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19話、土地もイカれている
しおりを挟む「おい、芽がでてるぞ」
ドーグが言う。
何の話だ、と思ってよく聞くと、なんと昨日植えた野菜と穀物が、今朝もう芽吹いたという。
「……なんで?」
「ま、土地柄じゃろうな」
そんな、そういう事もあるよな、みたいな言い方されても……だがまあ、はやく育つならそれはいい事なので、ひとまずヨシとした。
どうやら魔力が豊富な土地に、さらにマジックトレントの能力、スラちゃんの特殊な体液を組み合わせる事で、とてつもない成長速度になったようだ。
しかもこの調子でいけばものすごく大きく育つ予定らしい。いいな、ものすごくデカい野菜。美味しかったらいいが。楽しみだ。
これなら、仮にまた急な人口増加があっても、なんとかなるだろう。
16日目。
今日はカイちゃんに乗って、元大魔王様の城に向かう。
地下にいた魔物で、これは欲しいなという子が居たのだ。
カイちゃんがしっかり覚えててくれたおかげで迷わず到着。地下へ向かう。
……地下の柵の鍵が置いてあるところに紙が置いてあった。
『大事に飼ってくれよ』
…………バレている。それはそうか。
「最後までちゃんと面倒見て、幸せに過ごさせますよー、と」
改めて、地下通路を歩く。
左右に檻が配置されている。
中には様々な、本当に強いのだろう魔物が一体ずつ繋がれている。
どうやら繋いでいる鎖などにもなにかしらの効果があるらしく、明らかに実体のないはずの魔物まで繋がれていた。
目当ての魔物のところまで歩く。
「さてさて、いますかねー。……いたいた。はいテイム!今日からよろしくね?」
躊躇いなくテイム。人のものを盗むのに抵抗がないのだろうか。ないね。
「多分そうだと思ってテイムしたけど、ちゃんとあってるかな?さて、魔物情報を……」
ケルベロス。
地獄の番犬と言われる魔物。
体高2m、体長3mほど。尻尾は除く。
様々な物語に出てくるが、目の前にいるのはまさにでっかい狼。
巨大な爪、鋭い牙、棘の生えた尻尾、そしてみっつの口から吐き出される地獄の業火をもって獲物を屠ると言われている。
そしてなんと背中には蝙蝠のような羽が生えている。少しだけ飛べるようだ。すごい。
「やっぱかわいいねぇ。君は今日からケルちゃんだ」
ケルちゃんも飛べるので、カイちゃんと並んで帰宅。
60人のドワーフに囲まれたケルちゃんは本気で困惑していた。地獄でもこんな人数に目キラキラされた事ないだろうよ。
ドワーフ曰く抜け毛は火属性の魔道具の触媒としてとても良いらしいので、一本でも買い取ってくれるらしい。この子たちが生きてるだけで私は大儲けだよほんとに。
午前で帰ってこれたので、軽く食事をとってから我が町を見て回る。まだ街の規模ではないが。
簡易プレハブのような建物が15個ほど並んでいる。今のところは各建物に4人ずつくらいが住んでいる。
ちゃんとした家屋の建築も少しずつはじまっている。
ドーグと相談し、都市計画を立てつつある。
ひとまず、私の家を起点とし、そこから森じゃない側に90°の放射状に街を広げていくことになった。
森に近い側に、工房や作業所などの施設が並ぶ。大きな建物が多いので、いざというときの壁になってくれるはずだ。
私の家の裏は、魔物たちが思い思いに住んでいるため、開発は不可能に近い。まあそのうち、ある程度の倉庫のような建物をたてて雨よけにしてあげたいが。そういえば今のところ雨は降ってないな。
とまあ、いまのところは小さな村くらいのサイズだが、拡張性は大きい。そのうち大都市にしてやるからな。
その前に住民の確保と貨幣獲得手段の確立か。売るモノはあっても売る対象がまだ無い。
そういえば、ドーグが、もうじき商人が来てくれるはずって言ってたな。
イカれた人らしいので不安もあるが、楽しみだ。
人が暮らすには、家と、飯と、金がいる。
いい取引ができればいいのだが。
ケルちゃんの背中に埋もれながら、その日は就寝した。
これがしたかったんだ。
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