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『真幸商会』異世界出店編
店に戻って その1
しおりを挟む店に戻る。
帰路、デライトがなにか聞きたそうにしていたがこちらから聞いてやることはしなかった。
ギルド内ではカードのことだけしか話してなかったので、『ろくでもなことだ』とだけは断言できる。
「あの」
とか
「えっと」
とか繰り返していた。
いたたまれないのでそっと手をつないでやる。
小さく
「……ぁ」
と声が聞こえたがその後静かに引っ張られてくれた。
「いらっしゃいま――――あーっ、ずるいっ」
「えっ、なになに?うーわっ、店長手ぇ早っ。もしかして私たちも狙われてる!?」
かしまし娘たちのせいで帰宅早々注目を浴びる。
ニヤニヤ笑う人たちならともかく指笛やおめでとーっとはやし立てる人達もいたせいで、デライトは早々奥の部屋に逃げて行った。
「ミスティ・ラッセル。お前たち今日の分ただ働きな」
「えーーーー」
「お・う・暴。お・う・暴!」
二人してブーイング、お客さんたちに笑いが広がる。
「それが嫌なら働いてくれ。そこらでヤジ飛ばす暇人たちを追い出す作業が残ってるぞ」
今度は客から笑い声とブーイングが起こる。
お品書きにアルコールがないのと客層が良かったのが幸いした。
謝罪の意味合いも込めてラッセルに最後に一杯サービスで周ってもらい、特に問題もなく店じまいをした。
スマホで確認すると15時を回ったところ。
電気が無く夜の早いこの世界ではそこそこいい時間になるのだろう。
軽く掃除を済ませる。
その間、デライトには軽く腹に入れられるものを適当にと買い出しを頼んでいる。
昼の一件もあり露骨に嫌そうな顔をされたが、人見知りを克服するための一環だと伝え、行ってもらった。
ミスティからも
「いい案じゃないですか!流石ハヤトさん。ミスティ、がんばろう!」
と後押しをもらえたのが勝因かな。
逆にミスティが一緒に行こうとしてたのを引きとめるのが大変だったけどね。
洗いものに拭き掃除と終わらせ、デライトが戻ってくるのを待つ。
そろそろ探しに行った方がよくないかと話し始めたその時、
「た、……ただ今。………戻り…ましたぁ」
息も絶え絶えにようやく帰ってきて一安心。
一息ついてもらい、その間テーブルを繋げデライトの買ってきたものを並べる。
商会より持ち込んだジュースで乾杯し、アットホームな環境を作った上でミーティングを行う。
「お疲れさまでしたっ」
「お疲れ様です、店長」
「お疲れさまでしたー」
「ホント……疲れた」
三者三様思い思いの言葉であいさつする。
「じゃあ、ミスティ。休憩所の収支報告をお願いします」
「はいっ。えーっと、客数が41人の8,200ジル。ドリンク類の追加が208杯、閉店前の11杯サービスを差し引いて197杯の5,910ギル。合計14,110ジル。私たちの昼食で38ジル使ったので差引収支14,072ジルです」
一日で旧金貨3枚近く稼いだことになる。
「ミスティ、ボトルが売れたのが抜けてるわよ」
「あ、ごめんなさい。ハヤトさんがボトルごとで旧金貨1枚って言われてたのが1つ売れました。合わせて19,072ジルです」
一日で旧金貨4枚近く稼いだことになった。
てゆっか売れちゃったんだ。
「デライト、報告をお願い」
「うん。商業ギルドとは……22,000ジル。あんな真っ白の砂糖……初めて見た」
「ミスティ、(給料は)3日で12枚だったよね?」
「はい、その約束でおふた方には来ていただきました」
銀貨銅貨の袋から銀貨を10枚ずつ3人に渡す。
「うちは毎週昨日と今日の2日間だけの営業になります。2日でこの金額だと釣り合うかな?」
「い、いやいや。ハヤトさん、仕事内容見てないからだと思うのですが、ぶっちゃけ私たち大した仕事してませんよ?この程度の時間と作業で銀貨10枚は破格すぎますよ!?これくらいの内容ならその半分でも十分すぎる額です」
ラッセルも同意だとウンウン頷きデライトは口に手を当てそーなのかーと違う意味で頷いていた。
「店長―。確かに貰う側としてはうれしいんだけどさ、うちらに還元しすぎて店潰されたら元も子もないんだよね。資産を十分に貯めてさ、店舗を増やしてうちらを責任者にして、それからうちらに贅沢させてもくれてもいいんだよ」
まさかの貰う側から猛反発。
自分だったらラッキーくらいで………いや、貰わないかも。
カウンターに来るお客さんとしゃべって、時たま注文がきたらコップに注いで渡すだけ。
時給換算すると1時間休憩を除いて5時間の日当日本円換算で5,000円(1,000円/h)。
この世界の価値に当てはめたら他のバイトが自給400円くらいだから普通の2.5倍位か。
うん、躊躇してもおかしくないかもしれん。
裏があると思われても心外だ。
よし。
それなら
「いや、受け取ってもらうよ。その代わりこの店をラッセルを中心に任せるからね」
「「「えっ!?」」」
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