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二章 宝物捜索 編

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誰か描いたかは分からない絵画は芸術的に素晴らしいが、どんな意味があるのかは、流石に分からない
そして、天井に描かれた白竜ホワイトドラゴンの姿はまるで、この城を現してるように見える

『 歴史っぽいな…… 』

「 おや?此は聖獣……? 」

『 ん?コカトリス? 』

「 誰が家畜のコカトリスですか! 」

聞こえてきた声に視線を向ければ其処には分厚い本を五冊ほど片腕に抱いて持っている、あの獣人のセバスチャンが居た
パッと見た目、コカトリスがもう少し進化を遂げたように見えるのだから仕方無い

鳥っぽい謎の首の動きはしないが、それでも近くで見れば鳥らしい
彼は歩いてくるなり、溜め息を吐き首当たりを鋭い爪で掻く

「 獣人を見慣れないんですか? 」

『 まぁ、余り主以外とは関わらないし 』

目の前に来た彼は予想外にでかくて、百六十五㎝前後の俺だとしてもヘソ辺りにある燕尾服の釦位置が目線の先
見上げるように首を上げれば、見下げてきたセバスチャンの表情は案外イケメンワシだ

「 そうですか、獣人は数は少ないように思えますが、この世界のあちこちに居ますよ。私は代々王家に支える専属ですが、鳥族は多く居ます 」

『 今は人間と生存できてんの? 』

「 さぁ、どうでしょう。どの時代も獣人から人間には関わりを持ちませんので 」

出逢うのは捕らえられて奴隷にされた獣人だけ、ふっとネロの事を思い出すが、彼奴は奴隷だったのかも分からないな
他にもアンドリューとかも獣人だったのだが、俺が見てきた彼等はどの者も優しかった

「 五分五分でしょうね 」

『 そう……そう言えばこの天井の絵の意味とかあるのか? 』

まぁ、獣人なんて俺の方からも関わる必要はないからそこまで気にならず、話を変えて天井の方へと指を向ければ彼は同じく上を向き答えた

もっと、そうです!!なんて大きな声で返事をするのだと思ったが、案外兄弟の前以外は落ち着いてる様子だ

「 えぇ、この国を長年守る白竜ホワイトドラゴンですよ。四年に一度の白夜の年、世界に夜が訪れない日……国で一番の力自慢と闘うんです 」

『 闘うのか? 』

白夜の日はルイスやファルクの時に経験してる

夜が来ないから、いつ寝るのか分からなくなると笑っていたのを覚えてる
その時は、竜と戦うなんて事をしなかったのだがこの国では竜が守ってるのか

「 手合わせ程度、白竜にとって本気では無いですが、人がドラゴンと戦うには相当な力が必要なので、白夜の年の前はトーナメントをしたりします 」

片手を天井へと伸ばし、物語を語るように其々の絵柄の意味を含めて話し始めた
その言葉と共に、天井へと顔を上げ見る

「 月が隠れる日、白銀の竜現れし、闇と邪神は消えさり、人々の心は幸福に包まれる。国を護るに必要か見定めるべく、白銀の竜……ヴァイスシルヴァーは天から舞い降り、勇者と力比べをする……勇者が勝てば四年間は国に平和が訪れ、負ければ災害が多い……と言う歴史です 」

『 災害な……護らなくなるからか? 』

「 いえ、それは只の迷信で勝っても負けてもヴァイスシルヴァーは次の四年年後まで来ないだけです 」

絵本の絵が天井に有るように、全てに意味があることを知ったが
四年後に戦って、勝っても負けても結局は余り変わらないって事に疑問になれば
それを答えたのは、背後からやって来たソレイユだ

「 ドラゴンは古代から悪戯好きだったんだ 」

『 ソレイユ…… 』

ちょっと若々しい声に振り返れば、俺と同じ身長位の少年になった姿で、鎖を揺らす音を立てては天井を見ながら言葉を続けた

「 人に悪さをするつもりはねぇが、ちょっと暴れたい時もある。そんなときに、四年に一回でも闘技場で力を発散すれば、暴れる必要が無いわけだ 」

『 あぁ、そう言うこと 』

「 えぇ、ドラゴンとどう共存して生きるのか考えた結果。一番最初にこの国はドラゴンと四年に一度手合わせをすることにしたのです 」

『 あ、俺……勇者とドラゴンの話知ってるわ!なんか、聖獣が現れた事も絵本で見た! 』

ノアに見せてもらった絵本が、共存が出来なくて
暴れまわり、聖獣が追い払った話だったと告げた俺に、ソレイユは天空から目線を落とし溜め息を漏らす

「 その話しに出てくる、聖獣。俺だからな 」

『 へぇ~……えっ!? 』

「 !!? 」

「 色々諸説有り、になってるし時代と共にドラゴンの色も聖獣の能力も変わって絵本が出てるが、ドラゴンを追い払ったのは俺さ 」

流石にセバスチャンも驚いたのか、顔は顎が外れたように大きく開いていたが
俺もまたノアの時に見た、絵本に出てきた聖獣がずっと傍に居たフェンリルなんて分かるはずもない

「 俺もまだちいせぇから、んな姿をしてねぇウルフ程度だったんだよ 」

深く聞きたいとばかりに目を輝かせた俺に、本が多くある図書室へと移動した

其処には沢山の本があり、セバスチャンは一番古くて本家に近い本を持ってくれば
それを開きながらソレイユは話す

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