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二章 宝物捜索 編
04
しおりを挟む『 夕飯行ってきたら?俺がここにいてもいいなら…だけど 』
流石に人間は腹が減るだろうし、折角非戦闘員のコックが飯だと知らせてるなら、デルも食べたらいいと思って問えば、彼は地図から視線を上げた
「 あぁ…もう、そんな時間なのですね。もちろん、好きに見ていてくれて構いませんので、お言葉に甘えて…御飯を食べて来ようと思います 」
『 ん、ありがとうな。行ってらっしゃい 』
部屋を追い出される事なく好きに見ていいと言ってくれた事に内心嬉しくて仕方ない
犬の様に悪さをするなんて思われてないだけ、上々ではないか
「 では、行ってきます。ついでにお風呂も終わらせてきますね 」
『 はーい 』
彼は持っていた地図を紙が溢れたテーブルの上に置き、足元に気をつけながら部屋を出て行った
去り際に丁寧に一度会釈をした彼が居なくなってから、もう一度地図へと視線を落とす
『 ファルクの居たウォセカムイ帝国…とフリーレンがいた国は正直覚えてないし…、シエルの国も…竜がいた事しか…。ハッ!!俺…言う割には、元主の住んでる場所しらねぇ…… 』
殆どの国が海の底になってる事に驚いていたが、
いざ…記憶を辿っても、今迄の主の国名や特徴が余り思い出せない
自分で地図を見せて貰ったのに、こんな馬鹿だとは思わなくてショックを受けて、両手をテーブルへとつけた
『 まともに名前を覚えてるのはウォセカムイ帝国…だけど……っ…! 』
デルには悪いけど、自分の言動が馬鹿だった事実から逃げるように、部屋を飛び出して通路へと出れば、右から歩いてくる人物と鉢合わせた
『 あ…… 』
彼は、俺が部屋を飛び出した事に驚く素振りも見せず、冷静な口調で問う
「 望みの国は見つかったか? 」
全て見透かした様な言葉に、胸の中に感じる靄を晴らしたくて、拳を握り締め奥歯を噛み締めては、其れをゆっくりと緩めていく
『 俺は、ずっと…主しか見てなかった。国の事なんて何も知らない…。地図を見たところで…根本的に、この世界を知らない… 』
幾つの大陸があって、幾つもの海があって、国や首都の数…
それすら何も考えずに生きてきたから、今更地図を見ても分からないんだ
よく整理出来たなって褒めれない程に、地図をパズル程度にしか思えなかったんだ
『 どこが、沈んでるのかも……分からなかったんだ… 』
微かに震える両手を見詰め、自分が今迄主人の側に只居ただけという事に気づいた
クララに言う事ではないと分かってるのに、どうしても誰かに…
それも、今の主だからこそ言いたかったから伝えれば、彼はごく普通に答えた
「 聖獣なんだから、人間界の事に感心を持たないもんだろ。随分と人間味のある事に悩むんだな? 」
『 聖獣だから…って問題じゃないと思う… 』
僅かに重心を右へとずらして、腰に片手を当てた彼へと視線を上げて見れば、緩く首を左右に振った
「 いや…。聖獣はそこまで考えねぇ。今の主でどこまで強くなれるか、どの位生きるか、自分の力を頼るのか…その程度の考えしか持たねぇものだ。次に来た時に国王や国が変わってるような、人間の世界に関心なんてあるわけ無いだろ 」
『 ………それは、そうかも知れないけど…( いや、実際そうだ。シロは、何一つ興味を持ってなかったんだから… )』
国だけじゃない、通貨が変わるから宝石を売ればなんとかなるって思って、気に入らない主人は殺せば、さっさと次の主人に変わるから、神の庭で待ってばいいって…
そう言ってたじゃないか…
こんなにも国を気にするのは、俺だけなのか…
「 過ぎ去った過去に囚われるより、前を見ろ。今…この時代を生きてる者に手を貸すのが…御前等、聖獣なんじゃないのか? 」
『 !! 』
悩んでいた俺を慰めてるのだろうか…
クララの一言で、少しだけ気分が晴れたような感覚がして、俯いていた顔を上げて彼へと視線を向ける
「 なんの為に御前はここにいる? 」
『 …クララに、呼ばれたから 』
「 誰の為に動く? 」
『 クララの為に……( あぁ、そうだ…。俺は…クララの為に、此処にいる )』
クララが呼ばなければ、多くの国が沈んだ事も知ることも無く…
また新しい大陸が出来た頃に、何食わぬ顔で来てたかもしれない
「 そうだろ?なら答えは出てんじゃねぇか 」
『( 主人に目を覚まさせて貰うなんて…駄目な、聖獣だな…。俺は…人間ではなく、聖獣なのに… )』
聖獣となって既に何百年と経過してるのに、
其れでも、人間味があるからこんな思考になってるんだと改めて知る事が出来た
『 そうだな…今迄も、気にせず主人の元にいた。今回は偶々海に沈んだってだけで、俺の役目は主人…クララの目的の為に動くことなのに…。ありがとう、国探しは止める。お陰で目が覚めた 』
どうせ彼等がいた国の名前も満足に分からないし、フリーレンの住んでた森は魔法がかかってるから特に分からない
バトラー達がその場にいるのかも分からない状況で、探したところで時間の無駄になってしまう
そんな時間があるなら、目の前にいて…
俺を一瞬でも必要としてくれた主人の為に、最善の事を考えるのが聖獣じゃないか
分かりきった事を改めて実感して、礼を言うように微笑めば、彼は視線を外して俺の横を通り過ぎて行く
「 分かればいい。…着いて来い 」
『 !!おうっ! 』
着いて来いって言われたのが嬉しくて、デルの部屋を閉めてから、彼の後ろを少しだけスキップして着いていく
向かった先は船長室であり、その奥にある寝室へと入れば、クララは上着を衣紋掛に掛け、ベッドへと腰を下ろした
「 御前は、俺の聖獣だろ 」
『 そうだな…? 』
差し出された右手に疑問を抱きながら、お手をするようにそっとその手に手の平を乗せれば、ガシっと掴まれた後に引かれた
『 っ!? 』
一瞬の出来事に驚けば、彼の上へと被さるように倒れていたんだ
引くと同時に後ろに倒れたんだと分かるも、顔立ちのかなり良いクララを見下げてる事に慣れなくて、動揺さえ生まれる
『 えっ、と……。…どういうこと…です? 』
無意識に敬語になるぐらい困惑すれば、クララは軽く顔を横に向け、白シャツから見える首筋を晒した
「 暇を持て余してる主人の相手になれ、其の位…出来るだろ…ったく、言わせんな…。察しの悪い犬だな 」
『 ………( 俺はバター犬じゃないんだけど )』
もう少し可愛く御強請りすりゃいいのに…。
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