不器用な大富豪社長は、闇オクで買った花嫁を寵愛する

獅月@体調不良

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14 不器用には離れる心

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散歩を始めたきっかけで、度々実那斗さんの家に行く事が増えた。

行くと言っても、散歩の為に起す時と、帰宅時間頃に玄関で待つ時ぐらい。

後は、彼に食事を誘われたら身なりを整えて、
屋上なり、彼の部屋なりに行くのだけど…。

其れでも、一緒にいる時間は徐々に増えて来たから、犬の姿の時に触れられても嫌だとは思わなくなってきた。

最初の散歩をして、丁度十二日目。

体力が付き始めた実那斗さんは、前より疲れ切った様子も無く早朝の散歩を終え、いつものように先に私の階で下りようとすると、珍しく彼も下りた。

「 ん? 」

何故?と思い、犬の姿で振り返ると、彼は私を見下げては告げる。

「 今日、休みなんだ。だから…ラフな格好いいで良いから、着替えたら俺の自宅に来い 」
 
「 分かりました… 」

「 じゃ、また後でな 」

其れだけ言うと、彼はエレベーターの扉を開けて中に入り、上の階へと向かった。

「 ラフな格好いいでいいもんなんですか? 」

「 えぇ、麗菜様とご一緒に、ゆっくりした休日を過ごされたいのでしょう。偶には宜しいのでは? 」

「 私が居て…気が休めるとは思いませんが…分かりました 」

私を買った主人がそれを望むなら、良いのだろう。

よく分からないかど、取り敢えず自宅に戻り、汗を流す為にシャワーを浴びて、朝食を食べ終わってから、ラフな格好に着替えた。

白のルームワンピースを着て、食事をする時よりメイクも薄くて、ほぼノーメイクと何ら変わらず、こんなので本当にいいのか不安だけど、
彼の玄関前で、湊さんは微笑む。

「 大丈夫ですよ。今日は一緒に居る時間を楽しんでくださいね。では、また後の程…お伺い致します 」

「 あ、はい…… 」

一緒に入って来ないんだ。

さっさとエレベーターに戻ってしまった湊さんに、一人になることが無いから心細くなっていると、玄関は開いた。

「 来たか?入るといい 」

「 あ、はい…( わっ…ほんと、ラフ… )」

彼もまた、黒のルーズ半袖シャツとカジュアルパンツを着ていて、余りにも夜に見る仕事着のイメージとは違うから、少しだけ驚く。

改めて招かれて入るのは緊張して、ちょっと戸惑いながら彼の後ろを着いていく。

「 外出も良いと思ったんだが、それではゆっくり話せないだろ。だから、今日は部屋にした 」

「 なるほど… 」

見慣れたはずのリビングですら、今はなんとなく初見に思える。

言葉をまともに聞き取れないまま、相槌程度に返事をしていると、彼はTVを付けサブスクを使い検索をかけ始めた。

「 本当は所有しているクルーザーやジェット機でもいいだろうが。それは君が慣れないと思ってな…。今日は一緒に、映画鑑賞でもしようと考えてる。観たいものはあるか?好きなジャンルとか 」

「( 流石大富豪…さらっと、ジェット機所有しているとか言った… )…えっと、長編アニメとか好きです。後は洋画のファンタジーやアクション映画も好きです 」

彼が、貴重な休みの日を使ってまで、私の好みの映画を観ようとしてくれるなら、それにはちゃんと答えようと思った。

ざっくりとだけど、好きな好みを伝えるとアニメなんて一切観て無さそうな彼は、早々に洋画に決める。

「 なら、これはどうだ?元々アニメ作品が、ハリウッドで実写化されたものだ 」
 
「 いいですね!それにしましょう 」

「 なら、最初はこれだな。飲み物と菓子は準備している。ゆっくり観よう 」

「 はい!ありがとうございます」

ソファの前にあるローテーブルには、如何にも映画鑑賞用に必須な飲み物とお菓子が沢山あって、こう言うところは庶民向けなんだなって思うけど、きっと私の為に湊さん達に聞いて準備したんだろうって安易に想像がつく。

