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121話
しおりを挟むレオンは私の指に夢中でキスをしているから、私の角度からはレオンの伏せ目がよく見える。
長いまつ毛に縁取られた綺麗な瞳は、普段私に安心感を与えてくれる筈なのに今はその瞳が私の心臓を早めてしまう。
「‥‥貴方は演技で顔を赤くできるのっ?!」
余裕たっぷりなレオンにそう吹っかけてみると、レオンは数秒動きを止め、やがて笑い出した。
「まさか!そんな方法あるんですか‥?」
「わ、私が聞いてるの!」
私はレオン以外に恋をしたことがないし、指にキスをされている最中にどんな顔をするのが正解かもわからない。
レオンだって私と同じ“初心者”だと思っていたのに‥。
「‥‥えーっと、つまりどういう意味ですか?」
「だから!さっきも似たようなこと言ったけど!‥‥貴方は頬を度々赤くしていたから、私はてっきり貴方が初心なのかと思っていたの。それなのに、なんだか手練れのようじゃない」
熱っぽいその瞳も、少し湿った唇も。
確かに私たちはもういい大人なのだけど、私はこういう世界がもっと遠くにある気がしてた。
「手練れって‥。俺だって経験ありませんよ。改変前だって改変後だって、ずっと皇女様だけを見てたんですから。‥‥ただその、本能的に?こうして色々なところにキスしたいんです」
少し口の先を尖らせたままの私を、上目遣いで見つめてくるレオン。
経験ないのにこんなことができるの‥?‥‥いや、まぁ、できるんでしょうけど。
レオンは私の手の甲に音を立ててキスをした後、ゆっくりと言葉を続けた。
「‥‥結ばれるわけがないのだから、この気持ちを心の奥に隠しておかないと、と思っていました。それでも皇女様にふいに話しかけられたり、好意を寄せられるふりをされたり、その度に隠していた気持ちが溢れ出してしまっていたんです。‥だから赤くなっていたのかな」
「‥‥そうなの?」
「はい。心が予想外なことに対応できなかったのかもしれませんね」
‥じゃあ、今でも予想外なことをしたらレオンは赤くなるのかしら‥‥?
私ばかりドギマギしているのも悔しいもの。少しやり返してやらなくちゃ。
“猫”の正体を確かめる為にキスをせがんだあの時、確かにレオンは顔を真っ赤にしていたものね。
私はニィッと口角を上げた。そんな私の表情に、レオンが一瞬驚いたような顔をした。
ぐいぐい責めてくるレオンも嫌じゃないけど、不意をつかれたときのレオンの反応が割と好きだったりもする。
レオンは私の手にキスをするのをやめていた。私はレオンの耳たぶを触りながら、彼の上に跨った。みるみるうちにレオンの頬が赤くなっていく。
あぁ、可愛い。
責められるとドギマギしちゃうけど、相手が照れている姿を見るのは楽しいわね。
一線を超える覚悟なんて出来ていなかったけど、レオンのいろんな表情が見てみたい。
「こ‥皇女様‥」
「なに?」
猫の正体を確かめようとしたあの日のように、レオンの首筋にキスをしてみた。
上目遣いでレオンを見つめてみると、レオンは明らかに固まっていた。
「‥私、責められたレオンの表情が好きみたい」
「こ、困りますよ」
「どうして?」
「‥だって俺も責められてる皇女様の姿が好きなんです」
「まぁ」
なんていうカミングアウトなのかしら。
数秒見つめあった私たちは堪らずに吹き出して、だけど笑いが収まる前にキスをし始めた。
お互いが“責めたい”と思っているからか、吹っ切れたように互いに積極的だった。深く蕩けるようなキスが続いていく。
ソファに座るレオンの上に跨りながら彼の頬に手を添えて‥レオンは私の背や腰に腕を回している。すごい密着度だ。
「‥もうこれ以上、我慢できません」
キスの合間にレオンはそう漏らした。私が何かを答える前に、レオンは首を下げて私の鎖骨あたりに舌を這わせていく。
最初こそやられっぱなしで照れてしまったけど、情熱的なキスがきっかけで私もすっかりその気になってしまったらしい。
「‥‥私もよ」
少し恥ずかしげにそう答えると、レオンは嬉しそうに口の端を上げた。
レオンは私を抱き抱えたままグイッと立ち上がり、私をベッドの上に寝かせる。
オレンジの光を背中に浴びながら、レオンは寝巻きを脱ぎ捨ててた。その光景にギュンッと、胸が変な音を立てる。鍛え上げられた綺麗な筋肉に、心臓は更に煩くなっていった。
「‥‥‥優しくしてね」
このままの勢いではなんだかとんでもないことになりそうな気がして、今更ながら小さめな声でお願いをしてみる。
「‥皇女様が煽ってこなければたぶん大丈夫だと思います」
レオンはそう言って小さく笑いながら私の上に覆い被さってきた。
愛しいレオンが、指や舌で私の全てを愛でていく。いつのまにか私も脱がされて、肌と肌が重なる初めての感覚に心臓がどうにかなりそうだった。
「皇女様、すごくドキドキしてますね」
私の胸に顔を沈めながら、レオンは嬉しそうにそんなことを言う。
「‥‥皇女様じゃなくて、サマンサと呼んで」
「‥‥‥えっ」
「それにもう夫婦なんだから、敬語はいらないわ」
「‥サ、サマンサ‥様」
「もうっ」
“様”なんていらないのに!
そう思いながらレオンの髪を撫でていると、レオンは顔を上げて私の耳元で囁いた。
「サマンサ、愛してる」
「っっ、‥んあっ!!」
そんな言葉と同時に、レオンが私の中に入ってきた。耳も脳も、全ておかしくなってしまいそうだ。
痛みなんかよりも、結ばれた幸せの方が圧倒的に心のうちを占めていて、その幸福感のせいなのかあっという間に痛みは快感へと変わっていった。
弾みで流れた涙にさえキスをしてくるレオン。彼の愛が苦しいほどに伝わってきて、私は何度も何度も甘い吐息の合間に「好き」だと言い続けた。
蕩けて、体の原型を忘れてしまうのではないかと思った。今まで我慢をし続けていたからか、レオンは何度も何度も私を抱いた。
甘く蕩ける初夜だった。
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