姉の身代わりになった引きこもりは身勝手な社長の妻になる

獅月 クロ

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バレンタイン 02

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都会生まれ、都会育ちの隆一には野生動物は興奮するらしく私より見掛けたは喜んでいた
五頭の内に一頭は雄鹿であり、観光地にいる角の切られた鹿より、凛々しくて立派だと思う 

まるでアニメ映画の世界だと二人で笑っては、歌い手の曲に合わせて、知ってる部分は歌ってくれる隆一と一緒に歌う
私は音痴だし、下手だと自覚してるが普通位の彼と歌うだけ楽しい
カラオケとか行かないから、こんなのもいいなって思う
 
突発的でよく分からないドライブ
それでも、野生動物見たり歌ったり車も通らなくなってホラーだとばかりに笑い合い、いつしか日本海側の県へと来ていた

『 休憩しなくて大丈夫? 』

「 山の中で休憩するぐらいなら、意地でも起きて公園かパーキングエリアを探す…… 」

『 まぁ、怖いもんね…… 』 

霧やら野生動物の出現で、ノロノロ運転のまま此所まで来れば、外が山ではないことに気付く

そしてやっと、今回の目的を話を始めた

「 日の出を見たくてな……。この橋を渡った先に休憩所がある。そこで寝て朝日を見る 」

『 へっ、そうだったの!?明日、仕事でしょ? 』

「 嗚呼、見たら即帰る 」

日の出の為って、夜景デートなら分かるけど朝
いや、それもまたいいと思うと流石に乗ってても疲れた為に気にするのを止めて
長い橋を通った先にある、パーキングエリアへと車を駐車させた

『 んーお疲れ様です! 』

「 嗚呼、流石に疲れた 」

車から下りて三時間ぶりに外に出れば、背伸びをすれば隆一もまた、軽く背伸びをする

『 ……トイレ有るかな?一緒に行こ! 』

「 ……誰もいないのにか? 」

『 誰もいないからだよ! 』

ぶるっと身震いすれば尿意に気付き、パーキングエリアなのに全部の店が閉まって真っ暗
そりゃ深夜三時前なら仕方ない

車すら自分達以外は停まってないからホラーだと、腕を掴んで背後へと隠れれば
彼はライトを片手にトイレの方へと歩き出す

『 ひっ、こわ…… 』

「 何もないだろ……足元に気を付けろよ? 」

『 うん…… 』

山の中で休憩するのは嫌がったくせに、トイレまで行くのは平気なんだな
変なやつと思い、トイレへと来れば突然明かりがつく事すら驚く

「 男性トイレは…… 」

『 着いていく 』

「 は? 」

『 いいから、入れ 』

もう怖くて仕方無いんだよ!
トイレを開けた瞬間に誰か立ってたら叫ぶよ
プライドとかどうでもよくて、男性トイレへと入れば洋式へと連れ込んだ

『 そこにいてね。絶対に 』

「 ……まぁ、別にいいが…… 」

一緒に入り、トイレを閉め後ろを向かせれば先に早々に消毒してから便器に座る
音が聞こえるとか問題なく、安心してトイレを終わらせてから水を流し交代する

『 そう言えば座ってするの? 』

「 無理に決まってるだろ…。便器の隙間から漏れるぞ。後ろ向いとけ 」

『 あ、立って……わかった 』

蓋を開けた彼に言われたまま、後ろを向けばファスナーを下げる音から聞こえてくる
これって実際に聞くとエロくない?と思ったときには終えて、二人で並んで手を洗う

『 はぁ、スッキリした 』

「 ……そうだな。寝るか 」

『 日の出のために! 』

なんか疲れきってる隆一を見ては笑える
大丈夫、溜まってたのは私も同じだから!
ずっと飲み物を飲んでたもんね!

