姉の身代わりになった引きこもりは身勝手な社長の妻になる

獅月 クロ

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十一話 黙らせ方は物理で

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~ 隆一 視点 ~


ルイの妊娠も十六週目に入った
本人が検査を嫌がるから今月に入って一度だけを考えてるが、彼奴等に情報が筒抜になる
まぁ、別に成長段階を教えようがどうでもいいのだが、いちいち小言を言ってくるのが気に入らない
ずっと傍に居るのだから、ルイが浮気なんてするわけ無いし俺も他の者に興味はない

まぁ……だからこそ、成長する子と嫁が可愛くて仕方無いんだが……

「 最近、彼奴にちょっかいかけても本気で嫌がらなくなった…少し前は威嚇してきたのに… 」

「 猫の話ですか? 」

「 いや、ルイだ…… 」

椅子に座り書類を見ながら、真剣に答えていれば他の場所から持ってきた蓮は傾げた後に、鬱陶しそうな視線を向ける

「 ルイさんも落ち着いたのでしょ。というか…諦めたのでしょ。貴方のウザさに 」

「 俺はウザくない筈だ。これでも抑えてる。本当はもっといちゃつきたいが、余りするとかなり機嫌が悪くなるからな…… 」

「 なんですかその、妊娠中のメス犬にちょっかいかける、オス犬みたいなの…… 」

膝の上に乗せて抱き締める以上に、キスしたり胸やら触れてみようとしたら、一気に逃げようとしたり嫌だと拒否される
流石に、これ以上は嫌われたくない為に諦めるのだが……本当はもっと一緒に居たいしラブラブしたいと思ってる
真剣に考える俺は答えた

「 やっぱり我慢するべきか 」

「 当たり前でしょ。妊娠中は不安定なるらしいので、優しく扱ってあげてください。只でさえ、好きでもない男とデキたのに… 」

「 今は好きだと言ってくれる…。が……まだ本気じゃ無いのだろうか 」

「 知りませんよ。ルイさんとは滅多に会いませんので……本人に聞いて下さい 」

そして仕事をしろ、と言ってきた蓮に止まっていた手を動かした

好きだと聞くのは怖いが、触れる程度の行為は良く囁いてはくれる
だが、普段の時はどうだ?俺ばかり言ってるような記憶しか無い為に頭痛がする
そんな事はないだろ……子供を産むことを認めてくれてるし、休日は傍にいても嫌がらない
蓮が言った諦めただけなのなら、彼女が俺に向ける感情は何か知りたくなった

「 嗚呼、聞けばいいのか…… 」

「 また変なことは考えないでくださいね 」

問題ないと答えては、ノック音と共に部下が入ってくる

「 五十嵐様。桐生様から御電話が…… 」

「 あのジジィか……繋げてくれ 」

「 はい 」

受話器へと視線をやり、部下が立ち去った後に直ぐにかかってきては手に取り耳へと当てる

「 なんだ?仕事中なんだが…… 」

“ やぁ、五十嵐くん。聞いたよー。それの事なんだが…… “

「 嗚呼…… 」

また良からぬ事だろうと話だけ聞いて簡単に、切る予定だったのだが、問われた言葉に有ることを考えては口角を上げた

「 分かった。では二週間後に…… 」

言葉を交わして電話を切れば、俺の言葉だけ聞いていた蓮は溜め息を吐いた

「 貴方って本当に、性格が悪い……怒られますよ 」

「 ふっ……だろうなぁ 」

仕事中の俺なんてたいしたことはしてない
人に会ったり会議をしたり、最終的な報告書の確認だけひたすらする程度
そして、ずっとルイの事を考えてはストレスを軽減してる
まぁ、仕事に慣れたのもあるが……大半は面倒な奴等との会話で時間は潰れる

