変態店長とバイトその1

ITSUKI

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CASE 9

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正直に言うと、俺はあまりまじめでもないし手先が器用でもないし繊細さが問われる単純作業も苦手だ。
だが、環境次第で人は自分の限界を突破できるって事を思い知らされた。

1聞いて10できるようにならないと目の前の店長が懇切丁寧に密着して教えに来るのだ。
背中から二人羽織、耳にかかる温かい吐息。
その地獄から脱出するために、体中の神経を集中させこの短時間でここまで出来るようになったのだ。
見よ、このクオリティを!

「さっすがフラットちゃんだわぁ~、こんな短時間でやり方を覚えてこのクオリティ。こんな天才初めてよぉ~!ハグしていい?っていうかハグさせて。えいっ(はぁと)」

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA」

「――入りまーす。ピーポさんの畑からもらえるだけ持ってきましたよー。これ以上は枯れちゃうから駄目だそうです。って、フラットさん白目剥いてますけど何やってるんですか?ってかフラットさんこれ、大丈夫なんです?」

「ユージュぅ~、ありがとぉ~。貴方もお礼にハグしてア・ゲ・ル☆」

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」


―――地下作業場

店長の家の地下深くに存在するこの施設、ここは店長が採取してきた素材を薬や各種ポーションに調合するための施設である。

普段であれば店長が一人で営業時間の途中や空いた時間を使って調剤するのだが、今回隣国よりわざわざ訪れたヤーマン大佐の依頼で大量にポーションを用意しなければならなくなったのだ。

とても危険な現場であり、三人いた作業員は残すところ僅か一名。
復活しては抱きつかれ気を失う俺達を横に、店長は結局一人で夜を徹してポーション作りにいそしむのだった。





「――――ット、フラット?大丈夫?」

「抱きつかないでくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

「ちょ、どうしたのよ?―――おるぁ!」

「――ん、あれっ?サラ姉さん?」

「あぁ良かった、意識が戻ったみたいね。おはよう、朝ごはんできてるわよ、さっさと来なさい」

「あれっ???確か先刻さっきまで………まぁいいか」

記憶にないって事は大したことじゃなかったんだろう。
それより、頭に鈍い痛みを覚え手でさすりながらベッドから起き上がる。
って、なんでこんなところにフライパンが?
しゃーない、持って行ってやるか。

「フラットーーー!」

「はいはーい、直ぐ行きまーす!」

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