車へと戻り、彼は後ろの扉を開けばつんでいた布団一式をきちんと敷き始めた

『 準備がいい…… 』

「 そりゃ、寝るつもりで来た 」

態々、布団を買っていれたのか……
座席は倒れて水平になり、マットレスを敷き大きめの炬燵布団の毛布と、クイーンサイズの掛布団があり、さらに枕が二つ置かれた
彼にとって狭いけど、寝るには悪くないほどにちゃんと布団がある

それだけで嬉しいと先にコートを脱ぎ布団に入る隆一の横へと行く

『 鍵閉めてね。変な人来たら嫌だし 』

「 確認したらいい。閉まってる 」

『 よし、大丈夫 』

左右の窓はプライバシーガラスであり、外からは見えない
前の方から見えないようカーテンを閉めた彼の横に行き、上着を脱ぎ仰向けになれば
隆一は軽く笑ってから天井へと触れる

「 これを気に入ってな……都会じゃ見れないだろ 」

『 わっ…… 』

車のサンルーフは開き、真上には星空が広がっている
都会とは違って星だけの明かりで綺麗だと感動すれば、彼は座ったまま見上げた後に鞄を探って何かを取り出した

「 ……これをやる 」 

『 ん? 』

向けられた箱に目線をやり、起き上がり受けとれば細長くて小さな箱には赤いリボンがしてある
ライトを向けて見せてきた彼は、優しく答えた

「 日付が変わった。バレンタインのプレゼントだ 」

『 っ……!普通、逆じゃない? 』

「 日本だけだろ。ほら、開けてみろ 」

なにこのサプライズ
ちょっと予測して無かったし、諦めてたから嬉しいとリボンをそっとほどき箱を開ければ中には飾りつけは綺麗だけど、形はどこかいびつなチョコレートが八個入っていた

『 えっ……手作りとか? 』

「 嗚呼、仕事場の厨房を借りた。家だとつまみ食いされるからな 」

『 あ、いや……ありがとう…… 』

手作りチョコレートなんて意外だし、厨房で作るなんて部下が、とか色々言いたいことはあったけど堪えてから
一粒、桜色をしたチョコレートを摘まみ口へと含む

『 いただきます…… 』

口の中で転がして、舐めればイチゴ風味かな?と思ったら鼻に抜けるような甘さと香りに薔薇だと分かり、笑みは溢れる

『 洒落てる……薔薇だよね?……美味しい 』

「 匂いだけな。俺は流石に寝る……後は好きに食え 」

『 えっ、ちょっ……。もう、お疲れ様 』

もう少し明かりがある所でみたいために、残りは明日に食べようと箱を閉めて
黒淵眼鏡を外し、ペットボトル容れにいれ布団に入り仰向きのまま夜空を見上げれば、背を向けて寝てる隆一は既に寝息を立てた

『 本当に寝るんだ……手を出すかと思った…。まぁ、車じゃ…しないよね…… 』

「 疲れてるからな…… 」

『 起きてた! 』

寝息立ててるからてっきり起きてたのかと思い、視線をやれば此方へと身体を向け、腕を伸ばし横を叩いた
その動作の意味に気付き、腕へと頭を乗せ向き合えば、彼の片手は頭へと触れ髪を撫でれば腰へと置く

「 ……おやすみ、ルイ 」

『 ん、おやすみ…… 』

仕事終わりに運転したら疲れるもんね……そう思って額に口付けられるまま受け入れて目を閉じ、少しだけ胸元へと寄り密着する
布団があるとは言えど寒いのは変わらなくて、体温の方が気持ちよくて、眠気は直ぐに訪れる

