43 / 123
42話
しおりを挟む次の日、私は部屋にレオンだけを招き入れた。
時刻は朝。身支度と朝食を済ませたばかりの時間帯。
「おはようございます、皇女様」
相変わらずきらきらとした笑顔。レオンは今日もまるで『僕は貴方の忠犬です』とでも言っているような顔をしてる。そんな顔をして私を裏切っている可能性があるのだから末恐ろしいわ。
「おはようレオン」
だけど私だって仮面くらい被れるの。もう弱いだけの私は嫌だから、こう見えて腹の底では『どうすれば魔女たちにやり返せるのか』ばっかり考えている。
まだその方法は見つからないけど、もう折れる心が残っていないくらい苦しんだからこそ変に心が晴れてしまったの。
きっと魔女たちを成敗できた時こそ、本当の意味で心が晴れるのでしょうけど。
「何の御用件でしょうか‥?」
レオンがそう言って首を傾げた。爽やかな長身の騎士。
「鍵をかけてこっちに来てくれる?」
「え‥?鍵、ですか‥?」
「そうよ、早くして」
レオンは戸惑いながらも鍵をかけた。どぎまぎとしながら、私が腰掛けるソファへ近付いてくる。
「あ、あの‥?皇女様‥?」
レオンが猫ではないのなら、リセットすればレオンの記憶も飛ぶ。レオンが猫ならば、リセットされたあとに『確かめられた』のだと気付くのでしょうけど。
何としてもそれまでは、私の魂胆に気付かれないようにしないと。
‥‥いや、逆に‥確かめたあとも気付かれないようにすれば、リセット後にヒヤヒヤしないで済むのかしら。
ここで確かめてすぐにリセットしたら、間違いなくレオンは『あいつやりやがったな』と思うに決まっているもの。
すぐにリセットするのではなく、恥じらいのあまりリセットを掛けてしまった‥という流れにしましょう。よし、いい感じだわ。そうと決まれば‥いくわよ、私の色仕掛け‥!!!
「‥‥レオンは私のこと、軽い女だと思ってる‥?」
あくまでも何も気付いていないアホな皇女のふりをするわ‥!
「‥え?‥‥いや、思っておりません!」
ビシッと熱く言い張るレオン。それは本心なのか、はたまた優しさに溢れる騎士を装っているのか。
「‥‥キスして」
「‥はい?」
アーモンドのような形のキリッとした双眼が揺れた。明らかに動揺している。
ソファに座る私は、すぐ近くで立ち尽くすレオンに手招きをする。レオンの耳はたちまち真っ赤になっていき、困惑したように首を横に振った。
「こ、皇女様、できません‥!!」
眉が八の字になったレオンはまるで初心な少年のよう。レオンの心境はいま一体どうなっているんだろう。
私はそっと立ち上がってレオンに近付いた。ヒールを履いていてもレオンの肩にすら届かない。
レオンの襟首に手を添える。その際レオンの首筋に人差し指が掠めると、レオンはピクッと体を震わせた。
魔女が私の体で好き勝手やっていただけで、私自身は初心なはずなのだけど‥まるで手練れのようね。知識を少々かじっているだけにしては中々うまい具合のスタートが切れたと思う。
「貴方からしてくれないなら私からするわ。止めたら怒るわよ」
口を窄めて上目遣いをすると、レオンは「うっ」と声を上げた。こんな初心な反応をする人が猫だとは思えないのだけど、確かめるまでは断定なんてできない。
「こ、皇女様‥」
「ちょっと屈んでよ。届かないわ」
レオンの首の後ろに両腕を回す。まるで抱きつくようにしながら、レオンの首を引っ張った。
ふに‥
ーーー唇が重なり合った途端、私もレオンも目を見開いた。く、唇って柔らかいのね‥!‥って、そうじゃなくて。思わず私の初心さが顔を出してしまったわ。
唇は優しく触れているだけなのに、全身にピリピリとした刺激が走った。
魔女が快楽の為に色事を楽しんだのならば、私は復讐の為に。
もちろん体を許すつもりは毛頭ないけど、キスやハグで証拠が掴めるのならいくらだってやってやる。
「いけ、いけません」
唇を離そうとするレオン。私は無理矢理キスを続けながらも、うまく回転しながらレオンの立ち位置を誘導した。そして押し倒すようにしてソファに座らせる。
私はソファに座るレオンの上に跨った状態で、レオンへのキスを繰り返し続けた。
小鳥たちが啄んでいるようなキスを続けていると、唇が湿っていくのも感じた。どちらの唇が湿っているのかは分からない。たぶん、両方。
「皇女様、いい加減に‥‥!」
レオンが私を無理矢理引き剥がした。まだ舌を絡ませるようなキスはしていない。だけどレオンの顔が信じられない程に真っ赤だった。きっと私の顔も。
レオンに跨る私に、何か硬いものが当たっている。
自我を保とうとしているみたいだけど、レオンはいま欲情している。
ダメだとレオンは言うけれど、彼の目を見れば分かる。彼はいま私を貪りたい衝動を必死で堪えている。
私は小さく微笑んだあとに、レオンの唇の端をぺろっと舐めた。
「ーーーーーっ!!」
どうやらこれがレオンの理性を吹き飛ばす一打になったみたい。私の唇を自ら求め始めたレオン。私は彼とキスを交わしながら、彼が罠に掛かったことに喜んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
そう名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる