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二章 宝物捜索 編
9話 やり直せるらしい
しおりを挟む゙ 起きて ゙
優しい声で、誰かに起こされた感覚がして、重い瞼を持ち上げて、大きく猫のように腰を持ち上げ、両手をめいいっぱい伸ばして背伸びをする
『 ふぁ~……。あれ、俺…いつの間に寝てたっけ?確か… 』
夢の中で俺を起こしたような人物は周りにはいなくて、ふっと視線を辺りへと送りつつ、首元の毛を後ろ足で掻く
「 アルト。御前…ノミやダニでもいるのかよ。キャプテンが不機嫌になるぜ? 」
『 へ?聖獣にダニなんて付くわねぇだろう。クセだよ、クセ。特に意味はない 』
名前を知らないクルーの言葉に否定して、おすわりをしてもう一度辺りを見渡す
「 聖獣とは言えど、獣だな 」
『 …どうせ犬科だよ。てか…今何してんの?( 俺は不貞寝してたはず… )』
呼ばれるまで待ってやる
そう、不貞寝をしようと決め込んだのに、誰かに起こされた気がするから時間の感覚が曖昧で、彼等が作業をしてるのは察することが出来ても…
なにを、までは理解できなかった
「 あ?見てわかんねぇのかよ。船の修繕だわ 」
『 船の修繕……は!!島の裏か! 』
「 御前…。さっきまでちょこまか動いてたばかりじゃないか。変な夢でもみたのかよ 」
『 え……。そうだっけ? 』
この目元が隠れるまでにヘアバンダナを着けた、茶系の髪をしたクルーの言葉に、キョトンとしては首を横へと倒して、彼を見詰める
『( 確かに…板を担いでる。あれ?って事は俺は…そんな数日分も寝てない? )』
聖獣が寝れば、次に呼ばれて起きるまでに、数日経過しても可笑しくない
それなのにあの不貞寝から、ほんの数十分も経ってない事に違和感を覚える
『 別に……。夢なんて、見てないけど… 』
「 そうかよ。なら働きたいなら働かせてやる。そこにある板を運んでくれ 」
『( 別に働きたいわけじゃないけど… )そこ?あ……これ? 』
役に立ちたいだけであって、労働をするつもりはない
けれど、このクルーが向けた視線の方を見れば、いつの間にか俺の近くに二m近い板が積み重なっていた
『 ……分かった!運んでやろう!こういう時こそ役に立つ。長寿の知恵というのを見せてやろうじゃないか! 』
「 何をする気だよ……( 変なことしたら、またキャプテンに怒られるぜ… )』
彼の様に、肩に担いで運ぶ気は更々無い
台車を氷で作るべく、足元を凍らせ目の前に氷像を出す
『 この位、唱えなくても簡単さ! 』
「 おぉ…… 」
ちょちょいのちょいっとばかりに、長いものでも運べる氷の台車と狼を作れば、人の姿へとなり、せっせと板を乗せる
『 さぁ!俺の分身よ!!運ぶのだ! 』
「( なんか、能力の無駄遣いしてね?……まぁいいか、楽そうだし )」
ビシッと指先を彼方へと向ければ、吠える素振りを見せた氷の狼は、台車を引くように歩き出す
『 どうよ。俺ってちょっとは役に立つだろ? 』
「 はいはい。そうですね 」
『 んだよ。もっと褒めてくれてもいいのに…。てか、この文明の利器を見てなんとも思わないわけ? 』
「 そんなもん、幾らでもあるけど誰も使ってねぇだけ 」
クルーと共に歩き、片手を狼と台車に向けるも、さらっと言われたことに目を見開く
『 使って……無いだ、と……!? 』
何故一度に、多くの物を運べる台車を使わないのか驚いて立ち止まれば、彼はくるっと向きを変えた
『 っ!!? 』
「 そんなもん使ってたら。筋肉つかねぇじゃん……って、大丈夫か? 」
長い板が勢い良く顔面にぶつかった事に、そのまま後ろへと倒れれば痛みで、目の前にヒヨコが数羽走ってる気がする程に目が回った
『( え、痛い?? )……痛いんだけど… 』
「 そりゃ、良い音鳴ってたからな…って、普通は痛いだろ? 」
困惑して、当たった顔に片手を当ててはガバッと起き上がり、手の平を見れば赤い液体が付いてることに目が点となる
『 痛いんだけどぉぉお!?これ、血じゃん!? 』
「 はいはい。さっさと運んじまおうぜー 」
『 いや!!聞けよ!!俺は、痛覚なかっ……だぁっ!? 』
鼻血が出てる事に驚いていれば、突然と頭部に鈍い痛みを感じて、其の場に前のめりに蹲った
『 っ~~! 』
「 なにキャンキャン騒いでんだよ。手伝うなら、手伝え。やらねぇなら、なにもするな 」
「 あ、キャプテン…。すみません、直ぐに仕事に戻ります 」
頭上から聞こえてきた低い声にクルーはそそくさ離れていくも、俺はじんじんと痛む頭と顔に、プチパニックを引き起こしていた
『 痛い?痛い?なんで……?? 』
「 知るかよ。痛覚は聖獣もあるもんだろ…つーか、平然と粉砕してた奴がなに言ってんだ 」
『 ………???( なんで俺…痛覚戻ってるの? )』
クララが呆れるように離れて行った後に、痛くないかもしれない!そう思って、爪先で板を蹴ったら地味に痛かったし、頬を抓っても、壁に激突しても普通に痛かった
『 痛い!? 』
「 聖獣って、自傷癖でもあんの? 」
「 いや、アルトが特殊なんじゃねぇの? 」
「「( 頭のネジが外れたか… )」」
『( 俺が痛いって事は、シロも痛いんじゃねぇ!? )』
ちょっと寝てるだけの時に、痛覚が戻ってるのかは分からない
もしかしたら、シロが何かしらの能力を使って戻してくれたのかも知れないけど…
これは俺にとって、かなり厄介なものでもある
『( 痛いって事は…。当たって砕けろ…なんて戦いは出来ないじゃん… )』
突き指や拳骨だけで、こんなにも涙目になるぐらいに痛いのなら、腕が吹っ飛んだり首が吹っ飛べば、その痛みだけでまた動けない時間が長くなる
再生時間だけを待つよりずっと厄介なことは、シロとの修行の時によく理解してるから、避けたいと思った
『 はっ!とにかく、この板を運んでしまおう 』
顔面より、クララの拳骨の方が遥かに痛かったと思い頭を擦っては、氷の狼と共に板を運ぶ事を優先する
「 アルト、此方にも木材持ってきてくれ! 」
『 必要だろ!?この、文明の利器!!なんと5頭まで増やすことが出来たのさ!! 』
「「 おぉ、それは効率がいい! 」」
『 だろだろー! 』
「( 彼奴は…俺の魔力ってのを知ってんのか? )」
俺は、修繕に至ってはなんの役にも立たないけれど、失った部分を補充する為に持ってくるぐらいなら出来る
゙ アルト ゙
最初は気に入らない名前だと思ったけど、
クルーに呼ばれる度に、
ちょっとだけ嬉しくなって頑張った!
『 クララ、お腹空いただろ?俺には分かるぜ 』
「 誰のせいだよ 」
でも、なんとなく…
クララとの距離はまた開いた気もする
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