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一章 聖獣への道のり編
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~ シロ 視点 ~
今回は永くいるのだろう
前よりも暇な時間が流れてる気がする
傷はないか、俺の魔力を必要として無いか
それだけ考えながら寝たり起きたりを繰り返し
ベッドにいるのもつまらなくなり、外へと出た
「 月が昇る日は、彼奴が人の姿になる時だな 」
ライフに頼めば月など幾らでも出し続けて貰えるだろ、だが彼奴は其を知らないのか
それとも必要と感じてないのか、月が出ていても獣になってるときもある
其なのに大人になりたいとばかり言っては、ふてくし騒いで、また寝てるんだ
本当に騒がしい奴だと笑ってみていたが、いないとその寂しさを感じる
「 っ、ゴホッ…… 」
洞窟の中を外へと向け、歩いていれば吐き出した血と、痛む身体の部分を感じては口角は上がる
「 何か、やったな…… 」
当たって碎けろの精神、それが良いように思えるときもあるが、大半の戦闘は中距離から遠距離、接近戦を鍛えるよりずっと効率が良いのだが
彼奴はきっと、そんな事を考えず覚えやすい魔法から覚えていくに違いない
その単純な部分がまた、愛らしいと何度思ったことか……
「 ハァー……不出来な恋人が、主を困らせてないといいのだが…… 」
地面を赤く血で汚しては、前足を動かし一歩、一歩歩いていく
人間界にいるコウガと同じタイミングで治るのだろう、此処にいるときより治りが遅く感じる
割れた地面から、彼奴が良く行く岩の上まで行くように、飛び上がり空へと走る
「 まぁ、彼奴の事だ……仲良くやっているだろ 」
傷が治り、月を前に岩の上へと降り立てば
幾度と無く感じる痛みに呆れながら横たわる
「 もし俺が、召喚でもされたなら……俺の主の方が驚くだろうな……」
自分の召喚した聖獣が、理由も分からず怪我したのなら驚いて争いすら出来ないかもしれない
それでもいい、主になる人よりも彼奴が好きで仕方ねぇんだからな……
此処にいれば辺りを見渡せる為に、彼奴が帰ってくるまで待っていてやろうと
目蓋を閉じ寝ようとすれば、金具の揺れる音と気配に首を持ち上げる
「 ライフ、御前から来るなんて珍しいじゃねぇか。なんだ? 」
「 たまにはな……。少し、御前に伝えなければならんことが出来たようだ 」
「 なんだ? 」
改めた様な態度に、ライフは地面へと立ち
月へと視線を向ければその横顔は珍しく悲しげに眉を下げていた
「 あやつの主なんだが、魂を呪われててな……その事で氷牙は重い宿命を背負うことになった 」
俺に言うってことは、俺の怪我を受け入れる頻度が増えるとでも忠告したいのか
それとも何か別の理由があるのかと言葉を待てば、ライフとの視線は絡んだ
「 御前との子は諦めた方が善いかもな 」
「 なぜなん……だ、っ……!! 」
何故なんだ!?そう問い掛けた最中に、感じた腹の激痛、ボタボタと落ちた血痕に驚くより
僅かに注いでいた魔力を失った事に目を見開く
「 まさか……そんな…… 」
「 人よって、御前達の子は奪われた 」
「 ふざけ……な……、ふざけんな!! 」
吠えるように空へと声を上げ、鳴り響く雷鳴と共に落雷は幾つも落ちてゆく
嘘だと言って欲しい、今の彼奴から与えられて喜んでたばかりの子ですら取られたら
その脆くなった心は砕けてしまうだろ
「 人の子、誰だ……。誰なのかしってんだろ!? 」
「 闇に染まった錬金術師だ。言えるのは此処までだ……。我が子達よ。その残酷な宿命を背負い、巡り合う主と共に幾度と無く生きてゆけ 」
言うだけ言って姿を消したライフに、文句の一つも言えなかった
降り注ぐ雨が身体を濡らし、涙よりも胸に感じる悲しみはきっと彼奴から流れ込んでくるものに思えた
「 コウガ……。子はいい、また考えよう。だから、だから……帰ってきてくれ……俺の前で泣いてくれ…… 」
人間界で泣いている彼奴を思うと、俺は壊れる大気を止める事など出来なった
吠える度に地鳴りは響き、落雷は落ち、森は燃え、雨によって新しい川が生まれる
ライフが片付ける気になるまで、此の辺りの地形は変わっていく
泣くのは俺じゃないのに、空はまるで泣いてるように長く雨を降り続けた
それは……コウガが帰ってくるのが遅いという事でもある
何故だ、まだ主は生きてるのか……
