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二章 宝物捜索 編
04
しおりを挟むいつも、何処かに違和感があった
クララから与えられる、体罰も暴言も、
全て受け入れて応えようって…
何故か、思ってしまっていて
彼の心に向き合いたいって、知りたいって…
たった一度きりの、瞬きをしてる間の主とは違った、不思議な感覚がクララにはあった
『( ……もし、そうなら… )』
脚を止めて気を集中するように瞼を落としては、神経を研ぎ澄ませる
「 アルト、何をしてる。さっさと… 」
『 …次、左上からの毒矢のトラップ 』
「 ?? 」
何を言ってんだ?と言う顔をするクララに、
俺は魔法を軽く地面にぶつけた後に、言ったところから落ちてくる矢が出てくる直前に、防御魔法を発動させると、見事に的中した
それも今度は、貫通をしなかったんだ
『 出来た… 』
「 急に、どうした? 」
『 本能的な…なんというか、危機感知能力を優先してみたってことかな? 』
「 は? 」
俺自身は覚えてないかも知れないけど、
この身体には刻まれてるはず…
何度も、何度も…このダンジョンで、トラップに引っ掛かって、
その都度に…クララが傷つく様子を見てきただろう
だから、頭でどうしようって考えるより
本能的な危機感知能力に頼ってみようと思ったんだ
『 俺を信じきるのは難しいかも知れないけど、少しだけでも信じて。絶対に、クララを財宝が眠る場所まで連れて行くから 』
軽く尻尾を揺らすと、クララは目を細めて鼻で笑っては、背を向けて歩き出した
「 言われなくとも…俺は最初から、御前を信じている 」
『 !!( あぁ、そうだ…。クララは最初から、俺に出来るって信じてくれてる。神力が使えることも、トラップを回避することも…俺なら、このダンジョンを突破出来るのを信じてくれてるんだ! )』
だから、やれ…って命令するんだ
やれるから、俺なら出来るから!
不器用で、無愛想だけど…
本当はクルー思いで優しいことは知ってる
俺が、俺自身の能力を信じ切れて無かったんだ
自分が出来ないと思い込んでしまえば、出来るものも出来なくなるよな
『 やっぱり、クララはぶきよっちょだ! 』
「 ……不器用って意味なら…御前も相当だけどな 」
ふんふん!と鼻を鳴らし、クララより先に歩いて、トラップを回避したり、神力の使い方が少しずつ分かって来ると、魔物も容易く倒せるようになっていた
『 氷神飢狼!! 』
「「 !!! 」」
氷の姿をした無数の狼が、魔物に噛み付いた瞬間に凍らせて、砕いて倒していく
『 風鋭刃 』
「「 ギャァアッ!!! 」」
見えない鋭い刃の風が、数十体の魔物を切り刻み、塞がれた道が開かれる
倒し終えた後に振り返ると、クララは軽く口角を上げる
「 多少、神力を使えるようになって来たな 」
『 おう!でも…俺が神力を使うと、餌?の消費激しくないのか? 』
「 全く無い。神力は元々聖獣が持つもの。俺から与えてはない 」
『 なら…使っていても問題ないんだ! 』
「 神力がある限りな 」
それなら、どれだけ魔法を使ってもきっと大丈夫だと尻尾を揺らしては、クララが次の階に行く、扉を開いて、中にはいる
地下へと向かってるのだと思うけど、
感覚的にはそんな感じはしない
階段を降りてる訳じゃなくて、ずっと迷路のような、平ら道を進んでるんだ
『 クララ!次は右だ 』
でも、俺の中にある地図が
どっちの方に行けばいいか知ってるから、
最初より道に迷う子もなく、どんどん階を進んでいく
「 20層目……上級魔物の階だな 」
『 中ボスだな! 』
開けた場所に出ては、これからボス戦が始まります!って感じの重々しい大きな扉が現れると、クララは扉に片手を向ける
「 中ボスか、どうかは…此の扉の中次第だろう。神力を使えるようになったからと、油断するなよ 」
『 分かってる!どんな敵でも、倒す! 』
クララを見上げると、彼は笑みを溢して扉を開いた
魔法によって軽く開かれる扉の中へと脚を踏み込むと、背後で扉は閉まる
