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むすことむすめたち
もう1人のツンデレともう1人の鈍臭
しおりを挟む今日もお母様と叔母さまはお茶を楽しんでる。今日は叔母さまのお屋敷にやってきた。つい先日はうちの屋敷に叔母さまたちが来てたけど。まぁつまり本当にしょっちゅう行き来をしているの。なんて仲の良い姉妹なんだろう、と思いながら私は中庭のベンチに腰を下ろした。
私の名前はジェシカ・マクマナス。愛称はジェシー。マクマナス公爵家の令嬢。ヤンチャな兄が3人もいるせいか、私はとってもクールな性格をしてる。ちなみにいま8歳。あの兄たちのところで留守番をするくらいなら、叔母さまの屋敷に来た方がまだいいの。ここもここで、ちょっと面倒くさい人がいるんだけど。
「‥‥‥また来たの?」
心底迷惑そうな声が後方から聞こえた。会わない為にひっそりと中庭にいたのに、どうして見つかったんだろう‥。というか嫌ならわざわざ声を掛けにこなければいいのに。
嫌々振り返ってみると、そこには金髪碧眼の超絶美男子がいた。そう、こいつは私のいとこ。叔母さまの愛息子、ロナルド・ドレイパー。愛称はロン。年齢は6歳。
あまりにもお母様と叔母さまの距離が近すぎるせいで、子どもである私たちもお互い愛称で呼び合ってる(呼ばされている)。まるで兄弟のような距離感だから、お互い敬語も使わない。
叔母さまの綺麗な金髪と、叔父様の吸い込まれるような碧眼を受け継いだロンは正直めちゃくちゃ見た目がいい。だけど何故かいつも上から目線だし、年下なのに生意気だから気に食わない。
「‥‥来たくて来てるわけじゃないもの」
「ふーん」
ロンは興味なさげにベンチの端っこに座った。‥なんで嫌々そうな顔しながらここに座るのか、全く理解ができない。
「‥‥なんでここに座るの」
「ここは俺の家だし。中庭のベンチで休もうと思ってここまできたらジェシーがいたんだ。だから嫌ならジェシーがどっか行けば」
私のことを一切見ないまま、ロンは退屈そうな雰囲気を纏わせながらそんなことを言う。本当可愛くないやつだ。もっと幼い頃からずっとこの調子。本当は弟分として可愛がってやりたかったけど、ロンは全く可愛げがない。
私はヤンチャで煩すぎる兄3人を見て育っているからか、静かに生きていきたい‥と基本的には物静かだし、クールだと思う。だけどおっとりしてて抜けている母ジュリアの血もやっぱり濃いんだろう。私も残念ながら不器用で色々と失敗してしまうことが多い。だからロンも私を馬鹿にしているんだと思う。
「あーはいはい、いなくなればいいんでしょ」
ふんっと鼻息を荒くして立ち上がると、ロンがまた口を開いた。
「‥‥どこ行くの」
「どこでもいいでしょ!」
「‥‥この家は俺の家だから、どこに行くのか俺に言ったら?」
なんなのよそれ!!なんでどこに行くのか報告しなきゃいけないの‥。
「嫌ならどっか行けばって言ったのロンでしょ」
「‥‥‥じゃあいいよ。どっか行けばいい」
今度は思いっきり不貞腐れて、唇を尖らせている。な、なんなの?ロン‥私にはロンが分からないよ‥。
「あ!こんなところにいたんですねロン様!!アリー様の元へ向かっていたはずなのに何故中庭のベンチにいらっしゃるんですか?」
廊下の窓から大声でロンに呼びかけたのは、叔母さまの侍女のスーザンさん。すごく楽しそうにニタニタしているように見える。
あれ??ロン、さっき中庭のベンチで休もうと思ってここに来たって言ってなかったっけ‥?叔母さまの元へ向かおうとしてたの‥?あれ?どういうこと?
「‥ロン?」
「‥‥っ、別に、ジェシーに会いにきたわけじゃないから。勘違いしないで」
ロンは茹で上がったみたいに顔を真っ赤にして、でもそんな顔を懸命に手で隠しながら足早に去っていった。ポカンとする私をスーザンさんがにこにこ微笑んで見ていたので、とりあえずスーザンさんの元に近寄ってみる。
「ジェシー様、こんにちは。うちの坊っちゃんがすみませんね」
「あ、えーっと、ロンはどうして逃げてしまったんですか?‥それに、なんで嘘ついてたんだろう‥」
「それはですね、ロン様はアリー様に性格がそっくりな部分がありましてね。まぁ‥‥とても愛らしいお方ですので今後とも仲良くしてあげてくださいませ」
愛らしい‥?今後とも仲良く‥‥?
愛らしいと感じたことはないし、いまも別に仲良しではないんだけど‥まぁ頷いておこう。
「わかりました‥?」
「ふふ、ありがとうございます」
これは、アリーの息子であるロン(ツンデレ)と、ジュリアの娘であるジェシー(鈍臭)のちょっとした恋のお話。(続く)
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