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しおりを挟む風に靡く金色の髪が頬に当たる度に
彼女は耳に掛け、学校では見せないような笑顔を浮かべる
手に持ってるのさえ、無ければ完璧な絵になるだろうに....
『 なんか凄く変なのいた! 』
「 ナマコだよね!?よく触れるね! 」
『 おぉぉ、グネグネしてる 』
ゴムナマコだっけ、ピンク色でかなり大きさのあるそれを持って、水を噴き出すのを面白がって遊んでるけど気持ち悪くて引いてしまう
「 元の場所に置きなって 」
『 なんだー、此が怖いのか?ほれほれっ 』
「 別にそんなんじゃなくてっ....うわっ! 」
ヌルヌルとかも嫌いだけど、見た目が完全に生き物っぽく無いのもまた苦手だ
特にナマコなんて物は無理だと近付けて来る度に、後ろへと下がった俺は此所が岩の上だと思い出す
『 あ.... 』
さっき、岩場は気を付けて
なんて自分が言ったのにナマコに気を取られて後ろの距離感を忘れるなんて
こういう場合って一緒に落ちて....なんて夢物語、そんなのは何一つなく俺は背中から海へと落ちた
「 ブハッ!!意外に深っ! 」
一瞬、頭の中が真っ白になったけれど
直ぐに水面目掛けて手を伸ばし起き上がり、地面に脚を付き立てば
胸元まで水嵩がある
此所は引き潮で上がった部分の一番、最後の場所だと分かりながら1㍍は落下しただろう、その岩の上から彼女は膝を曲げて笑っていた
『 あははっ、だっさー! 』
「 君がナマコなんて持つからでしょ.... 」
顔を拭き、目が痛いと内心思いつつ爆笑したように笑う彼女を見上げ岩へと手をかける
「 入るつもり無かったのに 」
海に入ってシャワーを浴びたとしても
ボディーソープとか持ってきてないからシャワー浴びてもカピカピしたような、違和感は想像できた
だからこそ入って遊ぶ気はないと、海から上がろうとすれば肩へと当たる感覚に目線をやる
「 なに? 」
俺の肩へと脚を置き、まるで小悪魔の様に目を細めて密かに笑った彼女はそのまま蹴り飛ばす様に俺を岩から引き離した
「 っ!! 」
手を滑らせ、もう一度海の中に入った俺は頭にカチンと来るものがあって
上で笑う彼女の脚を水面から手を伸ばし掴む
『 ふぁっ!? 』
「 巻き込んであげるよ 」
『 !! 』
引っ張った事でズルリと滑り、同じく海へと落ちた彼女は少ししてから顔を上げ必死に俺の腕へと掴んできた
『 深っ!てか、ひどっ! 』
「 君が落としたんだよ、それも二回 」
何気無く腰に触れ浮かすように抱けば、焦っていた彼女の表情は眉を寄せたあと笑った
『 しゃーないなっ!お互い様ってことで 』
「 俺は被害者だけど許してあげるよ 」
『 ....てか、このビニール袋には何入ってたの? 』
「 ....あ“!! 」
互いに笑ったのはいいけど、俺が落ちた時に一緒に持ってたビニール袋は海へと落ち
それを拾った彼女に、俺は蛙の潰れたような変な声を出してからビニール袋を受け取り、中身を見る
「 ....マジですか 」
『 ん? 』
ビニール袋の中には既に重みで一度沈んだ為、海水がタプタプに入り
俺と彼女の分の服は水気を吸って、服の間に入れてたスマホは海水に浸かっていた
「 俺のスマホが水没した.... 」
『 持ち運ぶからだよー、私のスマホはポケットに.... 』
「 これじゃない? 」
『 ...... 』
ビニール袋から取り出し持ち上げた彼女のパーカーは水気を落としていく
その中に入ったスマホなんて、予想はつく
『 なんていうことでしょ!! 』
「 それは俺が言いたい、取り敢えず使えるか見てみようよ 」
『 あ、うん 』
今度はちゃんと岩の上に上がるために、ヌルヌルとした岩を掴み、身体を持ち上げればずるっと滑ると共に手の平に感じる痛みに上へと上がってから気付く
「 牡蠣?痛いな....ほら、君も上がっておいで 」
手の平を見れば赤い線が入り、滲んだ血を見て軽く舐めてから反対の手で彼女の方へと片手を伸ばす
『 あ、ありがとう.... 』
「 ん? 」
一瞬、手を伸ばす事を戸惑った様に見えた彼女に傾げながら手を握り一気に引き上げる
足場に気を付けて岩の上へと上がり、その場に座ればスマホの確認を急ぐ
「 ....防水にしとけばよかった 」
『 私のはなんとか行けそう。迎えに来てもらえるか連絡しよ 』
服が濡れたなら電車には乗れない、
彼女は何処に居るから迎えに来て、という淡白なメールの送信後に眉を寄せる
「 まさか.... 」
『 どうしよう....画面真っ暗になった 』
「 ....だろうね 」
うん、海水だもん....
油断しちゃダメだよ
裕一との連絡の手段も途切れ、
落ち込んだ瞬間にまるで俺達の間に雷が走ったように大きな音が鳴り響く
『 わっ!!? 』
「 っ、ビックリした.... 」
雷より、抱き着かれた事の方が驚いたよ
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