なら御前は、平気なのか……
気になって眠れる時など一時も訪れはしなかった
今回は永くいるのだろう
前よりも暇な時間が流れてる気がする
傷はないか、俺の魔力を必要として無いか
それだけ考えながら寝たり起きたりを繰り返し
ベッドにいるのもつまらなくなり、外へと出た
「 月が昇る日は、彼奴が人の姿になる時だな 」
ライフに頼めば月など幾らでも出し続けて貰えるだろ、だが彼奴は其を知らないのか
それとも必要と感じてないのか、月が出ていても獣になってるときもある
其なのに大人になりたいとばかり言っては、ふてくし騒いで、また寝てるんだ
本当に騒がしい奴だと笑ってみていたが、いないとその寂しさを感じる
「 っ、ゴホッ…… 」
洞窟の中を外へと向け、歩いていれば吐き出した血と、痛む身体の部分を感じては口角は上がる
「 何か、やったな…… 」
当たって碎けろの精神、それが良いように思えるときもあるが、大半の戦闘は中距離から遠距離、接近戦を鍛えるよりずっと効率が良いのだが
彼奴はきっと、そんな事を考えず覚えやすい魔法から覚えていくに違いない
その単純な部分がまた、愛らしいと何度思ったことか……
「 ハァー……不出来な恋人が、主を困らせてないといいのだが…… 」
地面を赤く血で汚しては、前足を動かし一歩、一歩歩いていく
人間界にいるコウガと同じタイミングで治るのだろう、此処にいるときより治りが遅く感じる
割れた地面から、彼奴が良く行く岩の上まで行くように、飛び上がり空へと走る
「 まぁ、彼奴の事だ……仲良くやっているだろ 」
傷が治り、月を前に岩の上へと降り立てば
幾度と無く感じる痛みに呆れながら横たわる
「 もし俺が、召喚でもされたなら……俺の主の方が驚くだろうな……」
自分の召喚した聖獣が、理由も分からず怪我したのなら驚いて争いすら出来ないかもしれない
それでもいい、主になる人よりも彼奴が好きで仕方ねぇんだからな……
此処にいれば辺りを見渡せる為に、彼奴が帰ってくるまで待っていてやろうと
目蓋を閉じ寝ようとすれば、金具の揺れる音と気配に首を持ち上げる
「 ライフ、御前から来るなんて珍しいじゃねぇか。なんだ? 」
「 たまにはな……。少し、御前に伝えなければならんことが出来たようだ 」
「 なんだ? 」
改めた様な態度に、ライフは地面へと立ち
月へと視線を向ければその横顔は珍しく悲しげに眉を下げていた
「 あやつの主なんだが、魂を呪われててな……その事で氷牙は重い宿命を背負うことになった 」
俺に言うってことは、俺の怪我を受け入れる頻度が増えるとでも忠告したいのか
それとも何か別の理由があるのかと言葉を待てば、ライフとの視線は絡んだ
「 御前との子は諦めた方が善いかもな 」
「 なぜなん……だ、っ……!! 」
何故なんだ!?そう問い掛けた最中に、感じた腹の激痛、ボタボタと落ちた血痕に驚くより
僅かに注いでいた魔力を失った事に目を見開く
「 まさか……そんな…… 」
「 人よって、御前達の子は奪われた 」
「 ふざけ……な……、ふざけんな!! 」
吠えるように空へと声を上げ、鳴り響く雷鳴と共に落雷は幾つも落ちてゆく
嘘だと言って欲しい、今の彼奴から与えられて喜んでたばかりの子ですら取られたら
その脆くなった心は砕けてしまうだろ
「 人の子、誰だ……。誰なのかしってんだろ!? 」
「 闇に染まった錬金術師だ。言えるのは此処までだ……。我が子達よ。その残酷な宿命を背負い、巡り合う主と共に幾度と無く生きてゆけ 」
言うだけ言って姿を消したライフに、文句の一つも言えなかった
降り注ぐ雨が身体を濡らし、涙よりも胸に感じる悲しみはきっと彼奴から流れ込んでくるものに思えた
「 コウガ……。子はいい、また考えよう。だから、だから……帰ってきてくれ……俺の前で泣いてくれ…… 」
人間界で泣いている彼奴を思うと、俺は壊れる大気を止める事など出来なった
吠える度に地鳴りは響き、落雷は落ち、森は燃え、雨によって新しい川が生まれる
ライフが片付ける気になるまで、此の辺りの地形は変わっていく
泣くのは俺じゃないのに、空はまるで泣いてるように長く雨を降り続けた
それは……コウガが帰ってくるのが遅いという事でもある
何故だ、まだ主は生きてるのか……
なら御前は、平気なのか……
気になって眠れる時など一時も訪れはしなかった
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