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一章 聖獣への道のり編
12
しおりを挟む怒られた事に耳を下げれば
ブランシュは溜め息を付き、見せるようにその辺りの木へと近付き身体を擦り付けた
全身で二度擦ってから、同じく他の木にもやってから匂いを嗅ぎ戻ってくる
「 この世界は地形が変わりやすい。だから目印の木に匂いをつけねぇと寝床に戻れなくなる 」
『 俺の前でやっても気にならない行動なのに 』
「 ……元人間の御前に見せたくない 」
ん?果物を噛み砕く事には平気でも
木に身体を擦り付けてるのは見せたくないって
どういう心境の差があるんだろか
『 なんでだ? 』
何故?と傾げた俺に、ブランシュは背を向け歩き出し答えた
「 もう人の時のような感覚はねぇんだ。覚え方なんて匂いに頼るしかねぇんだよ。御前ならもっと別の方法があるんじゃねぇか? 」
人間としての時間の方が遥かに短く
記憶が僅かにある程度で、残りは獣としての時間で掻き消されたブランシュには
元の寝床に戻る方法も獣としてのやり方
そして砕くことに違和感がないのも、人間性が薄れてるからだろ
そう思うと彼が人間だった時を余り想像できなかったのは舐めまわすことも、吼えることも
その姿に慣れて違和感がないから
俺もいつか人間性が薄れ彼のようになるのかと
背中を見て思えば、揺れる尾に飛び付いた
「 いっ!なんだよ!? 」
『 人間性が強い俺は、もう既に迷子ってたから、地形が変わる、道なんて覚えれるわけない 』
「 ……あぁ、そうか 」
木に印を付けるわけもなく、匂いだけで地形が変わっても元に戻れるのは獣だから
人間がこの世界にいれば迷子になって此所はどこって状態だろ
『 だから、ブランシュは凄いって。家を覚えてるんだからな! 』
「 飛んだら一発で帰れるが、地上からなら匂いが頼りだ 」
『 飛べたりする? 』
「 俺をなんだと思ってやがる 」
最強クラスになったらなんでもありなんだなって納得した
『 じゃ、飛べばいいだろ!なんでずーと森の中を歩いてんだよ!? 』
「 御前が歩くの好きそうだったからだろが! 」
『 こんな短い手足で歩くの好きなわけないだろ!! 』
「 はぁ!?えっ、そうだったのか……? 」
『 毛並みが綺麗になったし休みたいぐらいだ! 』
そうだ、よくよく考えたら歩き回ってるのが可笑しいんだ
何処に行く予定も無くなったのなら、綺麗な状態で休みたい
今が何時かは分からないが、明らかに眠気が有るような気がするのに
歩き回ってるから寝れはしない
「 先に言え! 」
『 子犬だと察しろ! 』
「 言われなきゃわかんねぇよ! 」
『 なんでだよ! 』
「 雄だからだ!! 」
互いに吼えて告げたところで、ブランシュの言葉に身体は固まった
あぁ、そうか……男って俺もそうだが、言わなきゃ分からない生き物だ
元カノにフラれた時も" 察して! "なんて言われたときに" 分かるわけないだろ "と呆れて喧嘩してたのを思い出した
確かに子犬だと分かっていても、疲れてることも、果物が咬めないことも、腹が空いた気がするのも、言わなきゃ分からなかった
察するなんて出来ないのに求めても仕方無いってことに納得して、俯いた
『 ごめん…… 』
「 いや、俺が性別が残ってるだけだ…… 」
『 どういう事だ? 』
同じく耳を下げたブランシュの動作より
性別が残っていると言う単語に疑問になる
「 気付いてねぇのか?聖獣には性別がねぇんだぞ 」
『 えっ…… 』
気付かなかった、知らなかった
俺は自分の身体には雄に必要なものが、体格に合わせて小さくても付いてることに聖獣にも性別が有るのだと思ってた
『 私って言った子達にも!? 』
「 一人称は関係ねぇだろ…… 」
マジなのか、と驚く俺はミューやルナールがずっと雌だと思ってたことにショックだし
ロッサだって雄だと思ってた、確かに性別に必要な部分を確認してないにしろ……
『 えっ、じゃ…レイヴンは……? 』
「 人間の姿になりゃ雄みたいな見た目だが、性別はねぇな 」
『 イケメンお兄さんだったのに…… 』
「 繁殖する機能がねぇだけで、感性は寄ってたりするからその認識で間違いねぇだろ 」
繁殖する機能、だなんてサラッと言う事に
俺はじっとブランシュを見詰めた
『 子供いんの? 』
「 聖獣は繁殖しねぇよ。獣に孕ませて成り下がるわけねぇだろ 」
成り上がるの逆で成り下がる
聖獣を辞めることは出来そうだと言うことは何となく分かった
けれどそれはきっと" 成り下がり "と言うからには、繁殖ばかり一生懸命になる
獣と同レベルって事になるのだろう
気高い聖獣が好んでなるとは思えなかった
3
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