瞼は閉じ、眠れば彼もまた眠りにつく

夜空の下で、寝る日が来るとは……
新鮮で楽しいドライブに満足した

朝の六時に目覚ましをかけていた、彼のスマホの音に起きて二人でまたトイレへと行く

『 寝れた?運転できる? 』

「 嗚呼、ふぁー……余裕…… 」

大あくびをする様子に、本当だろうかと疑問になるも此所から移動して彼が調べた、日の出スポットへと行く

平日ってこともあり、人がいないまま駐車場で待機する

『 チョコレート、可愛い!薔薇のハッキリ見たかったな 』

「 可愛いの好きだろ? 」

『 うん!でも、味はもっと美味しいよ 』

意外に飾付けが女子力高い
本とかで調べたにしろ、デパートに有りそうなぐらい綺麗だともう一つ食べていれば時間をみて、外に出た隆一をチョコレート置いてから追い掛ける

何気無くスマホを持って階段を上がり、木の手摺があり掴んで凭れれば、真正面の山から太陽が上がるらしい

『 雲もない! 』

「 嗚呼、いい天気だ 」

太陽を遮るものはなにもないと、喜んで見ていれば辺りは明るくなり隆一は笑みを溢す

「 ……悪くないな 」

『 わっ……! 』

太陽が徐々に顔を見せることに、嬉しくなって彼の腕を掴み見ていれば、山はオレンジ色へとなり橋が見え、左右には海がある
本当にいいスポットだと思って見てから服を掴む

『 自撮り!自撮りしよ!ほら、ちょっと屈んで 』

「 それよりこっちがいいだろ 」

『 わっ……! 』

軽く抱き上げられ横抱きへとされれば、顔の位置は同じ高さになり
低くならないから、太陽も真後ろにある

逆光にならないようカメラを調整してから、自撮りをするために手を向けて二人でカメラを見てシャッターを押す

『 ヤバい、私…寝起きでブス…… 』

「 ならもう一枚 」

『 ん……わかった 』

朝日は綺麗だし、寝起きなのに隣の人はイケメンなのに……
そう思いながらなんか自撮りが嫌になりながら構えれば、隆一は軽く笑って頬へと口付けを落とした

『 っ……! 』

「 そっちの方が可愛い 」

驚いた私と口付けた彼の写真を撮ったことに恥ずかしくなり睨めば
態とらしく傾げてくるのがあざとい……

「 ん……バレンタインだろ? 」

『 うっ、このまま? 』

「 もちろん 」

抱っこされたまま、なんて…と思いながらチョコレートくれたし、今から運転も頑張って欲しいと思い、両手を頬に当て唇を重ねれば彼は片腕で腰と太股裏を支え
私の手からスマホを撮る、分かっているからこそ目を開けたくなくて何度も唇を重ねれば、シャッターの音は聞こえてくる

『 ふぁ、はずっ…… 』

「 十分。いいバレンタインになった 」

肩口へと顔を埋めれば、彼は髪へと口付けてから地面へと下ろした

「 よし、蓮に自慢して待受にしよ 」

『 待て!!消去を!!寝起きだし!!ノーメイクだし! 』

「 出逢ったときからノーメイクだろ。ほら、帰るぞ 」

逃げるように走った彼を追い掛けては、笑っていた

出逢う順番も好きになるタイミングも違うし変だけど、徐々に心は開いてるのが分かる

欠伸が移ると笑いあって、田舎過ぎてコンビニ無くてお腹すいたり、帰りはちゃんとカーナビ使って速く帰れたことに安心さえある

『 本当に仕事行くんだ? 』

「 当たり前だ、行ってくる 」

『 行ってらっしゃい……頑張ってね 』

私を家に置いてから、朝の十時半頃に仕事へと向こったタフ過ぎる……

『( 寝よ…… )』

その後は夕方まで寝てた

一方の隆一は……

「 寝るときに引っ付いてきてすげー可愛くて、寝れなかった……見てくれ、寝顔! 」

「 どうでもいいんで。徹夜でハイになった頭のまま仕事しないでください。間違いが悲惨 」

「 今日、帰ったら抱きたい 」

「 寝ろよ 」

蓮さんに自慢しまくって、怒られてたのは言うまでもない……

バレンタインに朝日?それもまたいいじゃないか


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