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しおりを挟む離れた後に、彼女は俺の腕を掴んだまま
足場に気を付け砂浜へと戻った
雷が苦手なのだろ、特有のゴロゴロと鳴る音でさえビクッと身体を動かす位には怖がっている
「 うそ....誰もいない。てか、裕一は? 」
『 こう言うときって逸早く海の家って閉まるよな....焼きそばとか食べたかったのに 』
「 問題そこ? 」
さっきまで沢山の人が居た筈なのに
海の家は閉まり、荷物を纏めて車に乗り込む家族連れの姿がある
もう砂浜には俺と彼女しか居ないぐらいには人の気配は消えていく
駆け足のようにやってくる灰色の雲は黒く染まり、雨は降り始めた時より強くなった
『 寒いな.... 』
「 あ、屋根ならこっちにあったよ 」
遊んでいれば身体は暖かいけど、止まってしまえば濡れて冷たくなる
風邪を引かせる気はないと、急いで屋根のある場所にやって来た
木の椅子やテーブルがある、海の家で買った物を食べるためのような休憩場
此処なら雨宿りが出来ると、彼女の服をもう一度絞り直しながら雨が強くなる外を眺める
裕一.....ナンパした子とどっか行ったとかないよね?
置いていくなんて....あり得そうだけど
『 ....スマホ死んだなら、一緒に入ってた財布ってどうだろ 』
「 財布....あ! 」
すっかりスマホの事で忘れてたけど大切な財布がある
彼女に絞ったパーカーを渡してから、ビニール袋に入った2つの財布の其々を持ち中身を確認する
俺のは革の財布であり、既に傾けただけで滴は落ち嫌な予感しかしない
開けばやっぱり1万円札はボロボロで掴めば破れそう
それならこのまま乾かした方がいい
「 飲み物用に両替した分ぐらい....カードはこの辺りじゃ使う場所無いでしょ 」
『 私はカード派だからお金がない....ごめん。スマホ使えたらお財布ケータイで買えるけど 』
真っ暗になった画面、下手に再起動連打しても壊れるだけ
それなら乾くまで置いておく方がよさそうな気がする
「 いいよ、飲み物買うついでに裕一探してみる。待ってて? 」
『 わかった.... 』
裕一が同じ様に立ち往生してるなら、いいけど、連絡取れないから帰ったのかこの辺りにいるのかも分からない
離れるんじゃ無かったと後悔しても遅いけどね....
雨は強くなり、打ち付けるような雨の中
小銭だけ持って屋根から出て来るときに見た自動販売機へと走る
「 ....温かいものがいいよね....って、夏だしあるわけないか 」
自動販売機の前にはずらっと並んだ冷たい飲み物ばかり、流石に真夏の海水浴付近にある自動販売機には温かいものは置いてなかった
仕方なく、二人分の御茶のペットボトルを買ってからこんな雨もあり裕一探す事を諦め
彼女の元へと戻った
「 ふぅ、御待たせ.... 」
髪を振って、雨を弾いて入れば
椅子の上で膝を抱えて震えてる姿に眉は下がる
「 寒い?服が乾いてたらな.... 」
『 大丈夫、少し寒いだけだから。御茶ありがとう 』
「 んや、いいけど。温かいの無くてさ.... 」
『 そりゃ夏だから無いでしょ 』
軽く笑って受けとる彼女はペットボトルの蓋を開け少し飲めば、閉じてからテーブルに置く
一人分のスペースを空け隣へと座り、同じく飲んだ俺はどうするか考えていた
電車代には少し足りない、乗れたとしてもほぼ下着のようなビキニ姿の彼女と海パンの俺が乗るには抵抗がある
「( どうするべきかな.... )」
『 さっき、お父さんにメールしたんだけど....忙しかったり、仕事だったら遅いと思う 』
「 父親? 」
『 うん....きっと、怒られる 』
雨の日に海に居た、なんて知ったら心配するだろ
其よりも男二人と遊びに来た事についても気にするかも知れない
どちらにせよ、俺は彼女だけの責任とは思えなかった
「 そんな時は.... 」
『 ん? 』
「 俺も一緒に怒られてあげるから、今は待とうか 」
『 ....別に、いいのに 』
少し驚いた表情を見せる彼女に、俺は自分がそうしたいから、と答えてから視線を強くなっていく海の方へと向ける
「 満潮の時間と被るな.... 」
『 うん 』
雷の音は無くなってはいるけど、それより雨の方が酷くなる
あれ、台風でも来てたっけ?
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