122 / 123
121話
しおりを挟むレオンは私の指に夢中でキスをしているから、私の角度からはレオンの伏せ目がよく見える。
長いまつ毛に縁取られた綺麗な瞳は、普段私に安心感を与えてくれる筈なのに今はその瞳が私の心臓を早めてしまう。
「‥‥貴方は演技で顔を赤くできるのっ?!」
余裕たっぷりなレオンにそう吹っかけてみると、レオンは数秒動きを止め、やがて笑い出した。
「まさか!そんな方法あるんですか‥?」
「わ、私が聞いてるの!」
私はレオン以外に恋をしたことがないし、指にキスをされている最中にどんな顔をするのが正解かもわからない。
レオンだって私と同じ“初心者”だと思っていたのに‥。
「‥‥えーっと、つまりどういう意味ですか?」
「だから!さっきも似たようなこと言ったけど!‥‥貴方は頬を度々赤くしていたから、私はてっきり貴方が初心なのかと思っていたの。それなのに、なんだか手練れのようじゃない」
熱っぽいその瞳も、少し湿った唇も。
確かに私たちはもういい大人なのだけど、私はこういう世界がもっと遠くにある気がしてた。
「手練れって‥。俺だって経験ありませんよ。改変前だって改変後だって、ずっと皇女様だけを見てたんですから。‥‥ただその、本能的に?こうして色々なところにキスしたいんです」
少し口の先を尖らせたままの私を、上目遣いで見つめてくるレオン。
経験ないのにこんなことができるの‥?‥‥いや、まぁ、できるんでしょうけど。
レオンは私の手の甲に音を立ててキスをした後、ゆっくりと言葉を続けた。
「‥‥結ばれるわけがないのだから、この気持ちを心の奥に隠しておかないと、と思っていました。それでも皇女様にふいに話しかけられたり、好意を寄せられるふりをされたり、その度に隠していた気持ちが溢れ出してしまっていたんです。‥だから赤くなっていたのかな」
「‥‥そうなの?」
「はい。心が予想外なことに対応できなかったのかもしれませんね」
‥じゃあ、今でも予想外なことをしたらレオンは赤くなるのかしら‥‥?
私ばかりドギマギしているのも悔しいもの。少しやり返してやらなくちゃ。
“猫”の正体を確かめる為にキスをせがんだあの時、確かにレオンは顔を真っ赤にしていたものね。
私はニィッと口角を上げた。そんな私の表情に、レオンが一瞬驚いたような顔をした。
ぐいぐい責めてくるレオンも嫌じゃないけど、不意をつかれたときのレオンの反応が割と好きだったりもする。
レオンは私の手にキスをするのをやめていた。私はレオンの耳たぶを触りながら、彼の上に跨った。みるみるうちにレオンの頬が赤くなっていく。
あぁ、可愛い。
責められるとドギマギしちゃうけど、相手が照れている姿を見るのは楽しいわね。
一線を超える覚悟なんて出来ていなかったけど、レオンのいろんな表情が見てみたい。
「こ‥皇女様‥」
「なに?」
猫の正体を確かめようとしたあの日のように、レオンの首筋にキスをしてみた。
上目遣いでレオンを見つめてみると、レオンは明らかに固まっていた。
「‥私、責められたレオンの表情が好きみたい」
「こ、困りますよ」
「どうして?」
「‥だって俺も責められてる皇女様の姿が好きなんです」
「まぁ」
なんていうカミングアウトなのかしら。
数秒見つめあった私たちは堪らずに吹き出して、だけど笑いが収まる前にキスをし始めた。
お互いが“責めたい”と思っているからか、吹っ切れたように互いに積極的だった。深く蕩けるようなキスが続いていく。
ソファに座るレオンの上に跨りながら彼の頬に手を添えて‥レオンは私の背や腰に腕を回している。すごい密着度だ。
「‥もうこれ以上、我慢できません」
キスの合間にレオンはそう漏らした。私が何かを答える前に、レオンは首を下げて私の鎖骨あたりに舌を這わせていく。
最初こそやられっぱなしで照れてしまったけど、情熱的なキスがきっかけで私もすっかりその気になってしまったらしい。
「‥‥私もよ」
少し恥ずかしげにそう答えると、レオンは嬉しそうに口の端を上げた。
レオンは私を抱き抱えたままグイッと立ち上がり、私をベッドの上に寝かせる。
オレンジの光を背中に浴びながら、レオンは寝巻きを脱ぎ捨ててた。その光景にギュンッと、胸が変な音を立てる。鍛え上げられた綺麗な筋肉に、心臓は更に煩くなっていった。
「‥‥‥優しくしてね」
このままの勢いではなんだかとんでもないことになりそうな気がして、今更ながら小さめな声でお願いをしてみる。
「‥皇女様が煽ってこなければたぶん大丈夫だと思います」
レオンはそう言って小さく笑いながら私の上に覆い被さってきた。
愛しいレオンが、指や舌で私の全てを愛でていく。いつのまにか私も脱がされて、肌と肌が重なる初めての感覚に心臓がどうにかなりそうだった。
「皇女様、すごくドキドキしてますね」
私の胸に顔を沈めながら、レオンは嬉しそうにそんなことを言う。
「‥‥皇女様じゃなくて、サマンサと呼んで」
「‥‥‥えっ」
「それにもう夫婦なんだから、敬語はいらないわ」
「‥サ、サマンサ‥様」
「もうっ」
“様”なんていらないのに!
そう思いながらレオンの髪を撫でていると、レオンは顔を上げて私の耳元で囁いた。
「サマンサ、愛してる」
「っっ、‥んあっ!!」
そんな言葉と同時に、レオンが私の中に入ってきた。耳も脳も、全ておかしくなってしまいそうだ。
痛みなんかよりも、結ばれた幸せの方が圧倒的に心のうちを占めていて、その幸福感のせいなのかあっという間に痛みは快感へと変わっていった。
弾みで流れた涙にさえキスをしてくるレオン。彼の愛が苦しいほどに伝わってきて、私は何度も何度も甘い吐息の合間に「好き」だと言い続けた。
蕩けて、体の原型を忘れてしまうのではないかと思った。今まで我慢をし続けていたからか、レオンは何度も何度も私を抱いた。
甘く蕩ける初夜だった。
0
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】悪の尋問令嬢、″捨てられ王子″の妻になる。
Y(ワイ)
ファンタジー
尋問を生業にする侯爵家に婿入りしたのは、恋愛戦略に敗れた腹黒王子。
白い結婚から始まる、腹黒VS腹黒の執着恋愛コメディ(シリアス有り)です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
慈愛と復讐の間
レクフル
ファンタジー
とある国に二人の赤子が生まれた。
一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。
慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。
これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。
だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。
大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。
そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。
そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。
慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。
想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる