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二章 宝物捜索 編
08
しおりを挟む大気中に残る冷たい空気によって、普段よりずっと早く冷気が集まれば、大きな大輪の花が町の彼方此方に咲いた
イメージはクリスマスローズ
冬にはぴったりの花だと思うからこそ、様々な咲き方のあるクリスマスローズ風に、
色んな方向に花が咲いたのを見れば町の住民もだが、海軍も騒ぎ出した
「 敵襲か!? 」
「 魔道士か!?探せ!! 」
「 セイブル•デァ•トート海賊団の連中はどこだ!? 」
花を楽しむ住民とは違い、海軍は必死に花の方へと行き、辺りを見渡して魔法を使った者や海賊を探す様子は滑稽だと思う
『( ふはっ…前の主が、騎士側だったのに…こっち側も悪くねぇな )』
「 ほら、見てないでもっと騒ぎを起こすぞ 」
『 はぁーい 』
馬では無いのだが、合図のように軽く腹を蹴られた為に仕方なく傍観を止めて、海賊船から離れた場所へと行き、そこで音を立つ魔法をやっていく
『 ほら、行くぜ~!氷狼!! 』
「「 ぎゃぁぁあ!!? 」」
町中を掛け走る数体の狼の姿をした氷に驚いて逃げる住民や戦おうとする海賊、それを見た後に違うところでも魔法を使う
『 二重複合魔法…… 』
「 …もういい 」
『 雷…… 』
「 止めろ、アルト!! 」
『 !!! 』
もっと大きな魔法を使ってやろう
そう思った瞬間に耳を引っ張られながら、彼に付けられた名前を呼ばれ身体は硬直し、現れていた魔法陣は消えて無くなった
『 なんで止めるんだよ? 』
「 十分だ。これ以上やると死人が出る。…戻るぞ 」
もう少し遊びたかった…そう思うけれど、主人の言葉は絶対の為に、
残念そうにしてからその場から背を向け、海賊船へと戻った
その間、クララは一言も口を開く事はなかったんだ
「 キャプテン!お帰りなさい! 」
「 全員戻ってるか? 」
「「 はい! 」」
甲板に飛び降りるなり、クララは背中から下りてクルー達へと指示を出し始めた
クルーの殆どは俺が氷属性ってのを知ってるから、現れた氷花については驚きはしないのだろうな
「 ならいい。船はどこまで修繕で出来た? 」
「 全体の三割ぐらいっす 」
「 なら仕方ない。この島の裏に船を回せ。そこで修繕を急ぐ 」
「「 アイアイ!! 」」
こういう時、俺は人間じゃないから彼等が動くのを只見てるだけになる
『( 買った服…後でいいか )』
こんな状況で服を買ったから配る!なんて馬鹿な事を言ったら、それこそ彼等の邪魔になるから、俺は隅っこで見てるしか出来ない
「 キャプテン。島の裏には、魔物が生息してるらしいです。それもかなり… 」
「 問題無い。肉調達と思えばいい 」
「 それもそうっすね! 」
魔物を食べるのはいつの時代も変わらないな…
そう呑気に思いながら、遠く離れる港を眺める
『( つまらないな…。シロの元にいたい )』
もっと魔法を使って遊びたい
シロの傍で修行してた時の方が、つまらないなんて思う時間が無い程に忙しなかったし、楽しかった
人間界とはこんなにつまらないものなのか…
『 くぁっ~ 』
大きな欠伸をしていれば、クルー達と話を終えたクララが俺の名を呼んだ
「 アルト、来い 」
『 ん?あ~い 』
呑気に返事をし、腰を上げて彼の元まで歩いて行き顔を見上げれば
その表情は暗く、気づいたら彼の着ていたコートは大きく揺れた
『 !!?? 』
真横に来た影と共に横腹に感じた衝撃のまま、獣の身体は吹っ飛んで旗を支える柱へとぶつかり、太い柱は半分程砕けた
「「 キャ、キャプテン!?なにしてんっすか!!?? 」」
『 ゴホッ……( 蹴られた…?なんで? )』
蹴られた事に理解出来ず、氷の破片となった身体の半分が再生されながら、踵のある靴を鳴らして歩いて来るクララへと視線だけ向けた
「 俺は危害を加えていいと命令した覚えは無いぞ!!目立てとは言ったが、住民が怪我をする様な魔法を使うなんて…テメェは飼い主の命令すら聞けない駄犬なのか!? 」
『 …………は?( 怪我はさせてないじゃん )』
目立てと言われたから、魔法を使っただけ
其れなのに、危ないからって怒鳴るのか?
……矛盾してね?
『 …海賊のくせに…ギャーギャー喚くなよ 』
「 あ? 」
『 目立つ魔法は、其れなりのリスクもある。だが、誰も怪我してねぇじゃないか 』
「 本気で言ってんのか? 」
『 本気さ!怪我なんて… 』
させてない、と断言出来るだろうか?
町の彼方此方に氷狼を走らせて、氷花を咲かせて、落雷を落としたりもしてた…
それ以外の魔法だっていくつかしてたけれど、俺は全てに目を配ってはいなかった
視線を町から、クルーへと向ければ数人は顔を背けたし、中には頭から血を流したり、腕を怪我してる者もいた
「 屋根が落ちたり…壁が崩れて下敷きになったもの。瓦礫が飛んできた時もあった… 」
「 でも…海軍から逃れる為に仕方無いのかなって… 」
『 なっ!? 』
「 仕方ねぇって言葉で、人を怪我させていい訳ねぇだろ 」
見てない場所、見えなかった場所で怪我人がいた…
其れもクルーや海軍だけじゃなく町の住民達もってことなのか?
驚きを隠せない俺に、クララは見下げたまま冷たい瞳を向け言い放った
「 聖獣とは人を守る為に力を貸す存在だろ。御前はまるで…魔物だな 」
『 !!! 』
聖獣である俺が…魔物?
そんな馬鹿な、話があるかよ
闇落ちなんてしてないし…
「 俺は、魔物を召喚したつもりはない 」
そう告げたクララは、背を向け船内へと入って行く
取り残された俺に声を掛ける者はいないし、寧ろ誰の声も耳に届かなかった
『( 役に立とうとした事が、魔物と同じって言うのか?なら俺は…如何したらいいんだよ )』
力の制限は出来ていたはず…
なのに、思った以上に怪我人が多く出たのは、俺ではなく…
この流れ込むクララの魔力量のせいじゃないのか…?
『( 貰うだけ貰って使っていたら…普段の倍は力が強くなる。なら、どうしたらいいんだよ… )』
聖獣は、契約した主から魔力を貰うことで力を貸す
餌を貰うから働く動物と同等だが、
空腹なら力が出ないが、常に満腹なら底知れない力は出る
俺は今、満腹状態の獣と同じ
例え、力を制限する枷が付いていたとしても……
『( あれ、ジョセフと戦う時に魔力解放したから……無いんじゃ? )』
不意に顔を上げ、付いてるはずのピアスへと意識を向ければ、
其処には確かにあったはずのものが無くなっていた
『( だから俺は…制御出来てないのか!? )』
ピアスが付いていたときは力加減をしなくても勝手にしてくれていた
だが、無いのなら前みたいに魔力を無駄に使うだけ
『( また一つ、課題が増えた…。魔力制御なんて… )』
やっと理解した時には、しゅんっと耳を下げて落ち込んでいた
クルーや住民に、なんてことをしたんだ…
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