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一章 聖獣への道のり編

9話 魔法を覚えるらしい

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『 百華狼氷ひゃっかろう!! 』

「 雷電らいでん 」

暇潰し、そう思ってたはずのシロとの対決なのに
いつしかそれは本気で、戦っていた

神の庭には自身が持っている魔力分は常に回復するために、練習するには丁度良いのだが
相手はどんな時だろうが、暴れ足りない雷鳴の巨狼サンダーフェンリル
通り名すら無い、雑魚程度の低級聖獣の俺が勝てるわけも無く

冷気によって造り出した氷の狼達は向かって走り飛び掛かる瞬間、彼が片手を振った程度でその身体は粉々に粉砕する

やっと此処まで形にするまでにどれだけ、ファルクと練習したのかと考えると心が痛む
リリアの傍にいて、銀狼を蹴散らしてた程度では彼の本気なんて出てなかったと言う、現状のレベルの差にぶつかってる

『 ハァー……俺の、恋人……強すぎ…… 』

時の無いこの世界、休むタイミングは確かに無くて
久々に力を発散できるシロは楽しそうに口角を上げ
揺れる鎖を鳴らし横に向けた手を真上へと上げた

「 落雷天狼らくらいてんろう 」

『 っ!!氷壁狼ひょうへきろう!! 』

落雷の姿が狼の形を成した、雷は落ちてくれば身を守るために、氷の壁を真上へと作り出すも簡単に割れ身体へと降り注ぐ

『 グァッ!! 』

「 雷も防げないとか、御前の強度はその程度か? 」

落ちてきた雷に当たって平気なのは聖獣だからだろ、もう俺は何回死んでても可笑しくないぐらいやられてる

身体の皮膚は燃えるように熱く、倒れた身体の傷が回復する感覚に息を吐き
人の姿の彼は呆れたように溜め息を吐き上げていた手を降ろし、問い掛けてきた

「 止めるか?人間界で成長しない限り、御前はまだまだ魔力が足りない 」

主を得て、その人と共に魔法を覚えない限り此処では少し魔法形や、大きさを変える程度しか出来ない
それは魔力の量が決められてるからであり、人の様に成長する伸びしろが無いからだ

聖獣を強くするのは召喚師次第、どんなに此処で足掻いても強くなれない
魔法の使い方を勉強するだけの俺に、シロが無駄だと言うのも分かる 

それでも……俺は、強くなりたいんだ

『 くっ、氷河牢ひょうがろう! 』

「 砕雷さいらい 」

彼を捕らえるべく氷の牢は、彼の体から放つ電流によって砕けた
あの錬金術師やキマイラすら逃れることが出来なかった氷の牢なのに、シロには無意味だと言うこと……

『 あー!卑怯だ!チートだ!強すぎる!! 』

「( ちーと? )……仕方無いだろ。御前と生きてる時間も経験もちげぇんだよ 」

起き上がりお座りした俺は、狼の声で吠えて文句を言えば、シロは休憩とばかりに魔法を解除するように獣の姿へとなり、俺の方へと歩いてくる

『 人間の時じゃ、世界大戦と俺がいた時代は、此処より進んでなかったもん。此処、時間経つの早すぎ 』

「 それは御前が来て思っていたが、住んでた世界が違うなら、そんなもんだろ 」

神の庭と人間界が違うように、やって来た此所は俺がいた世界とはまた時間の流れが違う
シロと生きた年度は違うが、歴史で考えるとそんなに年は流れてない
だが、ルイスからファルク迄の月日がかなり経っていた

世界の雰囲気は変わること無く、時間だけが経過する人間界、流石異世界と納得するしか
深く考える気はない

「 怪我は痛むか? 」

『 もう平気だ 』

どんなに力比べしても、最後は必ず身体を気遣うように頬へと舐めてくるシロに
まだライフから貰った腹のことは伝えてない 
きっと言えば、過保護なコイツは攻撃するのすら嫌がるだろうし、俺が召喚される度にストレスになりそうだから
ギリギリ迄言わないことにしたんだ

「 そうか…… 」

『 俺はっ!! 』

「 っ、ん……? 」

シロの肩へと両手を当て、そのまま彼の腹を見せるように倒せば上へと乗っかり見下げては、告げる

『 心配されないぐらい強くなる、だから……もっとかかってこい! 』

「 …… 」

『 どうした? 』

見下げてる俺は、目を丸くしてから固まってるシロに首を捻れば
イケメンウルフは横へと顔を背け、耳を軽く下げた

「 いや、久々に押し倒されて興奮した…… 」 

『 基本的に、そっちに持っていく脳内変換すごいな 』

「 ふふっ、可愛い御前が悪い 」

顔を上げ、頬を舐めたシロは身体を動かし
下から退けば走り出した
何となく追い掛けたくなるのは獣の本能で
その後ろを追い掛けては、身体に体当たりしたりすり寄れば、彼もまた頬を擦り当ててくる

『 シロ…… 』

「 ん? 」

少し先を歩く彼に、俺は自身の手足を見て思う 
獣であり、人間になるには月が出てる時しか無理だ
だからこそ、どっちが好きなのか気になった

『 俺が……!! 』

「 コウガ?あ、またか…… 」

『 呼ばれたから行ってくる 』

「 っ、分かった。行ってこい 」

話しはまた帰ってから、覚えてたらにしよう
そう思って足元に現れた魔法陣に身を委ね、新たな主の元へと召喚された

次はどんな人だろう、ファルクやっと新しい生命へとなったんだなって思い光と共にうっすらと目を開ければ

鼻に付く焼け焦げた匂いと、酷い血の匂いに目を見開いた

こんな時に、召喚されるなんてあるんだな……

「 たす、けて……くれ…… 」

『 っ!! 』

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