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密貿易開始編
天災の天災による天才的な結果 その5
しおりを挟む「いらっしゃいま………店長、お帰りなさい。って早くないですか!?」
ラッセルが出迎えてくれる。
最近の売り上げからわかる通り、まだお客さんは一人もいない。
客が入ってくるまでは店番一人を残して庭や花壇をちょこちょこ手入れしてるらしい。
もう、大分見栄えがしてきているがどれだけ暇を持て余しているのかあまり想像したくない。
「あ、ごめんなさい。こちらのお席へどうぞー」
「ごめん、ラッセル。カイナさんたちはお客さんじゃないんだ。ギルドまで運ぶ荷物持ち兼護ぇ……痛ッつぁ」
「ハヤトさん、すみません。荷運びについては口に出さないようにお願いします。冒険者の方にはよくあることですが、各々のランクとしてのプライドがある様で………。護衛は良くても本来ならFランクでもできる荷運びなどやってられないのだとか」
慌ててガルフコーストさんがやってきて小声で注意してくる。
というか、注意事項は先に教えておいてほしかった。
「いたたた、カイナさん済まない。まだこの国に来たばかりで冒険者っていうのに疎くてね」
「―――あぁ、そうなのか。それは申し訳ないことをした」
素直に謝ってくれたし根は悪い子じゃないのかもしれない。
まぁ、仕返しはするけどね。
「ガルフコーストさん、お店の方がまだ空いているのでこちらまで持ってきますね」
返事をもらって奥の小部屋に積み込んでおいた例のブツをカートに押して持ってくる。
その数12ケース×2往復で24ケースの240kg。
当初提供するつもりだった量の倍プッシュ。
するすると動くカートにも驚かれ値段を聞かれたが、真幸商会の備品なので売るわけにもいかず法外な値段を口にしてやると押し黙った。
「カイナさん。こちら、よろしいでしょうか」
待たせている間せっかくなのでと奢りで出したジュースをぐびぐびと飲んでいた翼獅子の尾からカイナさんを呼ぶ。
報酬の増額か商品の確認か、選んだのは商品の確認だった。
「あんたにゃ悪いけど、翼獅子の尾は命あっての商売だからな。そりゃ、報酬は惜しいけどさ。小金欲しさに危険なところに飛び込んでちゃあ、うちらみたいな女ばかしのパーティーは喰いものにされちまうんでね」
とは彼女の言。
というわけで運んでもらう商品の中身を確認してもらうのだ。
「なんだこりゃ。木の色や匂いに似ちゃいるが、軽いし弾力があるし妙にさらさらした質感だし」
あぁ、そういえば段ボールもシルイットには無いのか。
「これは紙でできた箱ですよ、三層に紙を張り合わせて頑丈にしているんです。軽しい頑丈だし使い終わったら畳めるしで、私たちの国じゃ荷造りするときはこの箱を使うのが一般的なんです」
と丁寧に説明したら隣にいたガルフコーストさんも含めて物凄く驚かれた。
紙は存在しているものの手間がかかることからかなり高価な物なのだとか。
製造工程も和紙を作る方法に似ており、腕の悪い職人の手によるものだと厚みが均一でなかったり異物が混入していたりと品質にばらつきがあるらしい。
そんな紙の用途は、羊皮紙に比べかさばらないため長期保存しないといけない資料の記録や魔法陣の巻物位にしか使われないとのこと。
話を聞いて疑問に思ったが、巻物をコピーしたらコピーしたコピー紙からも魔法とやらが発動するのだろうか。
機会があったら試してみたいものだ。
「おい、ハヤト?どうしたんだ?」
「あぁ、ゴメ……すみません。では、約束通りこちらを確認してもらってよろしいですかカイナさん」
ガムテープの封を開け中身を確認してもらう。
「うおっ、本当にコショウじゃねーか。こりゃ凄ぇな」
「相変わらずきめ細かくて素晴らしい品ですね」
二人がそれぞれの反応を見せてくれる。
「1箱にこの袋が10袋、入っています。ガルフコーストさんにはこの台車をお貸ししますがとても高価な物なので1台しかないんですよねー」
意味ありげにカイナさんを流し見る。
ガルフコーストさんがカートに乗せて12箱、残るは翼獅子の尾の4人と一緒についてきたギルド職員2人。
「…………おいおい、まさか」
「店の3人を動かすわけにはいきませんし、私も一度別件で動いてとある人を連れてこないといけないんですよねー」
「まてまて、あたしら女だぞ。あっ、そうだ。それに護衛はどうするんだ?これだけ高価なモンなんだきちんと護衛してなきゃ危ねーんじゃねーか?」
「両方頑張ってくださいっ!ウチがコショウを取り扱っている事を知っているのはカイナさんの他数名だけですし、立場が弱いものが生き残るにはなるだけ危険を回避しなきゃいけないのであまり大っぴらにしたくないのです。
報酬より安全を優先するカイナさんたちなら分かっていただけますよねっ!カイナさんたちだけが頼りなんです」
「……お、おぅ」
もうひと押しだ。
「お手数おかけする代わりと言っては何ですが、些少ながら貴女方に既に私も報酬をお支払いしてあります。カイナさんたちに提供したあの飲み物、実は真っ白な砂糖をふんだんに使った(この世界では)大変高価なものになります」
「……嘘だろ。いや、待て。良く見るとこの店の中、見た事ないものばっかりじゃねーか?」
「店内で飲まれる分に関しては利益度外視で提供しておりますが、それでもそれなりに値の張るものかと」
因みに提供したのは1.5Lを4本。
ものの数分の間に2本目も半分以上飲み干されている。
「あーーーっ、もうっ。ちくしょうっ」
ふたの開いたペットボトルを掴み盛大にラッパ飲み、仲間たちがびっくりする中一気に飲み干し
「プッハァーーーー」
と盛大に息をつく。
あらやだ、男らしい。
「わーったよ。あたし等の負けだ。運んでやるよ。ったく」
というわけで、翼獅子の尾の4人組も1人頭2箱ずつ商業ギルドまで荷運びをしてもらうこととなった。
仕返ししてやったりだ。
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