「 ……ほら 」

「 え、あ、はい…失礼します 」

ぽけっと突っ立てしまった私に、先にソファに座った彼は、右側を招いてくる事にハッとして、恐る恐る隣へと腰を下ろす。

彼は気にせず、私の手元にガラスコップを寄せ、瓶に手を掛ける。

「 なんの飲み物がいい?林檎、葡萄、オレンジ、クランベリー、お茶…後は…。 」

「( 高級感のある100%果汁ジュースだ… )えっと…林檎がいいです 」

「 嗚呼 」

どこから仕入れたのか分からないけど、ジュースが瓶に入ってる事や高級感のあるラベルなどを見て、その辺のスーパーで見たことないものだと思った。

当たり前に、彼は無駄に格好いい栓抜きで蓋を開け、私のガラスコップに注ぐと自らの方にも注ぎ入れる。

「 菓子も飲み物も適当に食っていい。此処のが無くなっても、まだ予備はあるからな 」

「 分かりました…… 」

「 開けておくか 」

私が勝手に開けないことを察した彼は、綺麗な柄のクッキー缶とチョコの入ったを開ける。

中は、バレンタインとかで見るような、一つ一つの柄や形の違うお菓子で、市販のお菓子とはレベルが違った。

「( 一缶数千円以上のお菓子を…摘みながら映画鑑賞って…。お金持ちの感覚わからないな… )」

もっとこう、ポテチをパーティー開けとか、ポップコーンがあるとかではなく…。

一流のパティシエが作ったものなんて…。

「 ふぁ、このチョコ…すごく美味しい! 」

「 そうか?パティシエに作らせた。缶の柄は、麗菜の犬姿をモデルにした特注のものだ。悪くないだろ 」

「 この缶…貰っていいですか 」

「 もらってどうする? 」

何処と無く見覚えのある犬の絵だと思っていたけど、やっぱり私だったんだと思い、缶の蓋を握り締めて答えた。

「 保存して…小物入れにしようかなと… 」

「 それなら菓子が入ってた缶では無く、サイズを含めて向こうに伝えれば、ちゃんとした物が届く。それじゃダメなのか? 」

「 それとは違うんです!お菓子の缶だったからこそ、いいんです 」

「 ゴミを捨てられないタイプだろ 」

「 ……………うっ 」

もう、図星過ぎて何も言えなくなったけど、彼は小さく鼻で笑っては、私が持っていた蓋を抜き取り、テーブルに置いた。

「 取っていなくても、此処では何でも買ってやる。ちゃんと必要なサイズを言えばいい、デザインを気に入ってくれたなら、俺も嬉しいしな 」

「 そうてすか…?では…お言葉に甘えてそうします… 」

確かにここでは、缶を保存しなくても、必要な大きさと模様で作られた新品買ってもらえる。

少し、この缶を捨てるのが名残惜しいけど…
其処は彼等のやり方に甘えよう思った。

「 因みに、庶民はなんで缶を集めるんだ?何を入れるんだ? 」

「 そうですね…。私ならこの大きなサイズなら、プレゼントに貰った箱とか入れます。例えば、首輪とか…。今は、このネックレスに変わったので 」

そう、私が犬の首輪を着けたまま人間の姿でいようとするのを見て、彼がネームタグだけをネックレスに移動してくれた。

普段の散歩は、高価な柔らかくて丈夫なハーネスに変わって、首にはネックレスのみ。

犬の姿に合うように、少し長めに調整され、
人の姿ではネームタグの部分が胸元まで下がってるけど、それでも肌見離さず着けれるようになって嬉しいんだ。

「 後…最初に使っていたリードと首輪も。あ、他には…実那斗さんが何気なく花をくれた時に、
自宅に帰った際に作ったラミネートした栞とかも、入れたいなって…。やっぱりそういうの捨てられないのが貧乏人なんですかね 」

散歩中、何気なく通りかかった花屋の前で、彼は興味があるならと、小さな花束を買ってくれたことがある。

枯れる前に花束を其々に抜き取って、湊さんとラミネートをして栞を作ったんだ。

言うのが恥ずかしくて、肩を竦めて告げると、彼は私から視線を外すし、缶の方を見詰めた。

「 いや、良いと思う…。なら俺も、御前が頭につけて帰った葉っぱでも入れてみようか 」

「 え、そんなの取っていたんですか…… 」

「 嗚呼、変なのか?そう言うのを入れるんじゃないのか? 」

「 合ってますけど…( この人、無自覚の犬馬鹿になってる、親バカってやつ?? )」

言っては悪いけど……。
葉っぱを取っておくのは、ちょっと違うと思う。

「 嗚呼、後…ブラッシングした際の抜け毛や髭とか保存していたんだ。机の引き出しに入れていたから、纏めるのも悪くないな 」

「 そうですね……… 」

愛犬の抜け毛や髭を取っておく飼い主は希にいるけど…。
私は獣人であり、普段は人の姿。

私の髪やら髭を保存してる言う彼に…
100万kmぐらいの心の距離を置いてしまったけど、
缶の中に何を入れようかと、楽しそうに話してる横顔は嫌ではなかった。

「 なら、食べきらなくてはな。因みに、いくつか絵柄の違う缶もある 」

「 え、そっちも可愛いです! 」

「 ふっ、そうだろう?麗菜はどっちがいい? 」

「 えー、この背景が星空もいいけど、こっちの花畑も可愛い…… 」

映画はずっと流れているけど、彼と肩が触れ合う距離で違和感なく、話をしてる方が楽しかった。


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