五十嵐グループのトップでありながら、部下に支えられてるのは実感してる
まだ蓮の方が優秀だろうな……


~ 主人公 視点 ~


『 マナーを覚えろ!?やだ 』

家に帰ってきて、夕食の準備をしながら告げた隆一の言葉に即拒否をした
彼の隣には一緒に料理を作る予定の蓮さんも珍しくいるのだが、彼はやっぱりとばかりに頷いた

何故、こんな話になったのかと記憶を少し戻せば
桐生財閥の言うよく分からない上の人が、私を誘ったパーティーを主催するらしく、それに参加するから、ある程度のマナーは覚えて欲しいって

『 最初と話が違う。存在だけ居たらいいって言ってたのに、人前に出るとか。私は見世物や珍獣じゃない 』

「 御尤も 」

「 なっ…。そんなつもりはない。俺の妻と紹介できる機会なんだ。俺の妻なら…… 」 

『 その“ 俺の妻なら “って言い方、大嫌い 』

ソファーに座っているまま、顔を向けて睨めば隆一の表情も不機嫌になってるのが分かる
そんなに拒否されたのが嫌なのか、それとも言い方が気に入らないのかはどっちでもいいが
ハッキリと言いたいと立ち上がれば、彼は手を止めてこっちへとやって来た

「 何故嫌なんだ、御前は俺の妻であり恋人だろ? 」

『 私は私物じゃないし。パーティーに参加すると言う条件は最初に無かった 』

「 私物だとは思ってない。パーティーなんて小さい頃にも参加してただろ 」

『 三歳児の強制参加なんて、カウントされない! 』

「( ハァー……やっぱりこうなる )」 

横目で蓮さんが溜め息を吐いたのは分かるけど、言わなきゃきっとこの人は分からないし理解しない
それは結婚して、子供が欲しいと言ってた言葉で気付いていた
この人は自身で思ってる以上に子供っぽくて、そして負けず嫌いの我儘だ

「 そんなに俺の為に、参加するのが嫌なのか! 」

『 だからその俺の為って考えが間違ってる。そんなの、私達は友達でしょ?と言って何でも押し付けてくる女友達と変わらない 』

「 俺は女友達じゃねぇ。夫だ 」

『 そういう違いじゃなくて…… 』

腹がキリキリと痛んできた 
まるで喧嘩は止めてとばかりに感じる痛みと、興奮した事で熱くなる身体に気分は悪い

「 じゃ、なんだって言うんだ。御前は俺の事が嫌いなのか! 」

『 なんで…… 』

話が通じない事と何も分かってないまま怒って、そして変な方向に向かってる事に気付いた時には
涙が流れそうだった…鼻先が痛くなる
子供が産まれてもいいと思ったのは隆一の子だから……でも、私をパーティーに連れていっても笑い者か、蔑まれるだけだ
自分のため、俺のため……じゃ…私の意思はどこにある……?

「 そうやって泣いて……ご……っ!!? 」 

『 なっ!? 』

「 ……うぜぇん、ですよ 」

泣いてないといいかけた時には、隆一の胸ぐらを掴んだ蓮さんによって彼は殴られていた
余りの勢いに目の前で風が吹いたと思うほど早くて、高身長の男は床へと倒れていた

「 いっ……なに…… 」

「 黙れ自己中 」

明らかにこの中で一番怒ってる、めっちゃ怒らせてはダメな人を怒らせたと知ったときには、隆一の肩を踏んだ彼は見下げて、言葉を告げる

「 妊娠させた奴が他にまだ我儘を言うか?考えろってんだろ。御前は性欲しかねぇ、猿か?いいか、恋人やら妻と言うなら。ルイさんが何を言おうがギャーギャー喚くな 」

「 っ…… 」

「 まずは聞け。嫌がる理由が分からねぇ?好きじゃねぇかもしんねぇ?黙れ 」

『( 蓮さん……めっちゃ…こわ…… )』

怖いけど低く言ってる言葉は正論だけど、滅茶苦茶隆一が驚いてると言うより、青ざめてるのが分かる
きっと本人も怒られてるのが理解してるのだろ、彼を見上げたまま硬直している隆一は新鮮だと思う

「 産むと言った時点で御前の事が相当好意をもってんだよ。俺はルイさんより御前が彼女に向ける好意の方が、本当に好きか疑いてぇが…傍で見てたから疑いはしねぇよ。だがな……好きだからって何でも許されると思うなよ 」

