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一章 聖獣への道のり編

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聞こえてきた声に獣の耳は動き
優しく首から背中にかけ触れる手の感触は
長く傍に居たルイスと良く似ている

あぁ、ルイス……おかえり

心の中で呟いてはもう少し寝ようかと考えるも
よく考えたら俺は人間界に居て、フリーレンと言う魔法使いに出逢い、そして此処まで来たのだと思い出し目蓋は開き
うっすりと光る白銀の雪景色に、此所まで白かったけ?と疑問になりながら、首を持ち上げ触れる相手へと顔を向ければ
彼は火傷をおった顔を向け、それ以外は整った外見は口元に笑みを浮かべる

薄くほんのりと色づいた桃色の唇へと、考える事もせず舐めれば、僅かに驚いたフリーレンは俺の頭へと手を置く

「 おや、起きたようだな。随分と寝てたようだが、走らせたのが堪えたか? 」

『 いや……少しいい気分だった 』

疲れてはない、只フリーレンの傍にいる事が懐かしくて心地好く
やっぱり俺はペット同然の飼い犬へと成り下がってる事をどこか実感して、それが嫌な訳ではなく
" 主 "と言う人間を覚えてることに嬉しくなってるのだ

俺はずっと家族が家に居なかったから、きっと傍にいる家族同然の人間が好きなのだろ
聖獣であるシロとは違った、感情をノアの魂に持ってると思う

「 そうかい、俺の傍が嫌ではないのなら良いが 」

『 嫌な訳あるか、寧ろ気持ち良すぎて役目を忘れていた 』

起き上がりグッと腕を伸ばし、腰を持ち上げて背伸びをし、辺りへと視線を向ければ
嬉しそうに笑みを溢すフリーレンを他所に、寝る前まであった川の向こうの青々とした木々や草花に雪が積もって、水は半分氷始めていた

「 ふむ、俺の傍に居てそう言うものは初めてだから、嬉しいものだ 」

『 そう…… 』

ならいいと返事をするも、俺はこの光景と彼が言っていた大気までの影響は無いにしろ
凍り付かせてる事に気付いてないのでは無いかと思った
白銀の雪景色に浮くその服装は鮮やかで、装飾こそ光輝いているも
彼が立ち上がる時に触れた木は凍り付き、その生きる時間を止めたように見える 

「 さて、行こうか。我が家に帰ろう 」

『 えっ、我が家があるのか? 』

「 そりゃあるさ。人には見つからないよう隠してる我が家がね 」

木の事や辺りを聞く気は無く、視線を戻せば当たり前のように告げた家に帰るって言った言葉
キョトンとして驚く俺は素直に問いかける

『 なんで、直ぐに帰らなかったんだ? 』

「 腹が減っては戦は出来ぬ、と言うように疲れてたのでな。休憩したのなら動けるものさ 」

『 あぁ……なるほど……? 』

納得していいのか分からないが、きっと彼なりにあの場所にいたら帰る為の魔法が使えなかったのだろう

唯一、血で画いた魔方陣だけは発動できたようで此処に来て火を起こす事も魔法を使っている

もし出来ていたのなら囚われては無いだろう

脱獄した、と思われる前に逃げることすら容易かったと思う

それを聞くのは" 聖獣 "の俺には必要ない

「 冷たく氷る地の果てに、故郷を隠す白銀の地、人の眼が届かぬ霧の中、開け…… 」

魔法を唱えることで彼の足元には三重魔方陣が現れ、其々バラバラに動き、まるでロックを解除していくかのように
見た事の無い文字が重なり、動いていた魔方陣はピタリと止まった

「 我が家の扉レジダンス・ポルト 」

青く光る魔方陣に目が眩み、隠れるようにフリーレンの影の中へと入り

地面の中へと埋まることもなく、辺りは霧に包まれ、ふっと晴れたように消えれば
其処は先程の雪に覆われた場所とは違い、緑豊かな場所だった

「 到着。やっぱり腹が満たされてると一発だ 」

イギリスの様に、赤いレンガ(ダブルブロック)で造られた家は煙突もあり、広々とした外見の外には見たことない植物の蔓が巻き付いている

魔法使いの家だからもっとこじんまりとした小さくてボロ屋敷とか、氷の魔法使いって言うから氷の城とかでも想像したが
彼の家は、暖かみのある場所だった

「 ほら、帰ろう。一人暮らしだから誰もいない。それに掃除もしなくてはならないからな 」

『 あ、おう!手伝う! 』

「 それは心強い 」

助かると笑ったフリーレンの後を影から出て着いていけば、扉を苦戦すること無く開けた
中はやっぱり外国の家のようで、壁は真っ白で氷の結晶画かれた壁紙が貼られ手入れがしてるように
花瓶には花があり、カーペットは奥まで続いている

「 では、止めていた時間を進めるとするが……どうなってるのか分からないから教えてくれよ? 」

『 お、おう…… 』

扉を閉めた後に、彼は指を鳴らした
次の瞬間に俺達がいた場所から全てが壊れ初め
綺麗だった内装は劣化した様に朽ち果てていた

余りの変わりように唖然となった俺に、彼は告げた

「 約二百年近くは帰ってきてないから驚くだろ?此を片付けて欲しいのだが…… 」

『 二百年……あ、片付ける!でも獣の姿だから拭くことしか出来ないかも 』

「 ふふっ、十分よ 」

二百年、それは人が生きるには余りにも長いと思うが
彼はこの家のように生きてる時間すら止めたのだろうか
其とも魔法使いは長生きするのか?
分からないことに、頭が混乱するも今はクモの巣とか変な妖精がうようよいる事に気を向ける

「 では、獣らしく住み着いたものを追い払って貰おうかな 」

やっぱり俺は、その役目らしい

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