女王蜂転生〜 色彩の書 〜

獅月 クロ

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四話 物は試しと言うように

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言葉を失ったはネイビーに連れられ、与えられた部屋へと来た 

大きなキングサイズのベッドには黒い天蓋カーテンが付き、枕元にランプがあり、L型のソファーやテーブルのデザインを含めてモノトーンのインテリアばかり
流石、魔界……そんな派手な白とかピンク系は無いんだって思うぐらい、どちらかと言えばダークゴシックな雰囲気がある

部屋を見て気持ち的に落ち着けば、ネイビーは部屋に入ること無く廊下で告げる

「 此所が御前の部屋だ。好きに使え。結界が有るから雄は中には入れない 」

『 ……だから、廊下にいるんだ 』

孕ませてみろ、なんてきっと冗談だろ
ネイビーも雰囲気が変わってないからきっと何かの間違いと思って俺も気にせず答えた 

「 嗚呼、御前の繁殖場は別にある。其処は他の奴が教えるだろ 」  

『 えっ……本当にあるのか!?てか、教えるのネイビーじゃないのか!? 』

繁殖場って、あれだよな、ヤる為だけに与えられてる部屋でありドアノブに触れば開けれるって言う
此処より入れそうな部屋ってことに焦るより、見慣れた顔のネイビー以外に案内されるのは不安だと思う

「 俺は準備がある。御前の初めての相手だと言うことは、知識を学ぶ必要があるだろ 」 

『 どんな知識!?学びに行くから案内できないの!?勉強熱心だな! 』

寧ろ学ばなくてスルーして欲しかったんだけど、サタンの言葉に忠実な下僕って怖いな…
止めよう、必要ないと首を振ればその紺色の瞳は真剣に見詰めてきた

『 な、なに? 』

「 御前は此れから多くの雄を相手にする。一番最初が嫌になれば繁殖回数も減るだろ。そうなれば魔物の数は減る一方だ。御前の為じゃない、国の為に学ぶだけだ 」

キッパリと言われけど、そんなこの国に愛着すら無いのに繁殖しろって…

でも、産まなかったり産めなくなったなら、元女王蜂の様に簡単に殺されるのだろ
それも父親によって……

『 分かった…でも、御前じゃない。ルイって呼んで欲しい  』

「 ……ルイ、俺はネイビー。この国の軍事責任者であり騎士だ 」

『( やっぱり御偉いさん!! )』

立場的に上の人じゃん!!
そんな人が一番最初の相手でいいのかい!? 

アランと別れて変な異世界に来て、繁殖させる事が唯一の役目なんてよく分からないけど
取り敢えず、やってみるしかないんじゃないかな
二回も死にたくないし、死んでもいいけど折角ならこのチンコを堪能していたい

「 それじゃ、疲れてるだろうから今日は休め。明日……繁殖場で会おう 」

『 ………はい 』

デートの約束をするように立ち去ったけどな
繁殖場で会おうって結構なパワーワードだよ? 

かっこよく立ち去ったネイビーだけど、孕むってことは受けなんだよな?
どんな感じだろうかと想像しても、やり方すら分からない

『 うん、疲れたから寝よ…… 』 

考えても仕方無いと、部屋に戻りベッドに腰を降ろせばそのまま横へと倒れる

『 ……羽が邪魔! 』

横向きだと折れる羽に痛いし邪魔だと思い、俯せになれば案外、安心して寝れるが今度は胸に違和感がある
枕元に以上に多いクッションを掴み、胸元に置きシーツとの高さをつければ、腰は反れるがマシになった

此れからずっとこの姿勢で寝るのかと思うと憂鬱になると思い、目を閉じていればノック音が聞こえた

『 はーい 』

やる気は無いが、誰だろうかと返事をするとノック音は静かになった

『 あ、開けなきゃダメなのか…… 』 

雄は入れないことを思い出し、仕方無くベッドからのそのそと動き降りれば、ドアノブを回し扉を開く

『 誰? 』

「 ルイ様……私はサタン様の世話役であるハクと申します。貴方様に世話役が出来るまで、身の回りの事を御世話するよう言われましたので…… 」

細く短めの黒い鹿の角が生え、尖った耳にミディアムヘアーの白髪の髪は横髪だけ長く鎖骨まであり
案外細身でもしっかりとした肉体であり、胸元を開いた丈夫なピッチリ素材のインナーに腰から剣を着ける為のベルトに白いハーレムパンツみたいなズボンを履き、裸足だ
人間よりしっかりとした足に黒い爪は長く狼のよう
尻尾みたいなのは無く、色白であり鹿の角があるってことを覗けば綺麗な顔立ちをした十八前後の少年っぽい

『 命令でしょ?で、ハクさん…なにをしに来たんだ? 』

「 繁殖の仕方を教えようかと…… 」

『 んん!! 』

年下っぽい少年に繁殖教育!!? 
いや、助かるけど広々としたズボンのポケットから取り出した本に咳をするかと思った

「 お聞きしました。初めてはネイビー様らしいので……。早速、移動しましょう 」

『 ……強制なんだね 』

休ませてはくれないのかな

あの冷血なサタンが何を考えてるか分からないけど、よっぽど繁殖して欲しいらしい
ネイビーも知識を学ぶと言ってたけど、俺にも必要なんだ
恥ずかしさと言うより、この当たり前のような態度をされると逆に冷静になる