蓮さんは、隆一さんが私と結婚すると言ってたから傍でみてきた
だからこそ、一途に思い続けたことは疑わないと言ったけど、だからって怖すぎて理由すら聞けない

「 " 俺の為 "じゃなく、一旦ルイさんの為って考えてみろ。料理を作ってる兄貴なら分かるだろ?何故、パーティーに参加しないと言ったのか。マナーを覚えることだけがきっと理由じゃねぇよ 」

自分の立場を考えろ、と吐き捨てた蓮さんは肩に置いていた脚を退かせて一つ深呼吸すれば私の方へと顔を向けた

優しく微笑んだ表情に一瞬の変わり方に怖くて、僅かに肩を跳ねれば、彼は優しく告げる

「 こんな奴ですが。単純に皆に紹介して自慢出来る機会を与えられて嬉しいだけなんです 」

『( ちゃんとフォローしてる!! )』

怒るだけかと思ってたから、兄をフォローしてる弟の眩しさに感動すら覚えていれば
その兄である隆一さんは立ち上がろうとした

「 …別に俺は……ッ! 」

「 言い訳の前に土下座して謝れや 」

容赦なく腹を蹴り上げてから、頭を踏みつけた

痛い……今のは痛いよ、大理石の床に額を強打してるんだから…

というか、蓮さんの一瞬乱れた服装から見えた肌に似合わない模様に青ざめた

『( えっ、待って……蓮さんって……そっち系の人!? )』

口調が悪いと言うより、サラリーマンとは思えない髪型とは思ってたけど、もしかして……いや、でも隆一はそっち系に見え無いし……きっと見間違えかと思いたい

「 結婚生活、極意その一つは。取り敢えず先に謝ることだ。男は聞け。お父さんも言ってただろ。嫁を怒らすなって…なぁ?  」

「 はい……すみません……でした…… 」

「 その二つは。聞いた後に何故理解できないのか的確に伝えることだ。分かったか? 」

「 はい…… 」

「 よし、やり直せ 」

いや、メンタルボロボロの隆一さんに謝られてもこっちがどうしたらいいか分からないし
寧ろ同情心でパーティー参加してもいいよ!?なんて言いそうだと思う
喧嘩した理由も余り思い出せない位の、インパクトに動揺する私に、隆一は座り直し額の血を片手で拭き、正座すれば告げた

「 ルイちゃんを怒らせてしまって……ごめんなさい 」

『 う、うん……私こそごめんね…… 』

なにこの、カラクリ人形みたいな言い方!
凄く謝ってる感じは伝わらないし、横で聞いてる蓮さんに怯えてるのが雰囲気から分かる
ちょっとだけ焦る私に、隆一さんは深呼吸をしてから清々しいほどにハッキリと答えた

「 俺の事が好きなのか、パーティーに参加して" 私の夫は素敵なの "とか言って欲しくて御願いしました。マナーとか覚えなくていいので……どうぞ、俺と一緒にパーティーに参加してください。後、怒ってる理由をもう少し分かりやすく、説明してください!! 」

蓮さん、教育方法間違ったんじゃない!?って位に素直に言ってきた事に驚きより気持ち悪いと引いてしまった私にたいして、見てるだけの本人は満足気に頷いていた

いやいや……結局は、私を放置して二人で解決してるじゃん……
まぁ、もういいけどね!

『 隆ちゃん…パーティーに参加するよ。好きなのは変わり無いし…でも、私が参加して他の人に何か言われたらどうするの?私はそっちが心配だよ… 』

前の、婦人科医の人達みたいな言葉は嫌だと伝えれば彼は胡座を組み片手を握り締め拳を作った

「 問題ない、黙らせる 」

『 物理で!?止めてね!! 』

蓮さんが手と脚が早かったから、本当に物理でするのかと思うじゃん

というか……蓮さんの腰に見えた模様は言わないことにした

一時、夢で出てきそうだけど…
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