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CASE 11
しおりを挟む「なぁ……なぁ……」
「――――――店長?」
「てへっ☆」
「いやいやいやいや、かわいこぶってもだめですよ。なんですかこいつ、明らかに魔物じゃないですか!」
なぁなぁ鳴いてつぶらな瞳でこっちを見つめるウサギ。
しかし、その頭部には鋭利な角を有し、額には魔物特有の淡く光る魔石が埋め込まれている。
カウンターに肘をつき物憂げに空を眺めながらふぅーっと長く息をつく店長。
「―――話せば長くなるのよねぇ~。どこから話そうかしら」
「あ、そういうのはいいんで結論だけお願いします」
バッサリ切り捨てる。
秘儀『上目遣い』を使ってくるが気持ち悪いだけで効果はゼロだ。
「フラットちゃん、この子、飼って☆」
「―――というわけで、この子を飼うことになった」
「どういうわけよ、わけがわからないわよ!」
「なぁーーーっ!」
撫でられてうれしそうな一角ウサギ。
確かに可愛いが、これだけでサラ姉さんを納得させることはできないだろう。
そこで、もうひとつ秘策を用意してある。
「仕方ない。……先生、出番ですよ。ってか、自分で納得させてください」
「あぁ、いいだろう。タイシジ=サン、只今参上したっ」
「きゃっ。って、えっ?なんでタイシジ様がここに?」
英雄扱いのせいなのか女性と会うときはイケメンになる店長。
かく言う俺も魔法商店で働き始めるまでは変態だったなんて知らなかったんだよ!
「生存競争に敗れた小さな魔物。しかし、その命は尊い。そこで通りかかった俺はこの子を助けたのだが、日々危険な生物と戦う俺のそばではこの子も長くは生きられない。だから、俺の代わりにこの子を育てって欲しいんだ。……お願い、出来るかな?」
「えっ。あ、はい」
「ありがとう。よろしく頼むよ」
さわやかな笑顔を見せ颯爽と去っていく店長。
勝者、タイシジ=サン。1ROUND KO勝ちだ。
「姉さん、分かった?」
「―――あぁ、うん。これは………仕方ないわね」
というわけで、我が家に家族が1匹増える事になった。
因みに俺の場合、クネクネしながら涙目で迫ってくるので断り切れなかったんだけどね。
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