寝室から程近い部屋は書斎のようで、他にも幾つも本があり、俺は机のある椅子へと座ればハクと言う少年は置いてあった黒淵眼鏡をかけた

「 では、教えます 」

『 形から入るんだ……度は入ってる? 』

「 いえ、入ってません。伊達です 」

『 ……だろうな、そんな気はしてた 』

何だろう小説家でも着物着て書く、みたいな形から入る人がいるようにハクもそうなんだな
彼は本を開き、ページを捲りながら問い掛けてきた

「 なにか、知りたいことは有りますか?其処から教えた方が早いでしょ 」

『 んー、それじゃ。繁殖のやり方? 』

もう保健の授業みたいに聞いた方が早いかなって思い、聞けば彼は何処か口元に笑みを浮かべ
ページを捲れば、開き机に置いた
開かれた場面にある絵には、雌っぽい悪魔の下にいる他の悪魔がいる
有り難いことにどちらも頭が闘牛みたいだから、変な気にはならない

「 雌は雄を選び、繁殖へと誘います。雄はそれに答えた時から繁殖する為に体内に変化が現れます。丸一日程、時間は掛かりますが変化を終えた雄に受け入れる準備が出来れば、雌だけに香るフェロモンを放ちます 」

『( 嗚呼、準備ってこれ…… )』

ネイビーが自棄にさっさと姿を消した理由が分かった
繁殖する為の母体になるために変化があるのか、体内ってことは外見は変わらないようだ
ページを捲れば次は合体していた、余りにも絵が下手だし古いから平然と見てられる

「 フェロモンの匂いで雌は輸卵管(ゆらんかん)を伸ばし、雄の胎内にある育児嚢(いくじのう)に一つの卵子を植え付けます 」

『( ……雄の体内に、卵子を植え付ける…まるでタツノオトシゴみたいだ…… )』

雌は輸卵管を雄の育児嚢に差しこみ育児嚢の中に産卵し、育児嚢内で受精する
まさに、女王蜂と彼等はタツノオトシゴみたいだと思えば、ハクはページを捲り続けた

「 育児嚢内で受精するので、確実に孕みます。繁殖率や機会が少ない為が原因かと。生まれる期間は雄によって大きく違いますが、出産の時は卵のようなものを出し魔物が誕生します 」

つまり…輸卵管を持つ魔物が生まれたら、それが女王蜂ってことか
よく、見えてないのに分かったな……特殊な匂いとか?

まぁいいか……

『 鶏…… 』

「 この位の大きさですかね…… 」

両手で大体の大きさを見せてくれてのはいいが、なんと言うか人間の赤ちゃんより小さい
形は、ニワトリの卵みたいな楕円形をしてる
産みやすいために先端が少し尖ってるのかは分からないが、それでも卵を産むなんて……
どこから??いや…それは聞いたらダメそうだな

『 見たことある? 』

「 はい。私は此でも二千年は生きてるのでサタン様のお子さん達は見ましたよ。あ、お子さんといっても兄弟ですがね 」

なにか嬉しそうに言うけど待って…あのサタン……二千年近くこっちで生きてるの!? 
どんな時差だよ
それに兄弟って……

『 えっ、ネイビーって部下だから息子って意味じゃなくて、本当の息子? 』

「 はい、私の弟ですね。母親は元女王蜂のクロエですよ 」

『 ……ごめん、ちょっと一度整理させて 』

あの父親はこっちの世界に来て、魔王になってからクロエと言うあの婆ちゃんとヤって、自分で産んで息子が何人も出来てるってこと?
そして、自分の息子と娘を繁殖させようとしてたってこと?どんだけ、頭がヤバイんだ

「 クロエ様は昔はお綺麗でしたよ? 」

『 あ、綺麗なときにね……じゃなくて!!ネイビーと俺って兄弟だよね!?いいのか!? 』

「 血縁関係は必要ありません、雌の卵子と雄の"魔力"のみ大事なのです 」

一回死んでるから、この世界じゃこの肉体は別の者って考えた方がいいのだろうけど、兄弟なんて…
それに魔力って、確かにネイビーは強そうだけど……
頭に感じる頭痛に眉を寄せ、溜め息が漏れる

『 ……気にしても無駄なんだろうね、此処じゃ…… 』

「 えぇ、貴方は堕天使であり魔王にまでなってます。その時点で十分な魔力を持ち合わせてますよ 」

『 ……ん? 』

「 立派な角があるじゃないですか! 」

魔王って角が生えてるってだけで言われるなら、ハクも生えるだろって鹿の角を見れば彼は察したのか片手を振った

「 魔王の角は太く凛々しいものです。このような細く小さいのは違いますよ。ケンタウロスや悪魔達を見ませんでしたか?あれは違うんです 」

『 ……ネイビーは魔王だろ? 』

「 勿論です。立派な弟で誇らしいです 」

二千年生きて魔王になってないハクってなんだ、というかあのヨボヨボの元女王蜂はそのぐらい生きてたのか
それまでどれだけの子供を作ったかは考えたくはないが、二千年を守れるほどなんだろうな
繁殖した雌を平然と殺せるサタンもだが……この国はやっぱり可笑しいよ

『 大体分かった、後はネイビーに任せるとするかな 』

「 えぇ、物は試しです。明日は御風呂に入ってから繁殖場にお連れします 」

やっぱり繁殖場っていう時のトーンが可笑しいって
そんな、買い物にいこう、みたいに言わないで欲しい
此でも浮気したこと無いし、アラン以外とヤったことも無いんだから変な感じがする
逃げたりしたら殺されそうだし、上手くヤらずに終えたらいいな

その日はもう眠りに付き、翌朝にハクによって朝食を誘われた

大魔王であり父親と一緒に食事をすることは無いらしい

『 他に誰もいない…… 』

「 当たり前です。此所に座れるのは貴方の息子達だけです 」

『 へぇ…… 』

どうやら食事をするにも、世話役になってもらうのも息子らしい
つまりサタンの傍にいる全員が彼の息子ってことになる
そして少し離れた場所にいるのが他の雄やら、その人達の息子なんだろう
息子が下僕が……それもなんか、嫌だ
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