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別ルート
十八話 二つ目の卵
しおりを挟むタオルとか有るだろうかと周りを見れば、良さげな物なんて無くて、目についた自分の服を掴み穴にいれてた手に卵が当たれば、指を抜き服で受け取る準備をする
「 はぁ、っ……ぃ、っ……んんっ…… 」
『 踏ん張れ、デカいの出す感覚でな 』
「 い、あっ……ンッ!ふっ、んっ…… 」
やっぱり痛いんだろ
卵は近いが、先端を出すにはもう少し時間がかかりそうで、狐はシーツに爪を立て腰を反らしたり丸めたりを繰り返し、何度も息む
ネイビーの時とは違って苛立ちが少ないのは、ハクの柔らかな性格が影響してるのだろ
それに、彼とは卵の大きさも多少小さいと思う
それでもダチョウの卵サイズには変わらなくて、見てたら、鼻からスイカなんて分かるぐらいに痛々しい
『 ハク、がんばれ…… 』
片手を伸ばし、腰へと触れて撫でれば彼はやっぱりウンコ体勢が一番息みやすいのか、俯いたまま尻をシーツに向け尻尾を横に寄せたまま強く息み始めた
「 くっ……はっ、っ……! 」
『 あー……もう、少し……ほら、力入れて 』
「 ンッ!ン~~!! 」
卵の先端では無いことに、逆子?ではないか
逆さの卵だから大変なんだと気付く
底の方から出てきた卵は、中央まで来たところでプリっと残りは体液と共に服の上へと落ちてくる
「 はっ、ふぅ、うっ…… 」
『 よく頑張ったな、産まれたぞ 』
「 はぃ…… 」
ネイビーと違って真っ白な卵、そして服で軽く拭けば分かる
楕円形の先端はやっぱり最後に出た事に、逆子なんだ
流石に卵から産まれてくるときは苦しくないように向きを整えてから、一旦横に寄せて、狐の姿をしたハクの腰を撫でては様子を見る
『 大丈夫か?ゆっくり休め 』
「 はぁ……大きな、便が取れて……スッキリしてるだけです…… 」
『 だから、ウンコに例えるなって…… 』
狐は顔を上げ、俺の頬へと舐めれば軽く身体を起こすのに合わせて人の姿へ戻った
膨らみがあった腹は元に戻り汗を垂らしてる彼は、目線を卵へとやれば青ざめた
「 わっ、あ!申し訳ありません!!服を汚い体液で汚してしまって……! 」
『 気にするな、それより御前の卵は真っ白だな。綺麗だ 』
まるで鶏の卵みたいだと、寄せていた卵を持ち上げ告げれば、卵を眺めた彼は軽く触れてから抱きたそうだった為にその腕へと抱かせる
「 私と…ルイ様の子です……。ふふっ……嬉しいものですね。私にも子が出来ました 」
正直、俺は驚いている
ネイビーのように、卵を放置するのかと思っていたからこそ、ハクが卵に頬を擦り当てて喜んでる様子を見ると、雄其々に反応が違うんだと思う
彼の髪や肌によく似た真っ白な卵
どんな子が生まれるのだろうかと思いながら、ハクへと手を伸ばし頭へと触れれば、彼は俺へと視線を向けにこやかに笑った
「 ありがとうございますっ、この子は私が大切に立派な働き蜂に致します 」
『 嗚呼、程々にな…? 』
「 はいっ! 」
やっぱり働き蜂は確定なんだな、と言うか立派って……
案外、スパルタ教育に思えるハクに苦笑いを浮かべては、彼の額へと口付けを落とし、その場を離れる
『 ゆっくり休めよ。流石にそろそろ風呂に行く。ごめんな? 』
「 あ、いいえ!お着替え手伝います 」
片手を動かし俺と自分に、新しい服を着せた彼は卵を抱いたままベッドから下りて歩き出す
やっぱり産んだ直後に歩けるんだな……