大広間のような空間に、辺りを見渡していると、クララは突然と、俺の身体を蹴った
『 ぐっっ!!? 』
横腹の痛みと驚きで、転がった俺は、文句を言う前に何かが俺達の間に通過した事に気付く
地面には亀裂が走り、クララはバク転して避けていたのか、攻撃は当たってはなかった
『 なっ、なっ…… 』
「 考える前に避けろ!!神•光線だ!! 」
『 っ!!( あの、光の速さで来る攻撃…っ!! )』
何処か焦ったようなクララの声に、俺は瞬時に態勢を立て直して攻撃を避けるも、自分が居た所に攻撃が来ていた事に亀裂で気付いた
『( あの海軍より速い!?な、どういうこと!? )』
「 アルト!!前方の上空に、照明弾を放て!! 」
『 お、おう!!! 』
取り敢えず、言われた通りに光の弾を発動して打つと、それは何かに塞がれるように壁が出来て、薄暗かった辺りは照らされた
そして、姿を見せた…
この階のボスに、俺は驚きを隠せなかった
『 な、なんで…… 』
「 思った以上に厄介だろ… 」
上空に立っていたのは、灰色掛かった毛並みを持つ、大きなフェンリルだった
そしてフェンリルの姿は、瞬く間に見覚えのある人型へと変わかる
『 俺…なのか…? 』
表情筋は死んでるけど、姿形は正に俺だった
それも、神の庭にいた頃によく似てる気がする
考える暇もないほどに、片手を前に出した俺の分身?によって次の攻撃が来れば、俺達は避けるしか出来なかった
『 ちょ、魔法陣無しなのかよ!? 』
「 彼奴は本来の御前の力を、最大限に引き出したコピーだ。使える魔法全てに詠唱が必要ないんだ 」
『 んな、羨ましい!!じゃ、攻撃速度では劣る俺は、どうやって勝つんだ!? 』
「 攻撃速度も、魔法の威力も、使い方も…全て劣るな… 」
『 じゃ、どうしろって…うおっ!? 』
いつの間にか、下から現れた氷の刃を避けると、次に風の刃によって、身体にあちこち傷が出来る
自分の攻撃を食らうことに、戸惑うより…
俺より使うのが躊躇無いし、速いから避け切れない
流石のクララも、魔法が使えない状態だから服の一部と共に身体が切れていく
「 どうも出来ない 」
『 は!? 』
「 ここで…勝てたことがない 」
『 今までの奴等? 』
「 違う。俺達だ…。俺は、御前が馬鹿みたいに時間を戻す、その全てを覚えているんだ 」
『 ……え 』
何を言ってんだ、と言いかけたけど…
向けられた攻撃を避けるのが精一杯だから、
口を開く隙がなかった
『 っ…じゃ、なんでまた…ここに来たんだよ!時間を戻せるってことは、宝の場所までは行けるんだろ!? 』
「 嗚呼、行くことは出来る。だが…その方法は、こいつに勝ったからじゃない 」
『 どういうことだよ…… 』
この向こうにある扉の先は、きっと次の階への扉だろうけど…
そこに行く為に、勝つんじゃないか?
「 俺の魔法を覚えてるか? 」
『 まぁ、何個か…闇属性魔法とか… 』
「 その一つに、別空間を創り出す魔法がある。あの御前のコピーが、それを使ったタイミングと、後ろの扉が重なった瞬間に入れると…運良く、此処の階から抜け出せる 」
そう言えば、クララが強くする為にって…
別空間を何度も使って修行させてくれたのは覚えてるけど…
それを、俺のコピーが使った時に…
意思的に入るってこと?
『 え、それ…大丈夫なのか? 』
「 成功してるから、時間を何度も戻ってんだろ。只…一つ問題があるとするなら… 」
『 なんだ? 』
「 御前がかなり頑張って…彼奴を追い詰めなきゃならない。別空間に引き込もうとしない限り、消耗戦が続く 」
『 おふっ…… 』
なんとなく分かった気がする…
でも、魔法が使えず防御が出来ないクララは、
彼奴からの攻撃を、交わすことしか出来ないって事だ
体力は魔人とはいえど…
長期戦になると、それも意味が無くなるのは察しがつく
だからといって…俺より強い、召喚士という枷のついてない、能力フルパワーの聖獣を弱らせるのは、かなり骨が折れるだろう
『 ガハッ!! 』
実際に…何度も折れた
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