紬ぐ想いの場

翠華

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第一章(後半) まだ知らない光

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帰りの電車は、朝よりもゆっくりだった。
 夕暮れの光がガラスに映り、景色が少しずつ溶けていく。
 昼間の賑やかさが嘘みたいに、
 車内は小さな振動とブレーキの音だけを残していた。

 ――「うん。好きになるのに理由なんてなくて、
 でも、気づいたらその人のことを考えてる――みたいな」

 瑠衣の声が、静かに頭の中で揺れる。
 その言葉は、どこかあたたかくて、
 けれど自分にはまだ遠いもののように感じた。

 “理由もなく考えてしまう人”。
 そんな存在が、自分の中にも現れる日が来るのだろうか。

 恋をしてみたいと思う。
 けれど、自分がその輪の中に入れる気はしない。
 鏡を見るたび、心のどこかでブレーキをかけてしまう。
 どうせ、きっと――。
 そうやって、知らないうちに閉じてきたのかもしれない。

 電車が次の駅で止まり、ドアが開く。
 夜の風が少し入り込んで、髪を揺らした。
 私は窓に映る自分の姿を見つめ、
 小さく微笑もうとして、やめた。
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