ネイビーと違って今回は、ハクが卵を大切にするんだと微笑ましくなりながら、部屋を出て風呂場に行く
『 へぇ、卵ってそうやって洗っていいんだ 』
「 はい。普通に洗えます 」
風呂場に行き、直ぐに身体を洗ってから湯船に浸かる俺はハクが桶に湯を入れ、卵をその中に入れタオルで軽く擦ることに驚きすらある
温めて良いのだろうかと思うが、ルビーも洗ってから持ってきて貰っても生まれたからいいのだろ
魔物の卵って神秘的と見ていれば、湯に付けたままハクは笑った
「 一緒に御風呂ですね。ふふっ…… 」
『 そうだな……。そう言えば、最近の湯はざらついてるが砂でも入ってるのか?その分、肌は綺麗になるのだが……石灰か? 』
髪や羽にこびりつく石灰が入ったような湯
底の方に積もる砂を手に持ち、湯から上げて見れば細かな砂は様々な色をしている
時よりキラキラと光って綺麗だと思ってたからこそ、丁度ハクもいるから聞いてみたかった
これはなんだろうか?その疑問を投げ掛ければ、彼はにっこりと笑って平然と答えた
「 卵の殻ですよ。細かく砕いてますが、砂ではありません 」
『 ……卵の殻って……ん?? 』
待て、卵の殻ってもしかして……嫌な予感に目線を桶に入ってる卵を見れば、彼は軽くコンコンと指で突っつく
「 勿論、魔物達が産んだ卵の殻です。外側にはカルシウム、内側にはプラセンタも入ってるのでお肌が綺麗になりますよ 」
『 …………上がっていいだろうか 』
「 何故ですか? 」
中身はそりゃ、増産型の兵士やら使用人になってるのは聞いてたけど…
この底にうっすらとでも積る量を考えれば、どれだけの卵の殻が使われてるのか察することは出来る
卵の殻って、鶏も餌として食べたりするけど…
自分の我が子の殻がいつしか風呂に使われるなんて嫌だぞ……
ルビーの殻は記念に部屋に飾ってるのだが、魔物の殻って……
『 ……だって卵だろ 』
「 中身が食べたいのでしたら持ってきますが…… 」
『 そうじゃない!はぁー……殻の使い道は他に無いのか 』
流石に食用以外の卵を食べる気にはなれない
死んだ衛兵が飯になるのはなれたが、産まれてくる卵の中身はダメだ
絶対に却下だと首を振ってから溜め息を吐けば、彼は僅かに傾げる
「 砕かないと硬いですし……食べる気もないですし。中身なら喜んで目玉焼きや雛鳥の丸揚げにでもしますが……殻は…… 」
『 つまり、破棄するものってことな? 』
「 はい!そういうことです。なので魔物達からすれば女王蜂が綺麗になってくださるのなら嬉しい限りですよ 」
『 セーフってことにしよう…… 』
破棄するなら入浴剤に使われても納得しよう
中身がちゃんと衛兵になってるのを願って、それ以上考えるのを止めた
と言うかハク、サラッと中身を調理することを言ってたけど俺の卵だけは止めてくれよ……
最近、ざらついてた湯の理由も分かり
なんとなく疲れを感じるも風呂から上がり、身体を乾かし行為の為に脱ぎやすい服装へと変えれば風呂場を出る
「 では……頑張って下さいね 」
『 嗚呼…… 』
自分の卵をルンルンで抱いてるハクは頭を下げてから、離れていく
産んだのを見てから、次の繁殖は別の雄
考えないようにしてるのに気にかかるのは悪い癖だと思いながら、繁殖場へと脚を向ける
「 あ、ルイ様 」
『 ん?あぁ、烏 』
向こうからやって来た烏の頭をした兵士を見て、いつもの彼奴かと思い、ちょっとだけ笑みが漏れる
こんな風に、雄とは違う奴等と話すのは気分が変わっていい
「 あ、あの……さっき偵察に行ってて…… 」
『 うん?お疲れ様 』
