裂音が聞こえてくる。

「大佐。換えのタンクトップ、お持ちいたしました」

と別の声が聞こえてくるので服を弾き飛ばすたびに着替えているのだろう。
迷惑極まりないな。

「それよりあんた、何しに来たのっ?まさか戦争しに来たわけじゃあないでしょうねぇ?」

休戦はしているものの、我が王国と帝国とは過去に幾度となく領土争いで戦ってきた。
前触れなしのこの来訪、下手をすれば戦争の引き金になりかねない。

「そんな予定はないのであーる。諍いは厳禁と将軍に厳命されているのであーる、ムンッ」

―――パーン

「あぁ~あ、分かったわ。分かったからそんな汚らわしいモノ、あたしのお店にまき散らさないで頂戴っ!さっさと用件言いなさいよっ。………それとも消し炭にしてやろうかぁ?あぁん?」

今まで聞いたこともない低い声。
今までバリトンボイスのいいオネエ言葉位の感覚だったのでめっちゃ怖い。
てか、店長もキれる事あるんだ。

「消し炭は嫌なのであーる。速やかに用件を伝えるのであーる。コホン、『この度、我が帝国では領土拡大を図るべく北方に位置する常勝鹿島連山を開拓する事となった。ついては軍備増強のため、貴殿の商店にある医療品をあるだけ販売していただきたい』とのことであーる。コココココココッ」

「なぁに?またあんたたち龍の巣攻めるのぉ~、馬っ鹿じゃない?」

「上層部の決定なのであーる。吾輩は一人でも多くの敵を斃すだけなのであーる、ムンッ」

「きゃぁ~~~、だからその汚らわしい布をまき散らさないでって言ってるでしょ~!作るから、作るからぁ~。……さっさと帰れって言ってんだろうがゴルアァァァァァァ」

「言質はとったのであーる。総員、被害をこうむる前に退散するのであーる!」

「「「「「サー、イエッサー」」」」」

「では5千個程、中級以上の物を今週中に頼むのであーる。よろしく頼んだのであーる」

「ちょ、多――」

―――カラカラカラカラカラカラカラカラ……

入り口につけられた小さなベルが悲鳴を上げる。
店長が呼び止める前に嵐は去ったようだ。

「―――はぁ~。フラットちぁん、ゴメンだけどぉ……今すぐ泊まり込みの準備をおねがぁ~い」

―――訂正、俺にとっての嵐はこれから吹き荒れる様であーる。
……ガクッ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...