紬ぐ想いの場

翠華

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第二章(後半) 日常と記憶の断片

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大学を出るころには、陽が傾きかけていた。
 夕方の風が、通りの花壇の匂いを運んでくる。
 瑠衣はコンビニのカフェラテを片手に、満足そうに笑った。

 「ね?見に行って正解だったでしょ」
 「……まぁ、そうかもね」
 紬も同じカフェラテのストローを指でくるくる回しながら答えた。

 「でもさ、あの人やっぱりすごかったよね。オーラが違うっていうか」
 「うん……なんか、周りと空気が違った」
 言葉にしてみて、紬は自分でも驚いた。
 本当にそう感じたから。
 ただ“かっこいい”というだけじゃない、
 もっと奥に何かあるような――そんな印象。

 「惚れちゃった?」
 瑠衣が冗談っぽく笑う。
 「やめてよ」
 紬は苦笑いしながら前を向いた。

 道の向こうに、夕焼けがにじんでいる。
 少し間をおいて、ふと思いついたように尋ねた。
 「……瑠衣はどうなの?」

 「え?」
 「好きな人とか、気になる人」
 瑠衣は少しだけ目を丸くして、
 それから照れくさそうに笑った。

 「んー……どうだろ。いないって言ったら嘘になるかも」

 「えっ」
 紬は思わず立ち止まり、カフェラテを持つ手が止まった。
 「まさか……さっきの、イケメン?」

 「ふふっ、どうかな」
 瑠衣は前を向いたまま笑って、
 髪の先を指で軽く弾いた。
 その横顔が、夕焼けの中で少しだけ遠く見えた。

紬は追いつくように歩き出しながら、
 胸の奥で小さく鳴る音を聞いていた。
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