「 ありがとうございます……えっと、その…… 」
『 ん? 』
モジモジとしてトイレでも行きたいのだろうか
俺より身長の低い烏を見ていれば、彼は背中にある羽を探って、有るものを取り出し向けてきた
『 これは…… 』
「 魔界の黒い彼岸花は御好きじゃ無いみたいなので、桃色の花を……あ、羽にいれてたから萎れて…… 」
小さな桃色の花は、まるで前世で見たハナミズキのよう
萎れてしまったそれを悲しそうに見つめる烏に、俺は笑みを溢し両手を握った
『 俺にくれるのだろ?ありがとう 』
「 えっ、でも……萎れて…… 」
『 構わない。可愛い花を持ってきてくれてありがとうな、烏 』
「 はいっ、喜んで頂けて嬉しいです! 」
俺を慕う魔物は多い
けれど、贈り物をくれたのはネイビーとこの烏だけ
それがどれだけの言葉より嬉しいものは無い
萎れた花を受けとり、見詰めては烏の喜んだ笑顔を見て、俺もなにか変えそうと考えては羽を見る
『 じゃ、これは俺からの御返し…… 』
「 なっ、なにを!? 」
一番大きな上側の羽を掴み、ぶちっと引き抜けば流石に勝手に抜け落ちるのとは違って痛かった
『 いって…… 』
「 当たり前です!羽は手のように大事なのに…… 」
ちょっと涙目になったけど、まぁいいや……うん
焦る烏へと、三枚ほど抜いた羽根を差し出す
「 えっ……? 」
『 御返し、受け取らないのは無しな?抜いてしまったし 』
「 っ……私のような、下級の魔物に此のような贈り物を……有り難く頂きます 」
首を振りそうな雰囲気だった為に、釘をさせば彼はぐっと言葉を飲みこんでから両手で羽根を受け取り大切そうに持っては涙を溜めて見上げてきた
『 嗚呼、それじゃ任務頑張ってな 』
「 はいっ!いただきます! 」
いただきます、ってことは食べるのか……
流石魔物、羽根でも食べることに驚きすらあるが、もう気にするのはやめにした
片手を上げその場を離れては、繁殖場へと向かう
『 あ、そこの君、ちょっといい? 』
「 はい、なんでしょうか? 」
通りかかった使用人である下半身は鳥の脚をした、ハーピーのような魔物に声をかければ、萎れた花を差し出す
『 これで栞を作って欲しいのだが出来るか? 』
「 おや、これは魔花月(まはなづき)ですね 」
『 知ってるのか? 』
「 えぇ、木に咲く花で……花言葉は“私の思いを受けてください“。ですよ。持ってきた方はとてもルイ様が御好きなのでしょうね 」
花言葉迄はそこまで知らないが、
ネイビーが、珍しいと渡してきた黒い彼岸花は“貴方はあくまで私のもの“みたいな怖い花言葉だったのは
他の奴から聞いて知っていたが、やっぱり黒い花ではない、明るい花の花言葉は純粋でいいな
『 そうか……いいな 』
「 はい、大切に栞にさせて頂きます 」
『 ありがとう、頼むな 』
頷いた彼から離れては、やっと繁殖場へと行ける
栞に出来るのなら、このまま枯らさなくて良かった
『 ……やっぱり、女王蜂が待つ側なんだよな。まぁいいか 』
繁殖場に入ればアランの姿はなく、内心安堵してはベッドへと座って待つことにした
カーテンを外すことはもう無い
それより……行為をしたのがふった時の女の姿
男だと言うことは認めてはくれてるが嫌がらないか、と不安に思う
それに、別れたのにまた身体の関係を持つなんて…
流れのまま此処まで来たが……
緊張して色々とものが出そうで込み上げてくる
酔い止めでも飲んでくれば良かった
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