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番外編 庭師のジョン
しおりを挟む僕は昔ノーランド侯爵家の庭師をしていました。
庭にはよくジュリアお嬢様とアレクサンドラお嬢様が遊びに来ていて、僕たち庭師にも声を掛けてくださってました。
当時まだ5歳くらいでしょうか。遠くに居てもこちらまで釣られて笑ってしまうような、楽しく愛らしい笑い声が響いていたのです。
僕はその時、いつのまにか生えてしまっていた雑草を引っこ抜いていました。雑草といっても、可愛らしい黄色の花が咲いています。
ちょうどアレクサンドラお嬢様が駆け寄ってきました。
「貴方、何してるの?」
「雑草を抜いていたんですよ」
「わ!可愛いお花!!」
その姿があまりにも無邪気で、僕は笑ってしまいました。
「な、なによ!!」
照れたように口を尖らせるアレクサンドラお嬢様。僕は手の中に花を隠し、アレクサンドラお嬢様に当ててもらうことにしました。
「どっちでしょうか」
「っ!!えっと、えっと‥‥こっち!!」
アレクサンドラお嬢様は右手を指しましたが、僕の左手から花が現れると顔を真っ赤にしてムキになっていました。
「も、もう一回!もう一回やるの!」
何回か繰り返しましたが、アレクサンドラお嬢様は何度も外しました。握りしめる拳を少し膨らませるだけで、こっちに入ってるんだわ!と釣られるからです。
それからというものの、僕は随分とアレクサンドラお嬢様に追いかけられました。
「なんでここにいるのよ?!暇なの?!」
「ここ、庭なので‥僕庭師なので‥」
「あんたのせいで汗かいたじゃない!!」
「そ、それは‥走ってきたからでは‥」
随分とツンケンしていましたが、構ってほしい!という気持ちが溢れていてとても可愛らしかったです。
「相変わらず細いわね!ちゃんと食べてるわけ?!」
「アレクサンドラお嬢様は今日も元気いっぱいですね」
「あ、当たり前じゃないの!!というか、アリーと呼びなさいよ!!アレクサンドラお嬢様って長ったらしくて耳が痒くなるわ!」
「アリーお嬢様」
「ボッ!!(顔面発火音)」
5歳児のキラキラとした笑顔、そして全力ではしゃぎ、成長していく姿は見ていてとても気持ちの良いものでした。
僕はそれから間も無く実家の花屋に戻らなくてはならなくてノーランド家を離れましたが、最後のお別れの際にアリーお嬢様から頂いた花束はドライフラワーにして大切に保管しています。
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