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第1章
第4話 踏み出す一歩
しおりを挟む俺と、正確に言えば母のみが見えるステータス画面。もちろん母が亡き今、恐らくこの世で俺しかこの画面は見えないんだと思う。
それはずっと見えているわけじゃなく、見たいと意識した時にだけ浮かび上がる。自分の体力値や魔力値や肩書きなどが表示され、画面の端を押せば過去のギフトを見返すこともできる。
母はいつかのギフトで言った。
『ステータス画面は凄く便利よ。相手のステータスだって見ようと思えば見える。公にしている名前とか、体力値や魔力値もね。‥この世は敵ばかりだし、近付く人全てを疑って欲しい。だけど、リージュには誰かを信じることも学んでほしい。こんなクソみたいな世界でもね。みーんなのステータスを見れば誰のことも信用せずに生きていけるけど‥私的には、この力はクソな奴にだけ使えば十分だと思うわ』
そんな母の言葉を思い出しながら、軍服の男のステータスを見た。
【ベガ・デリッシュ 36歳 体力値350/350 魔力値30/30】
魔力値30‥って、だいぶ低いんじゃないか?
俺は異世界人だし、ギフトデイに母から魔力も貰ってる。だから俺の魔力値は現時点で2700ある。
孤児だという理由で近所の子どもに石を投げられた時、思わずステータスを見てしまったことがあった。‥近所の子どもでさえ魔力値は50あったのに。
「なんだよジロジロ見てきやがってよぉ」
ぺろりと短剣を舐めている男を、ジークが睨みあげている。
ドトルの様子を見て、この男が敵なのだと察したのだろう。
「‥その軍服‥あんた、プーレナイト帝国軍か?」
「なんでタメ口なんだぁ?このクソガキが。
あ、そっちの黒髪の坊主。おめーは連れて帰るからな。回復魔法を使うなんて何者だよ」
男はジークの質問に答えぬまま、俺を見てニンマリと笑った。
確かに俺の周りにも回復魔法を使うやつはいなかったし、俺だって母のギフトで回復魔法や防御魔法の存在を知ったくらいだ。
今までそんな魔法が必要のない平和な暮らしをしていたってことなんだろう。
「おい、質問に答えろよ」
「っ!だから、なんでタメ口なんだよボケがぁ!」
男がジークに向かって短剣を振り落とした。これ以上仲間を傷つけられてたまるか、と俺は心の中でジークに防御魔法をかけた。男の短剣は突如現れた透明な膜に阻まれて、弾かれたように地に落ちていく。
「ちっ!このクソガキッ!!」
先程の回復魔法の印象もあってか、防御魔法をかけたのが俺だと察したらしい。男は俺を恨めしそうに睨んでいる。
ジークを守ることができてホッとしたものの、ぐらりと視界が歪んだ。
ーーなんだ、目眩か‥?
そういえば昨日の業火からみんなを守るために一晩中防御魔法を使い続けて、先程ドトルに回復魔法をかけ、今はジークにまた防御魔法をかけている。普段は必要最低限の生活魔法しか使っていなかったから‥魔力の使いすぎなのか?
咄嗟に自分のステータスを確認した。
「わ‥なんだよこれ。ギリギリだ」
【リージュ 13歳 体力値80/150 魔力値56/2700】
普段こまめにステータスをチェックしていた訳じゃないし、どの魔法がどのくらい魔力を使うのかなんて分からない。
ーー魔力が尽きたらどうなる?
もし魔力が尽きてドトルの回復魔法が途切れたりしたら?いや、でも戦いの経験なんてない俺らが、魔法なしで軍服を着た男に勝てるのか?
男が短剣を拾い上げた。
「なぁ、お前らに提案があるんだが」
男がそう言ってにんまりと笑ったとき、ジークの周りを覆っていた膜が消えた。
ーーやばい、防御魔法が消えた。俺の魔力の残量がないからか?
「黒髪のお前。お前だけ俺と来い。そしたら全員逃がしてやるよ」
「ふざけんな!誰がそんな話に乗るかよ!」
ジークがすぐに反応したけど、敵がこの男ひとりだけとは限らない。
このままこの男と戦うのであれば、俺の魔力も底をついてドトルを死なせることになるかもしれない。
ーーそれなら‥
俺は足を一歩踏み出した。
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