38 / 123
37話
しおりを挟むレオンは私に本を2冊渡した後に照れたように笑った。
「あはは‥この傷、見られちゃいましたね」
口調も態度もいつもと変わらない。
人懐っこさを感じさせるレオンを前にして、私だけが正常な呼吸を保つ為に必死だ。
‥まさか。‥‥いや、考えすぎよ。うん、考えすぎ。
レオンが“猫”なわけがない。だってノエルが心の闇を爆発させた時、レオンも間違いなく殺されていたし、その後のリセット魔法でレオンも朝に戻っていたもの。
この間の“猫”は扉の前にいたノエルのことも倒していた。きっと猫はノエルよりも強いんだと思う。そのうえ猫は魔女の仲間なのだから、何か特別な力だって持ってるかもしれない。
レオンはノエルに殺されたこともあったのだから、レオンが猫なわけがない‥。
ーーーでも‥そう思わせる為にわざと殺されていたのなら‥?
いや、いやいやいや、そんなわけ‥
「皇女様?どうされました?」
レオンが首を傾げているけど、私はレオンの顔をまともに見ることができなかった。
「‥その傷に引いてるんだと思うよ‥。どうすればそんな風に爪立てられるわけ‥」
ノエルが「うげぇ」と言った様子で話すと、レオンは困ったように笑った。
「‥その、皆さんが不在の間に‥‥昔関係があった女性に詰め寄られまして。お恥ずかしいことにちょっと揉み合いになったんです」
「‥レオン、お前‥‥。皇女様の前でする話ではないだろう。というか、その女性は離宮にまで訪ねてきたのか」
「いや、買い出しに出かけた時に捕まったんだ」
「はぁ‥まったくお前は昔から情け無いところがあるな。皇女様のお付きの騎士であることにもっと自覚を持て」
「あぁ」
テッドが呆れた調子でレオンを制するも、ノエルは目を丸めて興味津々の様子だ。
「揉み合いになってそんな傷付けられるって‥ぷははっ、一体何をやらかしたの~!」
3人はわいわい盛り上がっていたけど、私は笑うことができなかった。
あくまでも私の印象ではレオンは決して気が多い男というわけではなかった。真面目で、誠実で、爽やかな男。
魔女がレオンを誑かしたからミーナと上手くいかなくなって別れたんでしょう‥?だからこそ私はミーナから毒殺されそうになった。
ミーナが離宮から出て行った時の姿を思い返せば、ミーナがわざわざレオンに会いに来て今更揉み合うとは思えない。
どうしよう。レオンの言葉が、全て嘘に感じてしまう。
「皇女様‥大丈夫ですか?ご気分が優れないようですが」
私を案じるレオンは、いつもとなにも変わらないのに。
「‥‥‥ちょっと部屋で休むことにするわ」
「ご無理はなさらないでください」
心配そうに眉を顰めているレオン。
私の思い違いであってほしい‥。体が解放されたばかりの時、純粋に慕ってくれているようなレオンの態度にはすごく助けられていたから‥。
「ありがとう」と伝えて部屋に戻る。テッドとノエルは私の体を気遣ってくれたけど、私の気分は沈み込んだままだった。
もしかしたらレオンは敵かもしれないけど、猫の話をテッドやノエルにしたところで不安を煽るだけのような気がする。
魔女に太刀打ちできる力がない今、魔女や猫を下手に刺激するのも避けたい。
仮に猫がレオンだったとしても、魔女が命じるまで猫が再び私を襲うことはないはず。
「‥‥皇女様、もしや皇女様の想い人はレオンなのですか‥?」
私が気落ちしている理由が、レオンが他の女性に爪を立てられていたからだと思ってるみたい。
その爪を立てたのが私かどうかで悩んでるのよ。
「違うわ。ただ少し気になってしまったの。‥よっぽど強く抵抗しないとあそこまでの跡は付けられないと思うのよね。温厚なレオンが相手の女性にそこまでのことをさせたのが、なんだか信じられなくて」
「‥‥確かに一理ありますね。そもそもレオンは皇女様に夢中なのかと思っていましたが‥他にも女性の影があったとは」
レオンのことを私よりも知っているはずのテッドがそう言うのだから、やっぱり私の違和感は間違いじゃないと思う。
「いやー、純粋そうに見える奴の方が実際スケべだったりするからね」
‥まぁノエルの考えも一理あるけど‥。
ここは慎重に動きたいところだから、もっと判断材料が欲しい。
ーー私は次の日、ミーナの元を訪れることにした。サリーの話では、ミーナはここを離れる際に「少し休みたい」と言っていたそうだ。
私の紹介状を渡してはいたけど、ミーナは皇女の毒殺を図る程に心を病んでいたのだし、一旦心を休める時間も必要だと思う。
そんなにすぐに紹介状が無効になるわけでもないだろうから、まずは存分に心を休めてほしいと本気でそう思う。
0
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる